メグルユメ
16.白き刃
少女は高貴とまでいかなくとも裕福な家庭に生まれた。欲しいものは理由と共に言えば、何でも買ってもらえた。少女にとってそれが普通だった。
少女は生まれたときから強者だった。そこらに住む人間より断然強かった。それは単に少女が吸血鬼だからだろう。少女はその強さが憎かった。退屈は少女を殺した。
ある日、少女は強さを求めて闘技場を見に行った。そこに登場してきた戦士アリスの試合は彼女の人生を変えた。強さには限界がない。自分と似た金の眼をした綺麗な少女。何の変哲もない少女は、アリスの試合をきっかけにサラの人生が始まった。
もともと強者として生まれたサラは鍛えたことで吸血鬼としても上位近くの存在へと至ることができた。そして、サラは承認欲求が膨れ上がった。
勝ちたい。勝ち続けたい。勝って褒められて賞賛されて、嘉賞されて論賛されて賛美を受け、そしてそしてそしてそして、そして認められたい。
勝てば拍手が起き、勝てば人々が周りを囲った。
もっともっともっと!
だからサラは、試練の塔へやってきた。
ガツン!サラの手刀は穴の開いた楯に防がれる。サラの右足に激痛が走る。足にナイフが貫通し、縫い留めらえていた。後ろからコストイラが刀を振り下ろしてくるが、サラはその刀を掴み取る。振り回すように楯に叩きつけ、アレン、コストイラ、レイドを床に転がす。
サラは右足を引き、ナイフを床から引き剥がし解放する。次に掌を眺める。掌から流れる血ごと、その傷を舐めとる。
斜め後ろ、サラの死角となる場所からアシドが静かに槍を突き出す。吸血鬼は血を吸える相手を見つけるために嗅覚が優れている。視覚には死角があるが、嗅覚には死角がない。
アシドのことを一瞥をくれることなくジャンプし躱し、そのまま両足の飛び蹴りをアシドの顔面に決める。倒れていくアシドから噴き出る鼻血の匂いを嗅ぎ、サラの気分が高揚していく。
試練の塔で試練監督をし始めてから新たな自分に気付いた。今までの特訓では気づかなかった。それが血の匂いに興奮するということ。顔、腕、足、腹。同じ血のはずなのに匂いも興奮度合いも違う。いつの間にか2層に住む者はその爪を刃物のように振り回す様から、白き刃と呼ばれていた。その白さが紅く染まる頃、下からの挑戦が来なくなった。来ない。ヒトが一切。嗅ぎたい。血を、芳しい、あの血を。その我慢も限界に近付いた時、下から衝撃が響いた。
来る?来る!血が私の元に!
恍惚な表情を浮かべ宙を舞い、着地をするとき、レイドの大剣が背中を叩く。サラはアシドの上を通り過ぎ、床でバウンドし、着壁し、床に落ちる。うつ伏せに倒れるサラは起き上がれない。背骨でも折れたか?この怪我なら自然治癒では1時間はかかるか。赤に染まった白き刃を床に突き刺す。そこから闇魔術の波動が広がる。そしてサラの意識は途絶えた。
「堕ちた?」
「そのようだな」
刀を収めようとするコストイラに鼻血を拭うアシドが答える。
「も、申し訳ありません」
「大丈夫ですよ」
右目上の切り傷の痕が消せなかった。エンドローゼが何度目かの謝罪をする。
「これは、僕が弱いがゆえに創った傷口です。自分の能力をうまく使いこなせない、そんな僕への戒めとして、残しておきたいですから」
アレンは傷跡に触りながらエンドローゼを宥める。
少女は生まれたときから強者だった。そこらに住む人間より断然強かった。それは単に少女が吸血鬼だからだろう。少女はその強さが憎かった。退屈は少女を殺した。
ある日、少女は強さを求めて闘技場を見に行った。そこに登場してきた戦士アリスの試合は彼女の人生を変えた。強さには限界がない。自分と似た金の眼をした綺麗な少女。何の変哲もない少女は、アリスの試合をきっかけにサラの人生が始まった。
もともと強者として生まれたサラは鍛えたことで吸血鬼としても上位近くの存在へと至ることができた。そして、サラは承認欲求が膨れ上がった。
勝ちたい。勝ち続けたい。勝って褒められて賞賛されて、嘉賞されて論賛されて賛美を受け、そしてそしてそしてそして、そして認められたい。
勝てば拍手が起き、勝てば人々が周りを囲った。
もっともっともっと!
だからサラは、試練の塔へやってきた。
ガツン!サラの手刀は穴の開いた楯に防がれる。サラの右足に激痛が走る。足にナイフが貫通し、縫い留めらえていた。後ろからコストイラが刀を振り下ろしてくるが、サラはその刀を掴み取る。振り回すように楯に叩きつけ、アレン、コストイラ、レイドを床に転がす。
サラは右足を引き、ナイフを床から引き剥がし解放する。次に掌を眺める。掌から流れる血ごと、その傷を舐めとる。
斜め後ろ、サラの死角となる場所からアシドが静かに槍を突き出す。吸血鬼は血を吸える相手を見つけるために嗅覚が優れている。視覚には死角があるが、嗅覚には死角がない。
アシドのことを一瞥をくれることなくジャンプし躱し、そのまま両足の飛び蹴りをアシドの顔面に決める。倒れていくアシドから噴き出る鼻血の匂いを嗅ぎ、サラの気分が高揚していく。
試練の塔で試練監督をし始めてから新たな自分に気付いた。今までの特訓では気づかなかった。それが血の匂いに興奮するということ。顔、腕、足、腹。同じ血のはずなのに匂いも興奮度合いも違う。いつの間にか2層に住む者はその爪を刃物のように振り回す様から、白き刃と呼ばれていた。その白さが紅く染まる頃、下からの挑戦が来なくなった。来ない。ヒトが一切。嗅ぎたい。血を、芳しい、あの血を。その我慢も限界に近付いた時、下から衝撃が響いた。
来る?来る!血が私の元に!
恍惚な表情を浮かべ宙を舞い、着地をするとき、レイドの大剣が背中を叩く。サラはアシドの上を通り過ぎ、床でバウンドし、着壁し、床に落ちる。うつ伏せに倒れるサラは起き上がれない。背骨でも折れたか?この怪我なら自然治癒では1時間はかかるか。赤に染まった白き刃を床に突き刺す。そこから闇魔術の波動が広がる。そしてサラの意識は途絶えた。
「堕ちた?」
「そのようだな」
刀を収めようとするコストイラに鼻血を拭うアシドが答える。
「も、申し訳ありません」
「大丈夫ですよ」
右目上の切り傷の痕が消せなかった。エンドローゼが何度目かの謝罪をする。
「これは、僕が弱いがゆえに創った傷口です。自分の能力をうまく使いこなせない、そんな僕への戒めとして、残しておきたいですから」
アレンは傷跡に触りながらエンドローゼを宥める。
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