メグルユメ

トラフィックライトレイディ

2.刹那の見切り

 翌朝、アレン達は市場へ来ていた。



 住居や看板を飾るそれぞれの店は、木や天幕で造られた即席のもののように見える。山肌とも言うべき断崖を利用したものが多く散見された。ナカウの出店通りはその性質上、設けられた小屋のほとんどが商店だ。武器屋や道具屋、換金場、手狭な宿屋に数少ない酒場など、ほとんどが冒険者を客としている。冒険者のための施設だ。



 通りを行く者は、冒険者と数少ない主婦しかいない。中堅となる冒険者の武装はどれも重厚かつ上等と呼べるもので誰もが即刻戦闘に臨めるように完全装備で出歩いている。魔物以外で敵対するものはいないだろう。



「う~~ん?」



 コストイラは武器屋で自身の使う武器を物色しているが、どれが良い物なのかいまいち分からず、悩んでしまう。



「どれにすっかな」



「分かんないなら直感で選んだら?」



 いつまでも悩むコストイラにアストロは早く選ぶように急かす。



「や、やっぱり」



 棚の陰から2人を見守るエンドローゼは妄想を膨らませる。



「このナイフなんてどうですかね」



「ん」



 アレンがシキにナイフを渡すと、シキはナイフを受け取りにぎにぎと感触を確かめる。暫く確かめるとシキは頷きアレンに渡す。買いたいようだ。アレンはナイフを持って店員のところに向かう。



「新しい楯が欲しいな。壊されてしまったが、やはり大剣だけではなく楯も欲しいな」



「楯か。これとかどうよ」



 レイドが楯を選んでいると、アシドが楯を1つ差し出しながら提案する。



「少し小さくないか?」



「そうか?まぁお前がそういうならそうか。使うのはお前だしな」



 アシドは手に持っていた楯をもとの場所に戻す。その間もレイドは楯を選別していく。その中で一目惚れする楯に出会った。これか。



「キャアアアアア!!」



 女性の叫び声が通りに響く。アレン達の頭が跳ね上がる。通りに顔を出すと、魔物が発見できた。それは鎧を身に着けており、ハルバードと大盾を装備した魔物。蜥蜴か竜か、そこは分からないが、2足歩行をしている。



「おらぁ!」



 アレン達が射程範囲に入る前に冒険者の男が攻撃を仕掛ける。



『オォッ!!』



 ヘビーアーマーはその攻撃ごとハルバードで叩き飛ばす。急造のパーティは一人の男がやられたことをきっかけに総攻撃を始める。手柄を横取りしようとしているため仲間意識などあったものではない。



 ヘビーアーマーは堅牢であり、弱点を突かなければ倒すのに時間がかかる。攻撃力も高く、パーティは半壊状態だ。



「オレも行くぜ」



 やはり、と言うべきか、コストイラが前へと抜けていく。



「ちょっと待ってください」



 アレンが手を伸ばすが、すでにもう届かない。その瞬間、ヘビーアーマーの首が飛んだ。くるくると舞う竜の頭。大半のものが首に注目する。



 しかし、コストイラ、シキ、アレンは誰が斬ったのかを目撃しようとした。だが、分からなかった。それほどまでに攻撃の速度が速かったのだ。



 攻撃をしたのは、ヲルクィトゥ?

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