メグルユメ
7.囚人の宝物
魔物や人間の死体は放置していると、死霊系統の魔物になる。そのため、斃れたものは原形を留めないように処理する。しかし、訓練場や森の中、水中など人が滅多に立ち寄らない所での死体は処理できない。長らく放置された訓練場ほど、死霊系統の魔物が生まれやすい。
では、アレン達はどうしているのか。
答えは簡単。燃やしているのだ。敵を増やすのは面倒だからだ。それに死霊系統は姿が気色悪いから見ていたくないというのもある。そんな一行の前に新たな死霊系統の魔物が出てきた。
ゾンビプリズナー。
爛れ半分落ちた顔はあまり長く見ていられない。特徴的な白と黒の横縞の服、足に嵌められた重り付きの足枷。元々が囚人の者たちが労働奴隷として働かされ、死してなお回収されなかった囚人たちがゾンビプリズナーとなる。
『アアアアアアアアア!!』
ゾンビプリズナーは右足を振り上げ、足枷の重りを武器として振るう。床に衝突した重りは罅を作っていく。
「あんなのに当たったらひとたまりもねェな」
『オアア!!』
再び足枷を振るう。通り過ぎる鉄球の跡から闇色の魔術が出現する。
「あそこから魔術を放てるのか?」
唐突のことで回避が間に合わない。矢がゾンビプリズナーの左肩に刺さる。アレンが弓を引いたのかとアストロはアレンを見るが、矢を刺したのはアレンではなさそうだ。矢を刺したのはシキであった。しっかりしろよ、アレン。怯んだ隙を見てアシドが槍をゾンビプリズナーに叩きこむ。ゾンビプリズナーは足が縺れ、後ろに下がる。
さらに追い打ちをかける。刀がゾンビプリズナーの体を削っていく。しかし、倒れない。
『ゴォアッ!』
ゾンビプリズナーは反撃に出る。
全力で握られた拳を刀で防ぐ。拳が斬れていくのを気にしない。傷口からボタボタと肉が落ち、オレンジと黒が混じった煙が出てくる。
『グゥオオオオ!!』
ゾンビプリズナーが爛れた口内の肉を飛ばしながら歯を剥く。シキは気付かれないまま足の肉を削ぎ落し、バランスを崩させる。ゾンビプリズナーはつんのめり、狙いが逸れる。口の中に刀が入っていく。
頭が飛ぶ。ゾンビプリズナーの視界には自分の体が燃えているのが見えた。
あぁ俺は死ぬのか。
ついに死ねるのか。
「あんなにいろんな奴が守っていてんだ。相当なモンが眠ってんだろうな」
コストイラの足取りが軽そうに見える。鞭ばっかりだったから飴が欲しいのだろう。
「そうね。長らく放置されてたみたいだから鉱石も育ってそうよね」
そんなことを話していると明らかに何かありそうな部屋を見つけた。
「絶対ここだろ」
「あからさますぎて逆に何もなさそう」
中を覗くと、一つの箱が置いてある。
「……宝箱、だよな」
「……ミミックでは、ないですね」
コストイラはアレンに確認を取る。同じ轍は踏まない。それがコストイラ。コストイラが箱を開けると、石が1個入っていた。
「は?石1個?」
「あ、あ、紅くて綺麗ですね」
「それって…………」
「ま、魔紅石じゃないですか!!?」
価値の知らないコストイラは落胆し、同じく知らないエンドローゼは率直な感想を述べる。価値を知っているアストロとアレンは色めき立つ。コストイラは紅く光を反射する半透明の石を上に翳す。
「なんだ、魔紅石って?」
「魔紅石とは紅く輝く妖艶な光を放つ、とっても貴重な霊石なんです。その用途は多岐に渡り、特に多いのは建材、そして魔術道具です。建材でいえば、その半透明なことを利用してガラス細工のようなものを施すんです。貴族の御屋敷ではその細工された魔紅石の多さで権力者同士が無言の争いをするそうです。まぁ僕は見たことはないんですけどね。実態は分からないです。そして、魔紅石が魔術道具として使われる理由は、その魔力伝導率にあるんです。他の石に比べ、約94%も高いのです。この石を使った武器であれば、コストイラさんの刀に纏わせる炎の威力も格段に上がります。その刀の材料は確か白瓏石ですよね。暗算ですけど2,3倍は威力が変わりますよ」
「…………結局、どれくらいのモンなのか、ド素人にも分かるように頼むわ」
軽々しく聞いてしまったことを後悔した。アレンの言っていることが半分も分からない。まさか、アレンがここまで喋るやつだったとは。
「えっと。分かりやすくですか。そうですね、この前採った風魔鉄と比べて約35倍の価値があります」
「さ、さ、さ、さ35倍!?」
「ひぇ~~」
具体的な比較がなされ、価値の知らなかった者たちは驚きを隠せない。無表情がデフォルトのシキでさえ目を張った。
「ぜってー持ち帰ろうな」
コストイラは滅茶苦茶丁寧にカバンの中にしまった。
では、アレン達はどうしているのか。
答えは簡単。燃やしているのだ。敵を増やすのは面倒だからだ。それに死霊系統は姿が気色悪いから見ていたくないというのもある。そんな一行の前に新たな死霊系統の魔物が出てきた。
ゾンビプリズナー。
爛れ半分落ちた顔はあまり長く見ていられない。特徴的な白と黒の横縞の服、足に嵌められた重り付きの足枷。元々が囚人の者たちが労働奴隷として働かされ、死してなお回収されなかった囚人たちがゾンビプリズナーとなる。
『アアアアアアアアア!!』
ゾンビプリズナーは右足を振り上げ、足枷の重りを武器として振るう。床に衝突した重りは罅を作っていく。
「あんなのに当たったらひとたまりもねェな」
『オアア!!』
再び足枷を振るう。通り過ぎる鉄球の跡から闇色の魔術が出現する。
「あそこから魔術を放てるのか?」
唐突のことで回避が間に合わない。矢がゾンビプリズナーの左肩に刺さる。アレンが弓を引いたのかとアストロはアレンを見るが、矢を刺したのはアレンではなさそうだ。矢を刺したのはシキであった。しっかりしろよ、アレン。怯んだ隙を見てアシドが槍をゾンビプリズナーに叩きこむ。ゾンビプリズナーは足が縺れ、後ろに下がる。
さらに追い打ちをかける。刀がゾンビプリズナーの体を削っていく。しかし、倒れない。
『ゴォアッ!』
ゾンビプリズナーは反撃に出る。
全力で握られた拳を刀で防ぐ。拳が斬れていくのを気にしない。傷口からボタボタと肉が落ち、オレンジと黒が混じった煙が出てくる。
『グゥオオオオ!!』
ゾンビプリズナーが爛れた口内の肉を飛ばしながら歯を剥く。シキは気付かれないまま足の肉を削ぎ落し、バランスを崩させる。ゾンビプリズナーはつんのめり、狙いが逸れる。口の中に刀が入っていく。
頭が飛ぶ。ゾンビプリズナーの視界には自分の体が燃えているのが見えた。
あぁ俺は死ぬのか。
ついに死ねるのか。
「あんなにいろんな奴が守っていてんだ。相当なモンが眠ってんだろうな」
コストイラの足取りが軽そうに見える。鞭ばっかりだったから飴が欲しいのだろう。
「そうね。長らく放置されてたみたいだから鉱石も育ってそうよね」
そんなことを話していると明らかに何かありそうな部屋を見つけた。
「絶対ここだろ」
「あからさますぎて逆に何もなさそう」
中を覗くと、一つの箱が置いてある。
「……宝箱、だよな」
「……ミミックでは、ないですね」
コストイラはアレンに確認を取る。同じ轍は踏まない。それがコストイラ。コストイラが箱を開けると、石が1個入っていた。
「は?石1個?」
「あ、あ、紅くて綺麗ですね」
「それって…………」
「ま、魔紅石じゃないですか!!?」
価値の知らないコストイラは落胆し、同じく知らないエンドローゼは率直な感想を述べる。価値を知っているアストロとアレンは色めき立つ。コストイラは紅く光を反射する半透明の石を上に翳す。
「なんだ、魔紅石って?」
「魔紅石とは紅く輝く妖艶な光を放つ、とっても貴重な霊石なんです。その用途は多岐に渡り、特に多いのは建材、そして魔術道具です。建材でいえば、その半透明なことを利用してガラス細工のようなものを施すんです。貴族の御屋敷ではその細工された魔紅石の多さで権力者同士が無言の争いをするそうです。まぁ僕は見たことはないんですけどね。実態は分からないです。そして、魔紅石が魔術道具として使われる理由は、その魔力伝導率にあるんです。他の石に比べ、約94%も高いのです。この石を使った武器であれば、コストイラさんの刀に纏わせる炎の威力も格段に上がります。その刀の材料は確か白瓏石ですよね。暗算ですけど2,3倍は威力が変わりますよ」
「…………結局、どれくらいのモンなのか、ド素人にも分かるように頼むわ」
軽々しく聞いてしまったことを後悔した。アレンの言っていることが半分も分からない。まさか、アレンがここまで喋るやつだったとは。
「えっと。分かりやすくですか。そうですね、この前採った風魔鉄と比べて約35倍の価値があります」
「さ、さ、さ、さ35倍!?」
「ひぇ~~」
具体的な比較がなされ、価値の知らなかった者たちは驚きを隠せない。無表情がデフォルトのシキでさえ目を張った。
「ぜってー持ち帰ろうな」
コストイラは滅茶苦茶丁寧にカバンの中にしまった。
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