メグルユメ
15.深淵の塔
昏く濃い紫色の塔。塔の色が属性を表しているのなら、この塔はおそらく闇属性だろう。火、水ときたから次は然か地だと思っていたのだが、違ったようだ。今までの傾向を考えれば、この囲っている塀に何かの魔物がいるはずだ。レイスだろうか、ゾンビプリズナーだろうか。それとも新しく出会う闇属性のドラゴンだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、目の前にはすごく落ち込んでいる浮遊体がいた。すごく落ち込んでいて、キョロキョロと辺りを見回してはさらに落ち込む。何だろう、新しい魔物か?よく見ているとそれは知っている魔物だった。
「あれ、グリムリーパーみたいです」
「「「えっ」」」
全員が驚いた。鎌を持っていないグリムリーパーは分かりづらい。あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。グリムリーパーは森の方へ半身を隠す。草を掻き分け、ガサガサと何かを探している。いや、何かとぼかすのは止めよう。おそらく鎌だ。もはやアイデンティティとも呼べる鎌を見つけようとして見つけられずにしょんぼりしているのだ。
何とも人間味のある魔物だろう。
「とりあえず離れますか」
「そうね。面倒そうだから関わらないようにしましょう。何か、本当に面倒そうだし」
皆が頷き、ゆっくりと後ろに下がる。その時、ぐるりと体が向いた。捕捉された、まずい。両者の時間が止まる。先に動いたのはグリムリーパーだ。浮いているためか、音もなく動く。
アレン達は身構えるが、グリムリーパーは横を通り過ぎた。後ろを見るときらりと光るものがあった。鎌だ。グリムリーパーは鎌を拾い上げ、まじまじと眺めた後、頬擦りをし始めた。よっぽど大事なものだったのだろう。とても嬉しそうだ。だったら落とすなよと思いたいが、何か深い理由でもあるのかもしれない。
グリムリーパーはひしっとしっかりと掴み、今度は落とすまいと身を寄せる。こちらをじっと見ている。なくした原因は僕たちは違うよ。こちらの出方を窺っている。ならばこちらからは仕掛けまい。
ロッドはその様子を自室から眺めていた。偶然などではない。そもそもグリムリーパーの鎌を隠したのはロッドだ。理由は至ってシンプルで、暇だったからだ。
勇者一行と戦うための準備を進めていたが、準備をするのが速すぎた。準備が終わってなお時間を持て余していたのだ。
魔王軍、しかもその幹部となれば側近がつく。ロッドはそいつをからかって遊ぼうと画策した。本当ならば女を侍らせ、酒池肉林して過ごしたかったが、戦いが始まった時のことを考え、側に置くのは止めた。
そう、グリムリーパーの鎌が隠されたのは仕方がなかったのだ。
「まぁ、でも一行が来ちゃったしな。回復術士がいるっぽいし、あいつも反応するよね」
ロッドはグリムリーパーではなく、もう一人の魔物を見ていた。
そんなことを考えながら歩いていると、目の前にはすごく落ち込んでいる浮遊体がいた。すごく落ち込んでいて、キョロキョロと辺りを見回してはさらに落ち込む。何だろう、新しい魔物か?よく見ているとそれは知っている魔物だった。
「あれ、グリムリーパーみたいです」
「「「えっ」」」
全員が驚いた。鎌を持っていないグリムリーパーは分かりづらい。あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。グリムリーパーは森の方へ半身を隠す。草を掻き分け、ガサガサと何かを探している。いや、何かとぼかすのは止めよう。おそらく鎌だ。もはやアイデンティティとも呼べる鎌を見つけようとして見つけられずにしょんぼりしているのだ。
何とも人間味のある魔物だろう。
「とりあえず離れますか」
「そうね。面倒そうだから関わらないようにしましょう。何か、本当に面倒そうだし」
皆が頷き、ゆっくりと後ろに下がる。その時、ぐるりと体が向いた。捕捉された、まずい。両者の時間が止まる。先に動いたのはグリムリーパーだ。浮いているためか、音もなく動く。
アレン達は身構えるが、グリムリーパーは横を通り過ぎた。後ろを見るときらりと光るものがあった。鎌だ。グリムリーパーは鎌を拾い上げ、まじまじと眺めた後、頬擦りをし始めた。よっぽど大事なものだったのだろう。とても嬉しそうだ。だったら落とすなよと思いたいが、何か深い理由でもあるのかもしれない。
グリムリーパーはひしっとしっかりと掴み、今度は落とすまいと身を寄せる。こちらをじっと見ている。なくした原因は僕たちは違うよ。こちらの出方を窺っている。ならばこちらからは仕掛けまい。
ロッドはその様子を自室から眺めていた。偶然などではない。そもそもグリムリーパーの鎌を隠したのはロッドだ。理由は至ってシンプルで、暇だったからだ。
勇者一行と戦うための準備を進めていたが、準備をするのが速すぎた。準備が終わってなお時間を持て余していたのだ。
魔王軍、しかもその幹部となれば側近がつく。ロッドはそいつをからかって遊ぼうと画策した。本当ならば女を侍らせ、酒池肉林して過ごしたかったが、戦いが始まった時のことを考え、側に置くのは止めた。
そう、グリムリーパーの鎌が隠されたのは仕方がなかったのだ。
「まぁ、でも一行が来ちゃったしな。回復術士がいるっぽいし、あいつも反応するよね」
ロッドはグリムリーパーではなく、もう一人の魔物を見ていた。
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