メグルユメ

トラフィックライトレイディ

12.氷獄の塔

 次に訪れたのは蒼い塔だった。アシドの髪の色にも似たその塔は紅い塔と同じように塀に囲まれていた。塀からは冷気が漏れている。水属性には水と氷の二つあるが、この感じは氷の方だろう。アシドは氷の方はからっきしなので肩を竦めていた。塀に触れれば、氷に触れたように冷たかった。指の皮が一瞬へばりついた。ここまで冷たいと中は極寒の世界だろう。



 塀に沿って歩いていると、ブルードラゴンがのっそのっそと歩いていた。体をぶるぶると振るわせている。我々と同じように寒いのだろう。ドラゴンもトカゲの一種のため大半が変温動物だ。ブルードラゴンも例に漏れず変温動物だ。動物というより魔物だが。



 ブルードラゴンは眠たげな目でこちらを窺っていた。あまりこちらに関わりたくなさそうだ。動きたくもないのだろう。体が呼吸に合わせて上下させている。緩慢な動きで瞼を閉じ、開ける。瞬きと呼ぶには遅い動きにしか見えない。



 再びゆっくりと脚を動かし、こちらに近付いてきた。突進ではなくただの歩行。攻撃の意図すら感じない。コストイラも眉を顰めて、手を空中で中途半端に浮かせている。攻撃するべきかどうかが分からず迷っているらしい。シキはブルードラゴンではなく塀の方を見ている。何かあるのかと思い、アレンも塀の方を見るとバリと音がした。















 カレトワは飛び起きた。今まで気持ちよく寝ていたが、今、幹部の誰かがやられた。強いやつが現れた。レベル50であるカレトワが恐怖を感じて起きた。



「ん」



 キョロキョロと周りを見て安全が確認できるとブワリと汗が噴き出てきた。平静を保つためいつも通りの朝のルーティーンをすることにする。伸びをしながらベッドを下りる。パキッと骨が鳴った。疲れているのだろうか。寝起きの為か欠伸が出た。左手で覆っておく。カレトワは下着姿の自信の体を見下ろす。自他ともに認めるスタイルの良い体に頬を綻ばせ、臍のあたりを撫でる。そのまま腰、胸、腿を触る。



「ふふん」



 誰に自慢するでもないが満足げに口角を上げる。あれ?ちょっと二の腕あたりにお肉がつき始めたか?おなかにもお肉がついたかも。まさかアップルパイか?カゴメの特選アップルパイか?食べ過ぎた?



 カレトワは下唇を噛む。これからは少し控えよう。カレトワはシャツとズボンを身に着け、剣を手に取る。



「あれ?」



 カレトワは窓の外の景色に声を出す。



「あの子が塀の近くに行ってる。珍し。何だろ」



 カレトワの視線の先には白い見た目をした、白い印象を受ける魔物がいた。

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