メグルユメ
6.生ける彫像
ハイウィザードは秘宝の番人ではあるが、別にこの施設の中で一番強いとか、全てに魔物に指示をする存在であるとか、そういうわけではない。ハイウィザードにも扱いきれない魔物が存在する。それがいる空間はどこに行くにも必ずと言っていいほど通らなければならない。
『ここから先は静かにしろ。奴に気付かれたら戦闘になる。それは面倒だ』
親切に案内し、親切に警戒してくれる彼の話には聞き流せない単語があった。
「やつ?」
『あぁ。奴は耳が良くてな。縄張りの外に出ることはないが、この先の空間にずっと居座っている。面倒な奴だ』
詳しい容姿は分からないが、繰り返し言うあたり相当面倒な奴なのだろう。
「何でそこ通るんだよ。嫌なら回り道すりゃいいんじゃねェのか?」
『ここしか出口への道がないのだ』
「何でそこに居座ってるの?」
『……さぁな。縄張り意識でも強いんじゃないのか?』
少しだけ返答に間が空いた。本当は知っているのか?
『行くぞ』
静寂の空間に足を踏み入れる。
中は驚くほど暗い。
それまでの廊下には松明があり、それなりに明るかった。しかし、今はどうだろう。明かりはなく、見えるのはこの空間から伸びているみちから漏れている光のみである。あと構成しているのは暗闇のみ。辛うじて皆のシルエットが見える程度。
足音は勿論、息遣いさえ聞こえてこない。この空間だけ時が止まっているのか、音が奪われたのかそんなことを考えたくなる。
唐突にそんな静寂を切り裂く音が現れた。出っ張った石畳にエンドローゼが躓き、小さく声が出てしまったのだ。全員が息を呑む。さらに胸中でエンドローゼに怨言を溢す。
『ファイアーボールッ!!』
ハイウィザードの声。着弾音。
この空間を音が支配し始める。
中空に煙が舞っている。そこに何かいる。いや、考えられる存在は一つしかない。
奴だ。
ハイウィザードは横に叩き飛ばされ、壁に激突する。叩いたのは黄金に塗装された石の腕。煙が晴れ、輪郭が露わになる。
でかい。3メートルは優に超えるだろう。頭頂部は何だろう。猫や狼を思わせる獣耳。腕から類推すると全身が石なのだろう。
奴が襲ってこない。音を出してないからか。
ガラリと瓦礫をどかす音がした。ハイウィザードが起きたのだろう。
奴が急速に反応する。奴の下から炎が昇る。
『—――』
奴のシルエットは口を開いているが、何をしているのか分からない。
『こいつ!』
ハイウィザードは相当お怒りのようだ。
動けば反応される。ならば、ハイウィザードを囮にすればいけるか。そう考えたとき、ハイウィザードの頭が潰れていた。次いで奴の頭が落ちた。
小柄な人影が音もなく着地する。どうやらシキが終わらせたようだ。
「こいつ、何か隠してたんじゃない?」
もはやシキには誰も触れない。そして、それを見て項垂れるコストイラにも触れない。もう不憫だ。
アストロは奥を見ながら言う。アレンも一筋の汗を垂らしつつ、コストイラ達を無視し、アストロに返答する。
「宝、でしょうかね」
「そんなのは分からないわよ。私に聞かないで?」
少し怒られてしまった。突っぱねられた感じもあるが、無視しておこう。アストロはでも、と続ける。
「見てみたいと思わない?」
表情が見えないが、きっと表情が見えたなら悪い笑顔をしているのだろう。
『ここから先は静かにしろ。奴に気付かれたら戦闘になる。それは面倒だ』
親切に案内し、親切に警戒してくれる彼の話には聞き流せない単語があった。
「やつ?」
『あぁ。奴は耳が良くてな。縄張りの外に出ることはないが、この先の空間にずっと居座っている。面倒な奴だ』
詳しい容姿は分からないが、繰り返し言うあたり相当面倒な奴なのだろう。
「何でそこ通るんだよ。嫌なら回り道すりゃいいんじゃねェのか?」
『ここしか出口への道がないのだ』
「何でそこに居座ってるの?」
『……さぁな。縄張り意識でも強いんじゃないのか?』
少しだけ返答に間が空いた。本当は知っているのか?
『行くぞ』
静寂の空間に足を踏み入れる。
中は驚くほど暗い。
それまでの廊下には松明があり、それなりに明るかった。しかし、今はどうだろう。明かりはなく、見えるのはこの空間から伸びているみちから漏れている光のみである。あと構成しているのは暗闇のみ。辛うじて皆のシルエットが見える程度。
足音は勿論、息遣いさえ聞こえてこない。この空間だけ時が止まっているのか、音が奪われたのかそんなことを考えたくなる。
唐突にそんな静寂を切り裂く音が現れた。出っ張った石畳にエンドローゼが躓き、小さく声が出てしまったのだ。全員が息を呑む。さらに胸中でエンドローゼに怨言を溢す。
『ファイアーボールッ!!』
ハイウィザードの声。着弾音。
この空間を音が支配し始める。
中空に煙が舞っている。そこに何かいる。いや、考えられる存在は一つしかない。
奴だ。
ハイウィザードは横に叩き飛ばされ、壁に激突する。叩いたのは黄金に塗装された石の腕。煙が晴れ、輪郭が露わになる。
でかい。3メートルは優に超えるだろう。頭頂部は何だろう。猫や狼を思わせる獣耳。腕から類推すると全身が石なのだろう。
奴が襲ってこない。音を出してないからか。
ガラリと瓦礫をどかす音がした。ハイウィザードが起きたのだろう。
奴が急速に反応する。奴の下から炎が昇る。
『—――』
奴のシルエットは口を開いているが、何をしているのか分からない。
『こいつ!』
ハイウィザードは相当お怒りのようだ。
動けば反応される。ならば、ハイウィザードを囮にすればいけるか。そう考えたとき、ハイウィザードの頭が潰れていた。次いで奴の頭が落ちた。
小柄な人影が音もなく着地する。どうやらシキが終わらせたようだ。
「こいつ、何か隠してたんじゃない?」
もはやシキには誰も触れない。そして、それを見て項垂れるコストイラにも触れない。もう不憫だ。
アストロは奥を見ながら言う。アレンも一筋の汗を垂らしつつ、コストイラ達を無視し、アストロに返答する。
「宝、でしょうかね」
「そんなのは分からないわよ。私に聞かないで?」
少し怒られてしまった。突っぱねられた感じもあるが、無視しておこう。アストロはでも、と続ける。
「見てみたいと思わない?」
表情が見えないが、きっと表情が見えたなら悪い笑顔をしているのだろう。
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