メグルユメ
6.万年氷洞
翌日。
アレン達は洞窟の奥に進んでいく。洞窟の中には氷で作られた結晶があちらこちらに生えていた。
寒い。氷の結晶が生えてくるぐらいには寒い。しかし、外よりはマシだ。風が吹いていないから。エンドローゼは張り切っていた。昨日は不甲斐無い姿を見せたから、とても元気だ。寝癖で作られたアホ毛を指摘されると、あわててコートのフードを被った。
直すのではなく誤魔化したエンドローゼを、アストロはニヤニヤしている。コストイラとシキはアシドと同じ長袖カーディガンのスタイルになっている。コストイラは動きづらかったのか脱いだようで、寒さは我慢すると大見栄切った。コストイラなら根性で何とかしそうだ。シキは慣れたのか一言しか返さない。ポーカーフェイスすぎて真偽は不明だ。
洞窟内は結構広い。横幅が約3m。高さが約5mはある。奥行きは曲がっているためか100m以上先は見えない。
地図を見る限りでは、川の下を進んでいる。地図ができていて、売られているくらいなので、崩落の危険性はないのだろうと信じたい。
この洞窟は地元の人の話ではその昔、スリースという男が開通したらしい。伝承によれば一人で。もの凄い技術と力の持ち主なのか、単に手伝ってくれる友人がいなかったのか。真相は定かではないが、結果得られた洞窟は重要な経路になっている。
この上に流れる河は、寒期になると表層が凍り、渡れるようになる。暖期は河が凍らないので渡れない。通年で渡れるようになったこの洞窟はまさしく偉業だろう。
『………ォォ………』
どこからか鳴き声が響いた。いや、どこからかなど決まっている。なぜなら、この洞窟は一本道なのだから。
「聞いたことねェ声だったよな」
「いや、ちょっと、分からない」
コストイラが確認するように後ろを向くが、アストロにとっとと前向けと言わんばかりに一蹴された。コストイラが哀しそうな眼をするが、アストロはどこ吹く風で、知らぬ存ぜぬを通した。
明らかにこの先に何かいる。分かっているが、この先にしか道がないので仕方なくとも進まなくてはならない。
最初行き止まりかと思った。洞窟内、アレン達の見る道の先に、灰青色の壁があった。この壁は温度があり、温かさがありがたい。
「これ、魔物です」
アレンが言うと、全員がさっさと移動する。流石の速さを褒めるべきか、慣れるほどの危険に身を晒したことを嘆き悲しむべきか。アレンが遠い目をすると、遠慮なしに触り続けていた尻尾が動いた。
一番近くにいたコストイラが当たりそうになるが、すんでのところで躱す。誰にも当たらなかった尻尾は本物の壁に当たり、洞窟内を揺らす。
パラパラと小石が落ちてきたり、砂埃が舞ったりしているが洞窟が崩落しないか心配になる。瓦礫だけならまだしも、水まで落ちてくれば、対処できない。
ゆらりという効果音が似合いそうな動きで壁が首を擡げた。
その壁はドラゴンだった。
「ドラゴンが道塞いでるなんて聞いてねェぞ」
コストイラの怒りはもっともだが、今は話している場合ではない。今まで背を見せていたドラゴンは窮屈そうに体を折り、こちらを前にしようとするが、失敗する。このドラゴンの体長は目算6mはある。勢いをつければ反転できるかもしれないが、この空間では怪しい。ドラゴンは必死に後ろを向こうと首を動かしているが、顔全体をこちらに向けられないので、こちらの動きを把握するのが難しそうだ。
「あれ? これ、楽勝なのでは?」
コストイラがポツと呟いた。その呟きは皆に届き、今一度ドラゴンを見る。ドラゴンはこちらを体ごと向けることができない。全体像の状態を一回で確認できない。口内からでも存在感を放つ牙はこちらに届かない。移動は後ろ向きに歩くことになるので速度低下。武器は尻尾だけ。しかもコストイラがさっき躱せていた。
あれ? これ、楽勝なのでは?
「どのみちこいつを何とかしなきゃいけねェんだ。倒すか、追い払うか。違いはあんまねェだろ」
コストイラが刀を抜きながら走り始める。ドラゴンのオレンジの瞳がギラリとコストイラを捉えた。尻尾がうねる。咄嗟に刀を当て、ガードするが体ごと持ちあがり、壁に叩きつけられる。コストイラの口から血霧が舞う。
アレン達は洞窟の奥に進んでいく。洞窟の中には氷で作られた結晶があちらこちらに生えていた。
寒い。氷の結晶が生えてくるぐらいには寒い。しかし、外よりはマシだ。風が吹いていないから。エンドローゼは張り切っていた。昨日は不甲斐無い姿を見せたから、とても元気だ。寝癖で作られたアホ毛を指摘されると、あわててコートのフードを被った。
直すのではなく誤魔化したエンドローゼを、アストロはニヤニヤしている。コストイラとシキはアシドと同じ長袖カーディガンのスタイルになっている。コストイラは動きづらかったのか脱いだようで、寒さは我慢すると大見栄切った。コストイラなら根性で何とかしそうだ。シキは慣れたのか一言しか返さない。ポーカーフェイスすぎて真偽は不明だ。
洞窟内は結構広い。横幅が約3m。高さが約5mはある。奥行きは曲がっているためか100m以上先は見えない。
地図を見る限りでは、川の下を進んでいる。地図ができていて、売られているくらいなので、崩落の危険性はないのだろうと信じたい。
この洞窟は地元の人の話ではその昔、スリースという男が開通したらしい。伝承によれば一人で。もの凄い技術と力の持ち主なのか、単に手伝ってくれる友人がいなかったのか。真相は定かではないが、結果得られた洞窟は重要な経路になっている。
この上に流れる河は、寒期になると表層が凍り、渡れるようになる。暖期は河が凍らないので渡れない。通年で渡れるようになったこの洞窟はまさしく偉業だろう。
『………ォォ………』
どこからか鳴き声が響いた。いや、どこからかなど決まっている。なぜなら、この洞窟は一本道なのだから。
「聞いたことねェ声だったよな」
「いや、ちょっと、分からない」
コストイラが確認するように後ろを向くが、アストロにとっとと前向けと言わんばかりに一蹴された。コストイラが哀しそうな眼をするが、アストロはどこ吹く風で、知らぬ存ぜぬを通した。
明らかにこの先に何かいる。分かっているが、この先にしか道がないので仕方なくとも進まなくてはならない。
最初行き止まりかと思った。洞窟内、アレン達の見る道の先に、灰青色の壁があった。この壁は温度があり、温かさがありがたい。
「これ、魔物です」
アレンが言うと、全員がさっさと移動する。流石の速さを褒めるべきか、慣れるほどの危険に身を晒したことを嘆き悲しむべきか。アレンが遠い目をすると、遠慮なしに触り続けていた尻尾が動いた。
一番近くにいたコストイラが当たりそうになるが、すんでのところで躱す。誰にも当たらなかった尻尾は本物の壁に当たり、洞窟内を揺らす。
パラパラと小石が落ちてきたり、砂埃が舞ったりしているが洞窟が崩落しないか心配になる。瓦礫だけならまだしも、水まで落ちてくれば、対処できない。
ゆらりという効果音が似合いそうな動きで壁が首を擡げた。
その壁はドラゴンだった。
「ドラゴンが道塞いでるなんて聞いてねェぞ」
コストイラの怒りはもっともだが、今は話している場合ではない。今まで背を見せていたドラゴンは窮屈そうに体を折り、こちらを前にしようとするが、失敗する。このドラゴンの体長は目算6mはある。勢いをつければ反転できるかもしれないが、この空間では怪しい。ドラゴンは必死に後ろを向こうと首を動かしているが、顔全体をこちらに向けられないので、こちらの動きを把握するのが難しそうだ。
「あれ? これ、楽勝なのでは?」
コストイラがポツと呟いた。その呟きは皆に届き、今一度ドラゴンを見る。ドラゴンはこちらを体ごと向けることができない。全体像の状態を一回で確認できない。口内からでも存在感を放つ牙はこちらに届かない。移動は後ろ向きに歩くことになるので速度低下。武器は尻尾だけ。しかもコストイラがさっき躱せていた。
あれ? これ、楽勝なのでは?
「どのみちこいつを何とかしなきゃいけねェんだ。倒すか、追い払うか。違いはあんまねェだろ」
コストイラが刀を抜きながら走り始める。ドラゴンのオレンジの瞳がギラリとコストイラを捉えた。尻尾がうねる。咄嗟に刀を当て、ガードするが体ごと持ちあがり、壁に叩きつけられる。コストイラの口から血霧が舞う。
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