メグルユメ
3.荒くれ鬼の集う城
鬼。
龍や吸血鬼と並ぶ世界最強の種族の一角である。頑健な肉体と比類なき怪力、圧倒的な魔力による鋼鉄の如き闘気は、人・魔をまるで紙切れのように薙ぎ払う。神仏が相手でも一歩引かぬ戦闘狂な一面が目立つ。
「その鬼を退治しに行くのか?」
コストイラ達はヂドルのギルドに来ていた。今朝、アストロのレベルがもうすぐ30になると知り、では、30にしようと依頼を受けに来たのだ。レリアが斡旋したのが今回の鬼退治だった。
「その話を聞くに明らかに強い鬼を退治できんのか?」
「分かりません。しかし、今回の依頼は退治せずとも追い払いだけでもレベルアップができれば万々歳ですからね」
どこか不安を残しながらコストイラは納得しようとする。
依頼の場所は廃城であった。
城というと、王国の豪華絢爛な王城を思い浮かべるが、ここは違った。城も東方風だった。綺麗に塗られていたであろう城壁、剥がれている瓦の屋根、ガラスも嵌められていない窓のような穴。想像していた城とはだいぶ違っていた。外観の感じ3階建てだが、鬼はどのあたりにいるのだろうか。
「行くか」
コストイラが足を踏み入れる。1階、2階には鬼はいなかった。しかし、生活感がある。3階。鬼がいた。分かりやすい感じでいた。しかも2体もいる。
1体は赤い肌の鬼。短い2本の角に口から飛び出した上向きに伸びる2本の牙。上半身には何も身に着けておらず、下半身も腰布のみ、さらには裸足。手には棘付きの金棒を握っている。
もう1体は同じ容姿の鬼。違いがあるとすれば2か所。青い肌と1本角であること。
「あれは、鬼、か」
『エ、鬼!?』
『ナ、エ、ウ、ウソッ!?ドコドコドコッ!?』
赤鬼と青鬼はともにキョロキョロと見渡し始める。
………あれ?
「あなた方が鬼では?」
『ヨク間違ワラレルノダガ、我々ハ赤鬼ト青鬼ダ。鬼デハナイ。鬼ト赤鬼・青鬼ハ別物ダ』
初めて聞いた。
「別なんですね」
『龍ト竜クライ違ウ』
「………?」
アレンは分からなかった。エンドローゼも首を傾げている。アストロがエンドローゼの肩をポンと叩く。
「龍は東方、竜は西方が由来のものよ」
また初めて聞いた。どこでそのような知識を身につけるのだろう。
『トコロデ何ヲシニ来タンダ?』
「実は依頼で」
話ができる相手と判断し、話し合いでの解決を目指す。終える頃には両鬼は黙っていた。
『我々モココニシカ住マウ場所ガナイ』
『アァ困ル』
「私達も依頼でここに来たので簡単には引けないです」
しかし、と赤鬼が顎を撫で、アレンは首に手を置く。
『権利ハ主張シナクテハナラン、ト』
「…?」
『デハッ!』
赤鬼の言葉にコストイラが眉を顰め、青鬼が反応する。ジャンプした青鬼は金棒を振り下ろす。金棒は床を砕き、全員が体勢を崩し、2階へ落ちる。発声どころか目配せすらしていない、完璧に近い連携プレー。
コストイラは着地するとすぐに横へ転がる。そこに金棒が振り下ろされる。コストイラは片膝がついた状態から刀を抜く。横薙ぐ金棒に合わせてジャンプし、刀を振る。しかし、1本角は斬れない。当たり前だ。地に足が付いていないのだ。力も出まい。足が地に着くと、そのまましゃがみ込む。頭上を金棒が通過。柄で強烈な突きを繰り出し、腹に突き刺す。青鬼はぐぬと呻き声を出し、腹を押さえる。コストイラは素早く刀を振り、上段に構えると即座に振り下ろす。金棒を持っていた右腕が切られる。
『グォオオオオッッ!』
左手で右腕を握り締めながら蹲る。あまりにも早いやり取り、展開にアレンも赤鬼も目を張る。赤鬼の金棒がミシリと音を立てる。赤鬼は金棒を思いっきり振り下ろすが、コストイラは半歩横にズレる。棘が布に引っ掛かり袖を破る。そこまでギリギリで躱し、赤鬼の右腕を斬る。
両鬼ともに利き腕を失われる。これはコストイラなりの慈悲である。赤鬼は右腕ごと金棒を摑む。
『ゴォアッ!』
「ふっ!」
怒りに任せた振り下ろしに、またしてもギリギリで躱しながら腹を捌く。赤鬼はドウと倒れた。蹲る青鬼に魔術をぶつける。アストロはムッとしていた。理由は簡単だ。何のために廃城まで来たのだと思っているのだ。アストロのレベル上げの為だ。何でコストイラが活躍しているんだ。
苛ついたアストロはコストイラを小突く。コストイラは涙目で訴えようとするが本人も気付いた。
「おぉ、そういやそうだったな」
忘れていたコストイラに苛つきもう一度拳を落とした。
龍や吸血鬼と並ぶ世界最強の種族の一角である。頑健な肉体と比類なき怪力、圧倒的な魔力による鋼鉄の如き闘気は、人・魔をまるで紙切れのように薙ぎ払う。神仏が相手でも一歩引かぬ戦闘狂な一面が目立つ。
「その鬼を退治しに行くのか?」
コストイラ達はヂドルのギルドに来ていた。今朝、アストロのレベルがもうすぐ30になると知り、では、30にしようと依頼を受けに来たのだ。レリアが斡旋したのが今回の鬼退治だった。
「その話を聞くに明らかに強い鬼を退治できんのか?」
「分かりません。しかし、今回の依頼は退治せずとも追い払いだけでもレベルアップができれば万々歳ですからね」
どこか不安を残しながらコストイラは納得しようとする。
依頼の場所は廃城であった。
城というと、王国の豪華絢爛な王城を思い浮かべるが、ここは違った。城も東方風だった。綺麗に塗られていたであろう城壁、剥がれている瓦の屋根、ガラスも嵌められていない窓のような穴。想像していた城とはだいぶ違っていた。外観の感じ3階建てだが、鬼はどのあたりにいるのだろうか。
「行くか」
コストイラが足を踏み入れる。1階、2階には鬼はいなかった。しかし、生活感がある。3階。鬼がいた。分かりやすい感じでいた。しかも2体もいる。
1体は赤い肌の鬼。短い2本の角に口から飛び出した上向きに伸びる2本の牙。上半身には何も身に着けておらず、下半身も腰布のみ、さらには裸足。手には棘付きの金棒を握っている。
もう1体は同じ容姿の鬼。違いがあるとすれば2か所。青い肌と1本角であること。
「あれは、鬼、か」
『エ、鬼!?』
『ナ、エ、ウ、ウソッ!?ドコドコドコッ!?』
赤鬼と青鬼はともにキョロキョロと見渡し始める。
………あれ?
「あなた方が鬼では?」
『ヨク間違ワラレルノダガ、我々ハ赤鬼ト青鬼ダ。鬼デハナイ。鬼ト赤鬼・青鬼ハ別物ダ』
初めて聞いた。
「別なんですね」
『龍ト竜クライ違ウ』
「………?」
アレンは分からなかった。エンドローゼも首を傾げている。アストロがエンドローゼの肩をポンと叩く。
「龍は東方、竜は西方が由来のものよ」
また初めて聞いた。どこでそのような知識を身につけるのだろう。
『トコロデ何ヲシニ来タンダ?』
「実は依頼で」
話ができる相手と判断し、話し合いでの解決を目指す。終える頃には両鬼は黙っていた。
『我々モココニシカ住マウ場所ガナイ』
『アァ困ル』
「私達も依頼でここに来たので簡単には引けないです」
しかし、と赤鬼が顎を撫で、アレンは首に手を置く。
『権利ハ主張シナクテハナラン、ト』
「…?」
『デハッ!』
赤鬼の言葉にコストイラが眉を顰め、青鬼が反応する。ジャンプした青鬼は金棒を振り下ろす。金棒は床を砕き、全員が体勢を崩し、2階へ落ちる。発声どころか目配せすらしていない、完璧に近い連携プレー。
コストイラは着地するとすぐに横へ転がる。そこに金棒が振り下ろされる。コストイラは片膝がついた状態から刀を抜く。横薙ぐ金棒に合わせてジャンプし、刀を振る。しかし、1本角は斬れない。当たり前だ。地に足が付いていないのだ。力も出まい。足が地に着くと、そのまましゃがみ込む。頭上を金棒が通過。柄で強烈な突きを繰り出し、腹に突き刺す。青鬼はぐぬと呻き声を出し、腹を押さえる。コストイラは素早く刀を振り、上段に構えると即座に振り下ろす。金棒を持っていた右腕が切られる。
『グォオオオオッッ!』
左手で右腕を握り締めながら蹲る。あまりにも早いやり取り、展開にアレンも赤鬼も目を張る。赤鬼の金棒がミシリと音を立てる。赤鬼は金棒を思いっきり振り下ろすが、コストイラは半歩横にズレる。棘が布に引っ掛かり袖を破る。そこまでギリギリで躱し、赤鬼の右腕を斬る。
両鬼ともに利き腕を失われる。これはコストイラなりの慈悲である。赤鬼は右腕ごと金棒を摑む。
『ゴォアッ!』
「ふっ!」
怒りに任せた振り下ろしに、またしてもギリギリで躱しながら腹を捌く。赤鬼はドウと倒れた。蹲る青鬼に魔術をぶつける。アストロはムッとしていた。理由は簡単だ。何のために廃城まで来たのだと思っているのだ。アストロのレベル上げの為だ。何でコストイラが活躍しているんだ。
苛ついたアストロはコストイラを小突く。コストイラは涙目で訴えようとするが本人も気付いた。
「おぉ、そういやそうだったな」
忘れていたコストイラに苛つきもう一度拳を落とした。
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