メグルユメ

トラフィックライトレイディ

9.紅蓮の塔

 峠を抜けた先は塔しかなかった。正確には他にもたくさんあるのだが、目を引くものが塔しかない。コストイラの髪の色にも似た、燃えるような赤い塔は、3メートルほどの外壁で囲われている。上から見たときは分からなかったが、結構高い外壁で守られていた。とりあえず、外壁内に入るために入り口を探さなければ。



 約3分後。明らかに入り口があるだろうところを発見した。曖昧な言い回しにしているのには理由があり、まだ確定できていないからだ。では逆になぜ推測できたのか。



 レッドドラゴンが寝そべっているのだ。



 とりあえず邪魔なのでどかしたい。静かに近づこうとすると、下顎を地面につけて伏せていたレッドドラゴンの目元が動く。まだ開いてはいない。全員の動きが一瞬止まる。しかし、足の速い2人は止まるどころか一気に動いた。槍で首を貫通する。間違いなくこの攻撃で起きた。痛みによって起きるのは確実だ。痛すぎて気絶してくれていたら助かるが、相手はドラゴン。そううまくいくはずもない。



『グゥオオオオッッ!!』



 ゴボゴボと血を押し出しながら、喉の奥から絶叫が響く。絶叫を上げるために持ち上げられた首にナイフを刺し込み、声を出せないようにする。絶叫に声はなくなったが、音自体は出ている。しかし、血が多くなっていくと音すら濁り、籠って聞こえなくなっていく。溢れる血の隙間から出る、言葉にならない叫び声に込めるのは、脅威に対する注意喚起と救済。自分が失われ、空っぽになる感覚を味わい、冷たくなっていくのを感じながら叫ぶ。叫んで、叫んで。叫び続けて――――。



 そして、奴が現れた。



 奴は石でできた囲いをものともせず突き破り這い出てきた。煙の中から現れるそいつは長い首を擡げ、こちらを睥睨する。2メートルを超える位置から見下ろす目は状況の把握を優先する。



『フンッ』



 鼻で笑うような声を出し、大きく口を開ける。



『ゴォガァアアアアアアッッ!!』



 死した同胞に向けてか、殺した仇敵に対してか、ドラゴンは咆哮を上げる。大気が震え、体が固まる。これまでドラゴンとは比べ物にならないほどの威圧感。3メートルほどしかなかった今までのドラゴンと違い、はるかに大きい。露出している部分だけで4メートル近くあり、まだ全体像が見えていないのでそれより大きいのは確実だ。体はマイトゴーレムのように鱗で覆われており、ところどころ罅割れており、オレンジに光る肌が露出している。



 ギョロリとアシドとシキを見た。レッドドラゴンの上に乗る2人は明らかな仇敵だ。最初に狙われるのは道理。ガバリと口を開ける。アシドとシキは即座に横に跳んだ。ドラゴンの狙いが変わらない。そのまま口から炎が飛び出し、レッドドラゴンが燃えた。燃えカスが風に煽られ空へと舞い上がっていく。



 火力が違う。威力が違う。威圧が違う。



 アレンには特殊な眼があり、そこから得られる情報は格が違った。体力が42700?こちらの体力の誰よりも多い。今までの敵と何もかもが違いすぎる。



 驚愕するこちらなど露知れず、フレアドラゴンはこちらに大きく口を開けた。上から高火力の炎が落ちてきた。

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