メグルユメ
3.干上がりかけの湿原
秋。滝の裏。洞窟。
どの単語も涼しげな雰囲気を放っている。
秋は夏期から冬期へと移り行く、変わり目の季節である。暑かった時期から寒い季節に移る境目である。涼しい気温の時期である。
滝の裏は、というより滝の周りは涼しい。滝から出現する水の飛沫が周りの空気から気化熱によって熱を奪う。常に涼しさが存在する。
洞窟は直射日光を避けられ、冷たい石肌に囲まれているため涼しい。
そんな涼しいが3つもある空間で、コストイラは汗を流していた。アストロが顎まで垂れた汗を拭う。
「予想以上に暑いんだけど」
「確かに暑くなっていってんな」
アシドは目に汗が入り、舌打ちしながら目元をぐりぐりと押す。
「この先、熱い何かがあるんだろうけど、何か、嫌な臭いがしねェか」
言われ、皆が鼻を鳴らして、臭いを嗅ぐ。皆が眉を顰める。アシド、レイド、シキは感じ取れ、アレン、アストロ、エンドローゼは何も分からない。
「なんだこの廃棄物を燃やしたような臭いは?」
「オレは汚泥を燃やした感じだと思ったんだけど」
「生木の燃える臭い」
三者三様の臭いのコメントだが、共通していることがある。燃焼、火だ。この先にある出口で、何かが燃やされているのだ。
「よく分かんないけど水の魔力を用意しておくわね」
「アシドの言う通りなら、言葉の通り、焼けた石が泉を消すぜ」
「………気休めよ」
「見えたぞ、出口だ」
コストイラとアストロが会話をする中、レイドは出口を見つけ、臨戦態勢に入る。楯を構えながらゆっくりと歩を進める。じりじりと熱が肌を刺激する。そして、遂に外の世界が見える。
地獄だ。
アレン達がかつて訪れた地獄とは違う。絵物語で読んだ、空想の地獄そのものだ。草木が燃え、沼地がかつての水面より半分以上消えている。地面の何か所かは罅割れが網目状に広がっており、何かが落ちた跡のようになっている。それを作り出したと思われる2体の争いに巻き込まれると考えると、精神的にも地獄だ。
2体とも初めて遭う魔物だ。片方はフレアドラゴンに似ているが、細部が違う。まず体長が少し大きい。フレアドラゴンが8mほどなのに対し、この魔物は12mほどはある。さらに、背や尾には炎が生えている。間違いなく炎の精霊のサラマンドラだ。
もう片方は、高さ4mほどはあろう巨人だ。深紫の肌の巨人は両翼9mほどの翼を携え、頭部には2mほどの角が生えている。腕の太さはレイドの胴並みにあり、殴られればひとたまりもないだろう。
『ゴォオオオオオッッ!!』
サラマンドラは叫ぶと口内から炎を放つ。バルログは腕をクロスさせ、受け止める。腕を解放するとともに炎を弾き飛ばす。
『ゴァアッ!』
バルログはぐちゃりと口を開け、炎を纏わせた拳でサラマンドラの頬を殴る。殴られたことで顔をブレさせながら、サラマンドラは尾を鞭のようにしならせ、バルログの脇腹を鋭く叩く。バルログは脇腹を押さえ、片膝をついてしまう。サラマンドラは顔をフルフルと振り、バルログを睨む。
『ゴォオオオオオオオオオッッ!!』
『ガァアアアアアアアアアッッ!!』
サラマンドラが叫び、流星群を発生させる。バルログも叫び、手を組ませ地面を大きく叩く。叩いた位置から100㎝前のところに炎の柱が出現する。ファイアピラーとは違う、圧倒的な火力の炎が、流星群を退けさせていく。その隙にサラマンドラは、炎を吐き出し、バルログに命中させた。炎を止めようとした腕の間を擦り抜け、まともに体で受け止めてしまう。しかし、踏み留まり、腕を振るい、炎を散らす。発射口であるサラマンドラから離れており、威力が落ちていた。
アレン達は洞窟の口で、頭を押さえ、伏せていた。アレンは焦っていた。戦わずして通り抜ける道が見つからない。どう動いても、補足されそうだし、巻き込まれてしまいそうだ。
「ど、どうすればいいと思います?」
「その前に質問なんだけど、あの2体は倒れそうなの?」
「………いつから戦い始めたのかはわかりませんが、2,3日はかかりそうな気がしますね」
「待機は無理ね」
「オレ達は未だに自分たちのいるところが分かっちゃいねェ。そうだろ」
「そうね」
「じゃあ、わざわざ通り抜ける必要はない」
アシドに言われ、6人が眉根を寄せるが、すぐにエンドローゼ以外が納得する。アシドの提案は通り抜けるのではなく通り過ぎようということだ。
すぐに左右を確認する。
最近、アレンはレベルが50になり、視力が微妙に上がった(気のせい)気がするので望遠鏡を使わずに見る。
「左は崖と湖が見えます。右はえっと」
「何だよ」
「村、ですかね」
「村!?」
地獄のような土地の近くに村があると思わず、コストイラは声を出してしまう。
「どちらに行きますか?」
「じゃあ」
コストイラが選ぼうとしたとき、2体が再び雄叫びを上げた。両者ともにHPは半分まで削られており、戦いは激化していくことが予想された。
巨人と巨体がぶつかり合う。
どの単語も涼しげな雰囲気を放っている。
秋は夏期から冬期へと移り行く、変わり目の季節である。暑かった時期から寒い季節に移る境目である。涼しい気温の時期である。
滝の裏は、というより滝の周りは涼しい。滝から出現する水の飛沫が周りの空気から気化熱によって熱を奪う。常に涼しさが存在する。
洞窟は直射日光を避けられ、冷たい石肌に囲まれているため涼しい。
そんな涼しいが3つもある空間で、コストイラは汗を流していた。アストロが顎まで垂れた汗を拭う。
「予想以上に暑いんだけど」
「確かに暑くなっていってんな」
アシドは目に汗が入り、舌打ちしながら目元をぐりぐりと押す。
「この先、熱い何かがあるんだろうけど、何か、嫌な臭いがしねェか」
言われ、皆が鼻を鳴らして、臭いを嗅ぐ。皆が眉を顰める。アシド、レイド、シキは感じ取れ、アレン、アストロ、エンドローゼは何も分からない。
「なんだこの廃棄物を燃やしたような臭いは?」
「オレは汚泥を燃やした感じだと思ったんだけど」
「生木の燃える臭い」
三者三様の臭いのコメントだが、共通していることがある。燃焼、火だ。この先にある出口で、何かが燃やされているのだ。
「よく分かんないけど水の魔力を用意しておくわね」
「アシドの言う通りなら、言葉の通り、焼けた石が泉を消すぜ」
「………気休めよ」
「見えたぞ、出口だ」
コストイラとアストロが会話をする中、レイドは出口を見つけ、臨戦態勢に入る。楯を構えながらゆっくりと歩を進める。じりじりと熱が肌を刺激する。そして、遂に外の世界が見える。
地獄だ。
アレン達がかつて訪れた地獄とは違う。絵物語で読んだ、空想の地獄そのものだ。草木が燃え、沼地がかつての水面より半分以上消えている。地面の何か所かは罅割れが網目状に広がっており、何かが落ちた跡のようになっている。それを作り出したと思われる2体の争いに巻き込まれると考えると、精神的にも地獄だ。
2体とも初めて遭う魔物だ。片方はフレアドラゴンに似ているが、細部が違う。まず体長が少し大きい。フレアドラゴンが8mほどなのに対し、この魔物は12mほどはある。さらに、背や尾には炎が生えている。間違いなく炎の精霊のサラマンドラだ。
もう片方は、高さ4mほどはあろう巨人だ。深紫の肌の巨人は両翼9mほどの翼を携え、頭部には2mほどの角が生えている。腕の太さはレイドの胴並みにあり、殴られればひとたまりもないだろう。
『ゴォオオオオオッッ!!』
サラマンドラは叫ぶと口内から炎を放つ。バルログは腕をクロスさせ、受け止める。腕を解放するとともに炎を弾き飛ばす。
『ゴァアッ!』
バルログはぐちゃりと口を開け、炎を纏わせた拳でサラマンドラの頬を殴る。殴られたことで顔をブレさせながら、サラマンドラは尾を鞭のようにしならせ、バルログの脇腹を鋭く叩く。バルログは脇腹を押さえ、片膝をついてしまう。サラマンドラは顔をフルフルと振り、バルログを睨む。
『ゴォオオオオオオオオオッッ!!』
『ガァアアアアアアアアアッッ!!』
サラマンドラが叫び、流星群を発生させる。バルログも叫び、手を組ませ地面を大きく叩く。叩いた位置から100㎝前のところに炎の柱が出現する。ファイアピラーとは違う、圧倒的な火力の炎が、流星群を退けさせていく。その隙にサラマンドラは、炎を吐き出し、バルログに命中させた。炎を止めようとした腕の間を擦り抜け、まともに体で受け止めてしまう。しかし、踏み留まり、腕を振るい、炎を散らす。発射口であるサラマンドラから離れており、威力が落ちていた。
アレン達は洞窟の口で、頭を押さえ、伏せていた。アレンは焦っていた。戦わずして通り抜ける道が見つからない。どう動いても、補足されそうだし、巻き込まれてしまいそうだ。
「ど、どうすればいいと思います?」
「その前に質問なんだけど、あの2体は倒れそうなの?」
「………いつから戦い始めたのかはわかりませんが、2,3日はかかりそうな気がしますね」
「待機は無理ね」
「オレ達は未だに自分たちのいるところが分かっちゃいねェ。そうだろ」
「そうね」
「じゃあ、わざわざ通り抜ける必要はない」
アシドに言われ、6人が眉根を寄せるが、すぐにエンドローゼ以外が納得する。アシドの提案は通り抜けるのではなく通り過ぎようということだ。
すぐに左右を確認する。
最近、アレンはレベルが50になり、視力が微妙に上がった(気のせい)気がするので望遠鏡を使わずに見る。
「左は崖と湖が見えます。右はえっと」
「何だよ」
「村、ですかね」
「村!?」
地獄のような土地の近くに村があると思わず、コストイラは声を出してしまう。
「どちらに行きますか?」
「じゃあ」
コストイラが選ぼうとしたとき、2体が再び雄叫びを上げた。両者ともにHPは半分まで削られており、戦いは激化していくことが予想された。
巨人と巨体がぶつかり合う。
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