メグルユメ
8.紅い館
出口の先は人工の道が続き、橋が架けられており、その先に屋敷が存在している。おそらくルインの言っていた屋敷なのだろう。誰もが確信に近い思いでいた。
長手積みされた赤茶色のレンガは5メートルほどの高さのある外壁を作るのに使われ、さらに本館にも使われている。レンガは比較的新しい素材だ。歴史などたかだか50年程度しかない。にもかかわらず古風な印象が拭いきれない。いまだ薄く張られている霧のせいかもしれない。
すでに日は傾き、休むところを探していたアレン達は屋敷を訪ねることにした。橋に着くと屋敷の前に門番がいるのが見える。仏頂面で佇む彼はこちらを捉えると少し視線を逸らす。橋を渡ると男は仕事を始める。
「用件は?」
明らかに面倒くさそうに声を出す。客が来るまでずっと外で立ちっぱなしだと考えるとなんだか許せる気がしてきた。彼は退屈に殺されていたのかもしれません。
「外が暗くなってきてしまい、泊めていただきたいのですが」
「…………入れ」
説明を聞き、溜め息を溢しながら中に通される。何か裏があるかもしれないが館内に入っていく。
「ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ」
中に入るとメイドが案内をしてくれ、客間に通される。その間、何故かメイドからは殺気が漏れていた。警戒しかしなくなってしまう。
アレン達が荷物を下ろし、辺りを見渡す。知らない絵画、見たことない彫刻品、素人目に見ても高級品と分かる家具の数々。値が張りそうなソファと、クロスのかかったいくつかの丸テーブルが配置されている部屋は高級感溢れる演出があるものの、どこか安らぎを与える雰囲気がある。油断させるためだろうか。
数分経つと先程とは違うメイドが迎えに来た。
「主様がお呼びです」
アレン達は怪しまれない程度に武装してメイドの後ろを歩く。このメイドからは殺気は感じられない。さっきのメイドが特別だったのだろう。
「ようこそ、私の屋敷へ。長い間は無理だけど、どうぞ泊っていってくださいな」
紅赤色のドレスを着た金髪の少女が挨拶する。背が低く、外見からは主だとは思えない子供のような見た目だが、醸し出すオーラは熟練者のそれだった。
アレン達の目の前に食事が並べられていく。しかし、アレン達は食事に手を付けない。少女はそれを見てクスクスと笑う。
「毒なんか入っていないわ」
チラスレアと名乗った少女は苦笑しながらも食事を続ける。先陣はレイドが切った。レイドが何かのスープを口に付ける。何も問題がなさそうだ。食事が終わるとチラスレア自らが案内をし始める。何も分からないままついていくと応接間のようなところに案内される。
「ごめんなさい。ちょっといいかしら。頼みがあるのだけれど」
申し訳なさそうに眉根を寄せた顔をしながら隠し扉を開ける。少し血の臭いが鼻を刺す。何で隠し扉を開けたのか、とかどうして案内されたのか、この血の臭いは何かなど気になることはたくさんあるが、一番最初に気になったのはこの部屋に置かれている髑髏のことだ。とてつもなく生々しく、ただのインテリアには思えなかった。
「その頭蓋骨が気になるのかしら?」
「あ、いえ、ただのインテリアじゃなさそうだなと思いまして」
「っ………!そのことに気付くなんて驚いたわ。今までの人は触れもしなかったのに」
チラスレアは本気で驚いていた。細かいところにまで気付くなんて、このままあの子のところに連れて行ってもいいのだろうか。
入口の横に置かれている髑髏の元まで歩き、紅赤色の少女は金髪をさらりと溢しながら、その骨に触れる。
「予定が狂ったわ。まさかこのタイミングで客が来るなんて」
チラスレアの囁きは誰の耳にも届くことなく空気に溶ける。
「今、何か」
決意に満ちた目を向けられ、コストイラの言葉が止まる。少女は右手から紅い弾を発射する。その速さはアストロの魔術の速さを超えていた。咄嗟に動こうとするアシドもシキも間に合わない。その被弾が開始の合図になった。
チラスレアがこの地にやってきたのは妹の為だ。妹は生まれつき日光に弱く、陽光に当たり続けると肌が爛れてしまう。霧ならば陽の光を散らせると考えたのだ。
他にも妹には問題があった。加減を知らないのだ。最初の犠牲者は一番のお気に入りだった使用人だ。妹は泣きながら壊れた使用人を持ってきた。チラスレアは加減を知ってもらうために生贄を用意することにした。
そして今回も。
しかし、今回は駄目だ。反撃してくるのは確実だ。目も良すぎる。このまま捧げるのは駄目だ。妹が傷ついてしまう。
紅赤色の少女と闘いながらコストイラは一人の少女を思い出した。
サラ。試練の塔、2階にいた吸血鬼。その少女を彷彿とさせる立ち回り。
「サラそっくりだぜホント」
コストイラがぽつりと呟くとチラスレアが反応する。
「あら、サラだなんて懐かしい名前ね」
喋りながらシキの攻撃を躱し、反撃する。アシドの槍を目視せずに避け、左腕を摑んで止め、しなる足技はアシドの首を捉える。棚に突っ込んだアシドは気を失った。
部屋は狭いわけではない。しかし、戦場と考えると狭い。チラスレアが床を叩くと波状に水色のエネルギーが広がり攻撃してくる。攻撃を躱し近付く者の攻撃を捌いていく。体を屈め刀を躱し腹を殴り、左手で大剣を受け止めレイドも殴る。
巻き込む対象がいなくなり、アストロは魔術を放つが、チラスレアには後出しでも躱されてしまう。アストロに意識が向いている隙にコストイラが刀を振り下ろすが、少女は体をスライドさせ躱すが、炎を纏った斬り上げには対応できず右腕を斬られる。その傷口には炎が這っていた。左手で炎を握りつぶす。
炎に気を取られていたチラスレアの脚をナイフが傷つける。しかし、傷はすぐに塞がっていく。そこでようやく気が付いた。チラスレアの足元には暗い霧のようなものが纏わりついていた。
長手積みされた赤茶色のレンガは5メートルほどの高さのある外壁を作るのに使われ、さらに本館にも使われている。レンガは比較的新しい素材だ。歴史などたかだか50年程度しかない。にもかかわらず古風な印象が拭いきれない。いまだ薄く張られている霧のせいかもしれない。
すでに日は傾き、休むところを探していたアレン達は屋敷を訪ねることにした。橋に着くと屋敷の前に門番がいるのが見える。仏頂面で佇む彼はこちらを捉えると少し視線を逸らす。橋を渡ると男は仕事を始める。
「用件は?」
明らかに面倒くさそうに声を出す。客が来るまでずっと外で立ちっぱなしだと考えるとなんだか許せる気がしてきた。彼は退屈に殺されていたのかもしれません。
「外が暗くなってきてしまい、泊めていただきたいのですが」
「…………入れ」
説明を聞き、溜め息を溢しながら中に通される。何か裏があるかもしれないが館内に入っていく。
「ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ」
中に入るとメイドが案内をしてくれ、客間に通される。その間、何故かメイドからは殺気が漏れていた。警戒しかしなくなってしまう。
アレン達が荷物を下ろし、辺りを見渡す。知らない絵画、見たことない彫刻品、素人目に見ても高級品と分かる家具の数々。値が張りそうなソファと、クロスのかかったいくつかの丸テーブルが配置されている部屋は高級感溢れる演出があるものの、どこか安らぎを与える雰囲気がある。油断させるためだろうか。
数分経つと先程とは違うメイドが迎えに来た。
「主様がお呼びです」
アレン達は怪しまれない程度に武装してメイドの後ろを歩く。このメイドからは殺気は感じられない。さっきのメイドが特別だったのだろう。
「ようこそ、私の屋敷へ。長い間は無理だけど、どうぞ泊っていってくださいな」
紅赤色のドレスを着た金髪の少女が挨拶する。背が低く、外見からは主だとは思えない子供のような見た目だが、醸し出すオーラは熟練者のそれだった。
アレン達の目の前に食事が並べられていく。しかし、アレン達は食事に手を付けない。少女はそれを見てクスクスと笑う。
「毒なんか入っていないわ」
チラスレアと名乗った少女は苦笑しながらも食事を続ける。先陣はレイドが切った。レイドが何かのスープを口に付ける。何も問題がなさそうだ。食事が終わるとチラスレア自らが案内をし始める。何も分からないままついていくと応接間のようなところに案内される。
「ごめんなさい。ちょっといいかしら。頼みがあるのだけれど」
申し訳なさそうに眉根を寄せた顔をしながら隠し扉を開ける。少し血の臭いが鼻を刺す。何で隠し扉を開けたのか、とかどうして案内されたのか、この血の臭いは何かなど気になることはたくさんあるが、一番最初に気になったのはこの部屋に置かれている髑髏のことだ。とてつもなく生々しく、ただのインテリアには思えなかった。
「その頭蓋骨が気になるのかしら?」
「あ、いえ、ただのインテリアじゃなさそうだなと思いまして」
「っ………!そのことに気付くなんて驚いたわ。今までの人は触れもしなかったのに」
チラスレアは本気で驚いていた。細かいところにまで気付くなんて、このままあの子のところに連れて行ってもいいのだろうか。
入口の横に置かれている髑髏の元まで歩き、紅赤色の少女は金髪をさらりと溢しながら、その骨に触れる。
「予定が狂ったわ。まさかこのタイミングで客が来るなんて」
チラスレアの囁きは誰の耳にも届くことなく空気に溶ける。
「今、何か」
決意に満ちた目を向けられ、コストイラの言葉が止まる。少女は右手から紅い弾を発射する。その速さはアストロの魔術の速さを超えていた。咄嗟に動こうとするアシドもシキも間に合わない。その被弾が開始の合図になった。
チラスレアがこの地にやってきたのは妹の為だ。妹は生まれつき日光に弱く、陽光に当たり続けると肌が爛れてしまう。霧ならば陽の光を散らせると考えたのだ。
他にも妹には問題があった。加減を知らないのだ。最初の犠牲者は一番のお気に入りだった使用人だ。妹は泣きながら壊れた使用人を持ってきた。チラスレアは加減を知ってもらうために生贄を用意することにした。
そして今回も。
しかし、今回は駄目だ。反撃してくるのは確実だ。目も良すぎる。このまま捧げるのは駄目だ。妹が傷ついてしまう。
紅赤色の少女と闘いながらコストイラは一人の少女を思い出した。
サラ。試練の塔、2階にいた吸血鬼。その少女を彷彿とさせる立ち回り。
「サラそっくりだぜホント」
コストイラがぽつりと呟くとチラスレアが反応する。
「あら、サラだなんて懐かしい名前ね」
喋りながらシキの攻撃を躱し、反撃する。アシドの槍を目視せずに避け、左腕を摑んで止め、しなる足技はアシドの首を捉える。棚に突っ込んだアシドは気を失った。
部屋は狭いわけではない。しかし、戦場と考えると狭い。チラスレアが床を叩くと波状に水色のエネルギーが広がり攻撃してくる。攻撃を躱し近付く者の攻撃を捌いていく。体を屈め刀を躱し腹を殴り、左手で大剣を受け止めレイドも殴る。
巻き込む対象がいなくなり、アストロは魔術を放つが、チラスレアには後出しでも躱されてしまう。アストロに意識が向いている隙にコストイラが刀を振り下ろすが、少女は体をスライドさせ躱すが、炎を纏った斬り上げには対応できず右腕を斬られる。その傷口には炎が這っていた。左手で炎を握りつぶす。
炎に気を取られていたチラスレアの脚をナイフが傷つける。しかし、傷はすぐに塞がっていく。そこでようやく気が付いた。チラスレアの足元には暗い霧のようなものが纏わりついていた。
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