メグルユメ
26.服わぬモノ達
霊の男に押し負けていると、別の霊が乱入してきた。
半透明な緑の肌。
地から浮いた体。
周りを飛ぶ蝶。
少女の霊はまだ生きていた。
「あの時の!?」
「コストイラは仕留めそこなったの?」
予想だにしていなかった光景に男の霊も含めて動揺する。
『おぉ!』
男の霊の呼びかけに暮れかけた花畑から悪魔が姿を現す。
レイス。闇属性。
外套のようなものを纏い、ランタンを掲げる魔物。食べる部位は存在しない。
ディアボロス。闇属性。
全体的に棘の多い体を持つ悪魔。羽が生えているが飛ぶ時には魔力を使っている。肉は硬く、臭みが強いので焼くのは向かない。
バフォメット。闇属性。
山羊頭の長身の悪魔。大鎌の扱いはそこそこいいが、滅茶苦茶いいわけではない。山羊のような体なので山羊のような肉の味がする。
ガレットの書にはあまり強そうに書かれていないが、レベルとステータスを見ると、同時に相手したくない相手だと分かる。
万全の状態ならば2,3撃をもらってはしまうかもしれないが勝てるだろう。しかし、全員が満身創痍の今は勝てるかどうかも怪しい。
「ここは一旦引きませんか?」
「…………」
「戦うだろ」
アレンの提案に対し、答えを出し渋っていると、コストイラが参戦する。
「今を戦えないやつに次を言う資格は生まれない。オレは戦うぜ」
コストイラは静かに燃えていた。いつものように炎を纏うのではなくただ刀を握っていた。そのかわり、その瞳には炎が宿っていた。
コストイラは1人で悪魔に立ち向かう。
「コストイラさん、どうしたんでしょうか」
「何かはあったんだろうな。何かは知らないけど」
「意外と私達もあいつのプライベートな面って知らないモノなのよ」
やる気の漲っているコストイラに疑問を持ちつつ、援護をするために武器を取る。
コストイラはランタンから顕現される魔術を避けていく。コストイラの動きがいつもよりも鋭い。心の問題だけでは説明がつかないが、それ以外の要因をアストロ達は知らない。コストイラの体がガクンと下がる。先回りして撃たれた重力の増す魔術が当たったのだ。膝が付きそうなほど身が低くなる。
差し出された首を介錯するようにバフォメットが大鎌を振り上げる。
振り下ろされる鎌はコストイラの頭上を通り、髪の毛を数本斬り花を刺す。アストロの魔術が軌道を変えたのだ。
「がぁっ!!」
血管がぶち切れるかと思うほどの気合と共に体を立ち上げる。ズシンと体が重くなる。重力が増したようだ。だが、関係ない。血を吐かんばかりの意地で刀を振り上げる。
『ブフォッ!?』
バフォメットは超重力内でも立ち上がったコストイラに驚愕した。それだけにとどまらず攻撃さえしてみせたことにさらに驚いた。自らの血で宙に弧を描きながら倒れた。
レイスはバフォメットを助けるように魔術を放つ。魔術は真っ直ぐにコストイラへと向かって行く。そして――。
『お前がっ!お前がっ!!』
男の霊は少女の霊の首を絞めながらマウントを取る。首を絞められているが、息をしなくてもいい霊体にとっては関係がない。それよりもつらいのが男の霊の纏っている闇の魔力の方がつらい。
少女の霊は教祖として多くの人と関わってきた。その全ての人を覚えている自信がある。その膨大な記憶量の中から男の情報を探す。生前と違い凹凸の分かりにくい顔。見る影もない腕のない体。それでもわかった。思い出せた。
この目は、確かジャバド。そう、ジャバトだ。よく親に連れられてきていた子供だ。親を取られたように恨みがましく、父と私を睨みつけていた男の子だ。私の考えた宗教の教えを説いていく父が母親を狂わせていた。この様子を見るとそう思われているのだろう。あの両親は元から壊れていた。そこに私の教義が合わさり、私のものとは違う独自の解釈を続けた。その結果、あの両親は早とちりをして魔物に殺された。それを私のせいにして心を保っているのだろう。男は昏い感情を抱いてしまった。
少女の眼は悲しそうに曲がる。
『何だ……なんだその目は、なんでそんな目をするんだ!!?』
少女は抵抗を辞めた。そもそも抵抗しなくてもこのままなら死にもしない。
『ごめんね』
『……ッ!?』
『私にもっと魅力があったなら。もっと管理することが出来たなら』
『謝るなよっ!謝んなよっ!!ずっと悪のままでいてくれよ…………』
語尾が小さくなっていく。さらに涙ぐんでいった。少女はそっと目を閉じるとのしかかられていた感触も首を絞めていた手の感覚も消えた。
アシドは疾走した。
いつも無鉄砲に突っ込んでいくコストイラの尻拭いをするのは、いつもアシドとアストロだった。皆で魚釣りに行った時も、洞窟探検をした時も先走るコストイラの為に走ったものだ。アシドはコストイラの為に走った。向かう先はコストイラではなく、ディアボロスの方だ。ディアボロスは集中している。コストイラを縫い留めておくため、そっちに意識を奪われていた。魔力を注ぎ、魔術を持続させるためにこちらには気付かない。
死角を縫い、気付かれぬままにディアボロスに辿り着いたアシドは、なおも静かに心臓を貫く。ディアボロスの魔力は唐突に途絶え、意識は混濁していき、命はするすると零れていった。
レイスは勝ちを確信していた。
ディアボロスと共闘し、バフォメットの犠牲はあったが、1人は倒した。この勢いのままなら勝てる。そう思った時、目の前の光景に自身の目を疑った。煤けた紅い髪を靡かせて、刀を持った青年がまっすぐにこちらを見つめていた。
まさか効いていないのか?
レイスは初め自分の魔術の威力を疑った。体感、当たった魔術は全部で5発くらいだろうか。その数で与えられるダメージは殺すに足らなかったのだろうか?しかし、レイスはもう1つの可能性に辿り着く。超重力が機能していない。ゆったりと、しかし障害なく歩くその姿からはディアボロスの魔術の影響は感じられない。
レイスは震えながらディアボロスの方を見る。
ディアボロスは項垂れた態勢で事切れていた。そして、その余所見はレイスの致命的なミスとなった。こんな明らかな隙を誰が見逃すだろうか。コストイラは絶対にしない。一気に距離を詰められ、対処をすることさえ許されず刀で斬られていた。
少女の霊が敵か味方かは分からない。ただはっきりしているのは、アレン達は助けられたということだ。助けられたのならお返ししなければなるまい。馬乗りになっている男の霊の頭に両足の跳び蹴りを食らわし吹き飛ばす。シキは無抵抗のまま目を閉じて寝転がる少女の霊を見て男の霊の方へ視線を移す。
『誰だ…このオレの邪魔をするのは。邪魔をするな。邪魔をするな!邪魔をするなっ!!邪魔をっ!!するなっ!!』
ゆらりゆらりと男の霊は立ち上がり、飛ばしてきた犯人を睨む。その目は光っており、魔力の暴走が進んでおり、もう既に正常な判断をすることが出来ないのが分かった。
シキは右手のナイフを逆手で左手のナイフを順手で持ち、構える。有名なナイフの構え方のナイトメアスタイルだ。シキは左へと体をずらし、左手のナイフで手首を叩き伏せ、右手のナイフで男の霊の体を斬りつける。霊の体からオレンジと黒の混じった煙が漏れていく。
絶大な怒りによって痛みを感じていないのか、傷口を押さえることなく、シキに標的を変える。すべてを薙ぎ払い倒さんとする勢いで腕を振るって方向を変える。
シキは再び襲い掛かってくる男の霊の手首を、右にずれて左のナイフで叩く。通り過ぎていく際に右のナイフで切りつける。
『がぁあっ!!』
男の霊は振り向きざまにその左目が弾け飛ぶ。暴走している。体がもう耐えられないのだろう。その片目に銀の少女を映そうと探るが、目を張った。白い花弁とピンク色の蝶が舞っていた。
視線が散る。
鬱陶しそうに腕を振る。膝に蝶が当たり、爆発する。その爆発をきっかけに蝶が男の霊を襲う。男の霊を中心に闇色の爆発が起こる。しかし、花はどれ一つとして吹き飛んでいない。そして、目の前にいたのは緑の少女でも銀の少女でもなく、紅い青年だった。
シラスタ教。
突如として出現した加護や魔力は神が与えたものとされているが、この宗教は神が与えたものではないとするもので、他の世界から来た者が齎したものだと考える一派。利用するときは利用して、手放すときは潔く。魔力は受け取ることに関して抵抗することが出来ず、しかも使わずに生活することができない。しかし、加護も同じく受け取ることに関して抵抗が出来ないが、加護は魔力と違い使わないことが出来る。
この宗教により親を亡くした両者は、全く違う立場で相対する。
一方は宗教を恨み、死してなお復讐に燃えるもの。闇の魔力で作られた腕にさらに闇の魔力を纏わせていく。
一方は宗教に恩さえ感じ、その感謝に胸を熱くするもの。炎をその瞳に宿し、手にしている刀に炎の魔力を纏わせていく。
誰かが合図を出したわけではないにもかかわらず、両者は同時に動き出す。闇色の尾を引く拳と、赤色の虹を描く刀がぶつかり合う。
『ごぉおおああああっっ!!』
「るぅおおおおおおっっ!!」
両者、気合、気迫、気持ち、その全てが入っていた。そして、両者の間に生じたはっきりとした差こそが魂の強さだった。コストイラの炎はどんどん大きく激しくなっていく。
「だぁああああっっ!!」
『あ、あ、ああ、あああ、うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ……………』
コストイラは霊を斬った。
炎が作る煙と共に男だったものが天へと昇っていく。コストイラはみんなの方を向く。
「巻き込んでしまってすまっ!?」
しんみりとした謝罪をしようとするコストイラの頭をアシドが叩く。コストイラは目を張ってアシドを見る。アシドとアストロがふんっと鼻を鳴らす。コストイラは意図を理解し、少し下を向いた。
「ありがとよ」
コストイラは頭を掻きながら礼を言う。さらに礼を重ねようともう一人の立役者を探そうとするが、すでに緑の少女がいなかった。
半透明な緑の肌。
地から浮いた体。
周りを飛ぶ蝶。
少女の霊はまだ生きていた。
「あの時の!?」
「コストイラは仕留めそこなったの?」
予想だにしていなかった光景に男の霊も含めて動揺する。
『おぉ!』
男の霊の呼びかけに暮れかけた花畑から悪魔が姿を現す。
レイス。闇属性。
外套のようなものを纏い、ランタンを掲げる魔物。食べる部位は存在しない。
ディアボロス。闇属性。
全体的に棘の多い体を持つ悪魔。羽が生えているが飛ぶ時には魔力を使っている。肉は硬く、臭みが強いので焼くのは向かない。
バフォメット。闇属性。
山羊頭の長身の悪魔。大鎌の扱いはそこそこいいが、滅茶苦茶いいわけではない。山羊のような体なので山羊のような肉の味がする。
ガレットの書にはあまり強そうに書かれていないが、レベルとステータスを見ると、同時に相手したくない相手だと分かる。
万全の状態ならば2,3撃をもらってはしまうかもしれないが勝てるだろう。しかし、全員が満身創痍の今は勝てるかどうかも怪しい。
「ここは一旦引きませんか?」
「…………」
「戦うだろ」
アレンの提案に対し、答えを出し渋っていると、コストイラが参戦する。
「今を戦えないやつに次を言う資格は生まれない。オレは戦うぜ」
コストイラは静かに燃えていた。いつものように炎を纏うのではなくただ刀を握っていた。そのかわり、その瞳には炎が宿っていた。
コストイラは1人で悪魔に立ち向かう。
「コストイラさん、どうしたんでしょうか」
「何かはあったんだろうな。何かは知らないけど」
「意外と私達もあいつのプライベートな面って知らないモノなのよ」
やる気の漲っているコストイラに疑問を持ちつつ、援護をするために武器を取る。
コストイラはランタンから顕現される魔術を避けていく。コストイラの動きがいつもよりも鋭い。心の問題だけでは説明がつかないが、それ以外の要因をアストロ達は知らない。コストイラの体がガクンと下がる。先回りして撃たれた重力の増す魔術が当たったのだ。膝が付きそうなほど身が低くなる。
差し出された首を介錯するようにバフォメットが大鎌を振り上げる。
振り下ろされる鎌はコストイラの頭上を通り、髪の毛を数本斬り花を刺す。アストロの魔術が軌道を変えたのだ。
「がぁっ!!」
血管がぶち切れるかと思うほどの気合と共に体を立ち上げる。ズシンと体が重くなる。重力が増したようだ。だが、関係ない。血を吐かんばかりの意地で刀を振り上げる。
『ブフォッ!?』
バフォメットは超重力内でも立ち上がったコストイラに驚愕した。それだけにとどまらず攻撃さえしてみせたことにさらに驚いた。自らの血で宙に弧を描きながら倒れた。
レイスはバフォメットを助けるように魔術を放つ。魔術は真っ直ぐにコストイラへと向かって行く。そして――。
『お前がっ!お前がっ!!』
男の霊は少女の霊の首を絞めながらマウントを取る。首を絞められているが、息をしなくてもいい霊体にとっては関係がない。それよりもつらいのが男の霊の纏っている闇の魔力の方がつらい。
少女の霊は教祖として多くの人と関わってきた。その全ての人を覚えている自信がある。その膨大な記憶量の中から男の情報を探す。生前と違い凹凸の分かりにくい顔。見る影もない腕のない体。それでもわかった。思い出せた。
この目は、確かジャバド。そう、ジャバトだ。よく親に連れられてきていた子供だ。親を取られたように恨みがましく、父と私を睨みつけていた男の子だ。私の考えた宗教の教えを説いていく父が母親を狂わせていた。この様子を見るとそう思われているのだろう。あの両親は元から壊れていた。そこに私の教義が合わさり、私のものとは違う独自の解釈を続けた。その結果、あの両親は早とちりをして魔物に殺された。それを私のせいにして心を保っているのだろう。男は昏い感情を抱いてしまった。
少女の眼は悲しそうに曲がる。
『何だ……なんだその目は、なんでそんな目をするんだ!!?』
少女は抵抗を辞めた。そもそも抵抗しなくてもこのままなら死にもしない。
『ごめんね』
『……ッ!?』
『私にもっと魅力があったなら。もっと管理することが出来たなら』
『謝るなよっ!謝んなよっ!!ずっと悪のままでいてくれよ…………』
語尾が小さくなっていく。さらに涙ぐんでいった。少女はそっと目を閉じるとのしかかられていた感触も首を絞めていた手の感覚も消えた。
アシドは疾走した。
いつも無鉄砲に突っ込んでいくコストイラの尻拭いをするのは、いつもアシドとアストロだった。皆で魚釣りに行った時も、洞窟探検をした時も先走るコストイラの為に走ったものだ。アシドはコストイラの為に走った。向かう先はコストイラではなく、ディアボロスの方だ。ディアボロスは集中している。コストイラを縫い留めておくため、そっちに意識を奪われていた。魔力を注ぎ、魔術を持続させるためにこちらには気付かない。
死角を縫い、気付かれぬままにディアボロスに辿り着いたアシドは、なおも静かに心臓を貫く。ディアボロスの魔力は唐突に途絶え、意識は混濁していき、命はするすると零れていった。
レイスは勝ちを確信していた。
ディアボロスと共闘し、バフォメットの犠牲はあったが、1人は倒した。この勢いのままなら勝てる。そう思った時、目の前の光景に自身の目を疑った。煤けた紅い髪を靡かせて、刀を持った青年がまっすぐにこちらを見つめていた。
まさか効いていないのか?
レイスは初め自分の魔術の威力を疑った。体感、当たった魔術は全部で5発くらいだろうか。その数で与えられるダメージは殺すに足らなかったのだろうか?しかし、レイスはもう1つの可能性に辿り着く。超重力が機能していない。ゆったりと、しかし障害なく歩くその姿からはディアボロスの魔術の影響は感じられない。
レイスは震えながらディアボロスの方を見る。
ディアボロスは項垂れた態勢で事切れていた。そして、その余所見はレイスの致命的なミスとなった。こんな明らかな隙を誰が見逃すだろうか。コストイラは絶対にしない。一気に距離を詰められ、対処をすることさえ許されず刀で斬られていた。
少女の霊が敵か味方かは分からない。ただはっきりしているのは、アレン達は助けられたということだ。助けられたのならお返ししなければなるまい。馬乗りになっている男の霊の頭に両足の跳び蹴りを食らわし吹き飛ばす。シキは無抵抗のまま目を閉じて寝転がる少女の霊を見て男の霊の方へ視線を移す。
『誰だ…このオレの邪魔をするのは。邪魔をするな。邪魔をするな!邪魔をするなっ!!邪魔をっ!!するなっ!!』
ゆらりゆらりと男の霊は立ち上がり、飛ばしてきた犯人を睨む。その目は光っており、魔力の暴走が進んでおり、もう既に正常な判断をすることが出来ないのが分かった。
シキは右手のナイフを逆手で左手のナイフを順手で持ち、構える。有名なナイフの構え方のナイトメアスタイルだ。シキは左へと体をずらし、左手のナイフで手首を叩き伏せ、右手のナイフで男の霊の体を斬りつける。霊の体からオレンジと黒の混じった煙が漏れていく。
絶大な怒りによって痛みを感じていないのか、傷口を押さえることなく、シキに標的を変える。すべてを薙ぎ払い倒さんとする勢いで腕を振るって方向を変える。
シキは再び襲い掛かってくる男の霊の手首を、右にずれて左のナイフで叩く。通り過ぎていく際に右のナイフで切りつける。
『がぁあっ!!』
男の霊は振り向きざまにその左目が弾け飛ぶ。暴走している。体がもう耐えられないのだろう。その片目に銀の少女を映そうと探るが、目を張った。白い花弁とピンク色の蝶が舞っていた。
視線が散る。
鬱陶しそうに腕を振る。膝に蝶が当たり、爆発する。その爆発をきっかけに蝶が男の霊を襲う。男の霊を中心に闇色の爆発が起こる。しかし、花はどれ一つとして吹き飛んでいない。そして、目の前にいたのは緑の少女でも銀の少女でもなく、紅い青年だった。
シラスタ教。
突如として出現した加護や魔力は神が与えたものとされているが、この宗教は神が与えたものではないとするもので、他の世界から来た者が齎したものだと考える一派。利用するときは利用して、手放すときは潔く。魔力は受け取ることに関して抵抗することが出来ず、しかも使わずに生活することができない。しかし、加護も同じく受け取ることに関して抵抗が出来ないが、加護は魔力と違い使わないことが出来る。
この宗教により親を亡くした両者は、全く違う立場で相対する。
一方は宗教を恨み、死してなお復讐に燃えるもの。闇の魔力で作られた腕にさらに闇の魔力を纏わせていく。
一方は宗教に恩さえ感じ、その感謝に胸を熱くするもの。炎をその瞳に宿し、手にしている刀に炎の魔力を纏わせていく。
誰かが合図を出したわけではないにもかかわらず、両者は同時に動き出す。闇色の尾を引く拳と、赤色の虹を描く刀がぶつかり合う。
『ごぉおおああああっっ!!』
「るぅおおおおおおっっ!!」
両者、気合、気迫、気持ち、その全てが入っていた。そして、両者の間に生じたはっきりとした差こそが魂の強さだった。コストイラの炎はどんどん大きく激しくなっていく。
「だぁああああっっ!!」
『あ、あ、ああ、あああ、うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ……………』
コストイラは霊を斬った。
炎が作る煙と共に男だったものが天へと昇っていく。コストイラはみんなの方を向く。
「巻き込んでしまってすまっ!?」
しんみりとした謝罪をしようとするコストイラの頭をアシドが叩く。コストイラは目を張ってアシドを見る。アシドとアストロがふんっと鼻を鳴らす。コストイラは意図を理解し、少し下を向いた。
「ありがとよ」
コストイラは頭を掻きながら礼を言う。さらに礼を重ねようともう一人の立役者を探そうとするが、すでに緑の少女がいなかった。
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