メグルユメ
4.龍使いの塔
洞窟を抜けると、そこは砂漠だった。
テスロメルの旅手記を真似したが笑い話にならない。あっちは抜けた先が雪山。いや、過酷さはどっちも変わらないかもしれない。それを笑い話にしたテスロメルは流石なのだろう。
とにかく、今僕らの目の前には砂地が広がっており、明らかに何かある塔が建っていた。
「休みたいところだが、さて」
コストイラも戦闘が行われる可能性が高い塔に悩む。流石にこれまでの経験からいって戦闘がないなんてことはないだろう。塔に近づくと気付かされる。塔には龍の顔が彫られている。扉のノブにも龍の頭があしらわれており、塔の住人の変態性が見えてくる。
「ドラゴンばっかりだな」
「絶対一家言あるな」
「またドラゴンか。疲れるわね」
3人の幼馴染は遠い目をする。
「スルーするという手がありますよ」
「いやー。それは勇者として大丈夫なのか?」
勇者。コストイラの言葉が深く刺さる。この場にいる誰もが勇者を分かっていない。勇者とは何なのか。誰も正解は分からない。
『オオオオオオオオ!!』
上から声が落ちてくる。それは大きく、そして神々しくもあった。
白き龍。ホーリードラゴンが空にいた。ホーリードラゴンはその空色の眼で睥睨し、様子を窺っている。
違和感があった。これまでの魔物は瞳の色がオレンジ色だったが、この個体は空色だ。何かに操られているのだろうか。
『オオオオ!』
上からドラゴンブレスが落とされる。僕達は慌てて中心地から逃げる。しかし、余波に当たり、体が浮く。運動神経のいいシキやアシド、コストイラ、レイド、アストロはうまく体をコントロールして着地する。
僕とエンドローゼは手足をバタバタと動かし、体をコントロールしようとするが、無様に顔から着地する。
「ぺっぺっ」
顔を上げて必死に口内の砂を吐き出す。エンドローゼはレイドに抱え上げられ、僕は何もされない。嘘でしょ?これって何がいけないの?人望?能力?どっちにしろ悲しくなってきちゃうな。
ホーリードラゴンはすでに次のブレスが充填されていた。
僕は変な体勢で走り始める。前を走るアシド達を追う。アシド達は塔の中に避難する。
ドラゴンがブレスを吐き出す。どんどんと背中に迫ってくる。
ヤバイ。追いつかれる。
背中に衝撃が走る。ブレスとはまた違う衝撃だ。僕は転げながら塔内に入る。
バタン。
「大丈夫か?」
「は、はい」
扉を閉じたレイドが質問し、僕は息を切らしながら答える。
「何とか間に合いました」
「いや、背中の方は」
「そういえば凄い衝撃でしたね。今もまだちょっと痛いですね。レイドさんが何かしてくださったんですか?」
背中を触ろうとするが、柔軟が足りず届かない。悲しいことに硬すぎる。
「ごめんなさい」
シキに謝られた。何かされたのだろうか。心当たりがない。
「間に合わんかもしれんから、オマエの背を蹴飛ばしたのだ」
なるほど。僕はシキに助けられたわけだ。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、シキの目が見開かれる。ここ最近、シキの表情が分かってきたような気がする(気のせい)。
「アレン」
「はい?」
「アレンは蹴られて喜ぶ人?」
え? 何を言っているんだ?
「ち、違いますよ!?」
「でも、今ありがとうって」
「それは助けてくれてありがとうという意味で」
「そう」
シキはアストロの方へ行ってしまう。正しく理解してくれたのだろうか。
ドゴンと扉が開いた。玄関とは別の扉だ。ドラゴンがわんさか出てきた。
「は?」
「逃げろ。流石にこの数は無理だわ」
ドラゴンの数は未だに数えきれない。玄関の扉の前にもドラゴンが陣取っている。逃げ道が階段しかない。
「ひーひー」
「ふぇーはー」
体力のない僕とエンドローゼは早々に速度低下していた。つまりは体力が尽きたのだ。レイドは左手に楯を持ち替えると、右腕でエンドローゼを抱えた。あれ?僕は?
「頑張りなさい。死にたくなければね」
アストロに鞭打たれ、階段を走る。僕が醜いのに対し、アストロは駆け上がりながら魔術を放っていた。逃げながらも階段を上ってくるドラゴン達に牽制していた。
「なんで、そんな、ことが」
「鍛え方が違うのよ。貴方は口ではなく足を動かしなさい。力尽きるまで」
凄い人だ。僕には真似できない。
「上限だ」
アシドは一番上にあった階段の先の扉を開け放つ。
『ヌゥン。まさかここまで来るとは』
そこにいたのは龍の頭骨を被り、小さなドラゴンのあしらわれた杖を持った、6mはあろうか巨人だった。頭骨から覗く薄オレンジ色の瞳は、こちらを睨み、杖につけられた空色の宝玉を輝かせた。
魔力の塊が複数出現し、発射される。
レイドはエンドローゼを後ろに置くと、楯で防ぎ、残りをアシド、コストイラが弾く。
次の瞬間、後ろの扉が爆発した。大量の竜が姿を見せる。
それに対し、アストロが大量の水で押し流す。ブルードラゴンだけは踏みとどまった。シキは先頭の青竜の尾を掴むと、その細腕のどこから出ているのかもわからぬパワーで投げ飛ばす。巻き込まれた青竜は階下へ消えていった。
『ヌゥン。これまでとは。ならば』
ドラゴンマスターが杖を振るうと、再び空色の宝玉が光る。
「階下は?」
「来てない」
『ヌゥン。馬鹿め』
ドラゴンマスターの後ろの壁が壊れる。
その瞬間、視界が真っ白に染まった。
テスロメルの旅手記を真似したが笑い話にならない。あっちは抜けた先が雪山。いや、過酷さはどっちも変わらないかもしれない。それを笑い話にしたテスロメルは流石なのだろう。
とにかく、今僕らの目の前には砂地が広がっており、明らかに何かある塔が建っていた。
「休みたいところだが、さて」
コストイラも戦闘が行われる可能性が高い塔に悩む。流石にこれまでの経験からいって戦闘がないなんてことはないだろう。塔に近づくと気付かされる。塔には龍の顔が彫られている。扉のノブにも龍の頭があしらわれており、塔の住人の変態性が見えてくる。
「ドラゴンばっかりだな」
「絶対一家言あるな」
「またドラゴンか。疲れるわね」
3人の幼馴染は遠い目をする。
「スルーするという手がありますよ」
「いやー。それは勇者として大丈夫なのか?」
勇者。コストイラの言葉が深く刺さる。この場にいる誰もが勇者を分かっていない。勇者とは何なのか。誰も正解は分からない。
『オオオオオオオオ!!』
上から声が落ちてくる。それは大きく、そして神々しくもあった。
白き龍。ホーリードラゴンが空にいた。ホーリードラゴンはその空色の眼で睥睨し、様子を窺っている。
違和感があった。これまでの魔物は瞳の色がオレンジ色だったが、この個体は空色だ。何かに操られているのだろうか。
『オオオオ!』
上からドラゴンブレスが落とされる。僕達は慌てて中心地から逃げる。しかし、余波に当たり、体が浮く。運動神経のいいシキやアシド、コストイラ、レイド、アストロはうまく体をコントロールして着地する。
僕とエンドローゼは手足をバタバタと動かし、体をコントロールしようとするが、無様に顔から着地する。
「ぺっぺっ」
顔を上げて必死に口内の砂を吐き出す。エンドローゼはレイドに抱え上げられ、僕は何もされない。嘘でしょ?これって何がいけないの?人望?能力?どっちにしろ悲しくなってきちゃうな。
ホーリードラゴンはすでに次のブレスが充填されていた。
僕は変な体勢で走り始める。前を走るアシド達を追う。アシド達は塔の中に避難する。
ドラゴンがブレスを吐き出す。どんどんと背中に迫ってくる。
ヤバイ。追いつかれる。
背中に衝撃が走る。ブレスとはまた違う衝撃だ。僕は転げながら塔内に入る。
バタン。
「大丈夫か?」
「は、はい」
扉を閉じたレイドが質問し、僕は息を切らしながら答える。
「何とか間に合いました」
「いや、背中の方は」
「そういえば凄い衝撃でしたね。今もまだちょっと痛いですね。レイドさんが何かしてくださったんですか?」
背中を触ろうとするが、柔軟が足りず届かない。悲しいことに硬すぎる。
「ごめんなさい」
シキに謝られた。何かされたのだろうか。心当たりがない。
「間に合わんかもしれんから、オマエの背を蹴飛ばしたのだ」
なるほど。僕はシキに助けられたわけだ。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、シキの目が見開かれる。ここ最近、シキの表情が分かってきたような気がする(気のせい)。
「アレン」
「はい?」
「アレンは蹴られて喜ぶ人?」
え? 何を言っているんだ?
「ち、違いますよ!?」
「でも、今ありがとうって」
「それは助けてくれてありがとうという意味で」
「そう」
シキはアストロの方へ行ってしまう。正しく理解してくれたのだろうか。
ドゴンと扉が開いた。玄関とは別の扉だ。ドラゴンがわんさか出てきた。
「は?」
「逃げろ。流石にこの数は無理だわ」
ドラゴンの数は未だに数えきれない。玄関の扉の前にもドラゴンが陣取っている。逃げ道が階段しかない。
「ひーひー」
「ふぇーはー」
体力のない僕とエンドローゼは早々に速度低下していた。つまりは体力が尽きたのだ。レイドは左手に楯を持ち替えると、右腕でエンドローゼを抱えた。あれ?僕は?
「頑張りなさい。死にたくなければね」
アストロに鞭打たれ、階段を走る。僕が醜いのに対し、アストロは駆け上がりながら魔術を放っていた。逃げながらも階段を上ってくるドラゴン達に牽制していた。
「なんで、そんな、ことが」
「鍛え方が違うのよ。貴方は口ではなく足を動かしなさい。力尽きるまで」
凄い人だ。僕には真似できない。
「上限だ」
アシドは一番上にあった階段の先の扉を開け放つ。
『ヌゥン。まさかここまで来るとは』
そこにいたのは龍の頭骨を被り、小さなドラゴンのあしらわれた杖を持った、6mはあろうか巨人だった。頭骨から覗く薄オレンジ色の瞳は、こちらを睨み、杖につけられた空色の宝玉を輝かせた。
魔力の塊が複数出現し、発射される。
レイドはエンドローゼを後ろに置くと、楯で防ぎ、残りをアシド、コストイラが弾く。
次の瞬間、後ろの扉が爆発した。大量の竜が姿を見せる。
それに対し、アストロが大量の水で押し流す。ブルードラゴンだけは踏みとどまった。シキは先頭の青竜の尾を掴むと、その細腕のどこから出ているのかもわからぬパワーで投げ飛ばす。巻き込まれた青竜は階下へ消えていった。
『ヌゥン。これまでとは。ならば』
ドラゴンマスターが杖を振るうと、再び空色の宝玉が光る。
「階下は?」
「来てない」
『ヌゥン。馬鹿め』
ドラゴンマスターの後ろの壁が壊れる。
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