メグルユメ
1.明けない夜
アレン達の間に会話はなかった。
傷はエンドローゼが治してくれたが、その疲れは取れていない。精神からくるものはエンドローゼでは治せない。心も疲れてしまった。
誰かが、軽口を言う余裕すらない。重々しい空気がこの場を支配していた。
原因は昨日のことだ。魔王軍の幹部に襲われた。手も足も出ず、一方的に蹂躙された。それは全員の心に深く刺さっていた。
ガサ。
叢が揺れ、一体の魔物が出てくる。すでに攻撃モーションに入っている。
人。
第一印象はそれだった。違う点を挙げるなら、鋭く聳え立つ1本の角だろう。この魔物には覚えがある。確か名前はオーウェンだ。
オーウェンは両手に持った輪状の刃で殴りかかってきている。
コストイラは刀で簡単に往なし、袈裟懸けに斬る。
『オォッ!』
オーウェンは一度、傷口を押さえ、耐えようとする。指先からオレンジと黒が混じった煙が漏れていく。生きようとするオーウェンの願いは叶わず、斃れる。
刀を収めようとした時、前から包丁が飛んでくる。素早く叩き落とし、向かってきた方へ視線を移すと、布が浮いていた。
布の周りには包丁や錐、ハンマーが浮いている。魔力だろうか。
「フラップゴーストか」
空中に浮いた布であるフラップゴーストは支えている部分がないため、異常なまでに斬りにくい。ゆえに剣士、戦士にとってやりづらい相手なのだ。
「ふんっ、私に任せなさい」
あのアストロが、断りを入れてから魔法を放った。
何か心変わりがあったのだろうか。
フラップゴーストは無情にも燃え、その一片までも灰になる。
最後の抵抗としてすべての武器をアストロに向け発射するが、そのすべてをアシドが捌ききる。
「お前動じねェな」
「信じているからよ」
アストロの返答にその場にいた全員がギョッとする。あのシキさえも。
「何よ?」
アストロに睨まれ全員が視線を逸らす。
「ふんっ」
アストロが口を引き結ぶ。完全に不機嫌だが、触れないを選択した。
本当に何かあったのだろうか。
ドガッシャ―ン。
一人の少女が机の上に乗っていたものを全て払いのける。その開いた空間に肘と顎をつけ、頭を掻きむしる。
『なんだい、なんだい。あの男は~~!!』
『ふ、フォン様。そのようにされては御髪が』
『うるさ~い!!』
フォンと呼ばれた少女はギリギリと歯を食いしばる。周りにいた従者達はどうしていいの分からずオロオロしてしまう。従者の一人がお菓子の入った籠を差し出す。プルプルしている。
フォンはすまないことをしてしまったと思った。しかし、ここで謝るのは沽券に係わる。とりあえずお菓子を一口。甘すぎずしょっぱすぎもしない。美味い。
(そういえばここのお菓子職人は私に食べさせるのが生きがいだって、頬を赤らめていた気がする)
今は気持ちを落ち着かせることができたが、次似たようなことが起こったら容赦はしない。
フォンはお菓子に合う紅茶を飲みながらそう思った。
傷はエンドローゼが治してくれたが、その疲れは取れていない。精神からくるものはエンドローゼでは治せない。心も疲れてしまった。
誰かが、軽口を言う余裕すらない。重々しい空気がこの場を支配していた。
原因は昨日のことだ。魔王軍の幹部に襲われた。手も足も出ず、一方的に蹂躙された。それは全員の心に深く刺さっていた。
ガサ。
叢が揺れ、一体の魔物が出てくる。すでに攻撃モーションに入っている。
人。
第一印象はそれだった。違う点を挙げるなら、鋭く聳え立つ1本の角だろう。この魔物には覚えがある。確か名前はオーウェンだ。
オーウェンは両手に持った輪状の刃で殴りかかってきている。
コストイラは刀で簡単に往なし、袈裟懸けに斬る。
『オォッ!』
オーウェンは一度、傷口を押さえ、耐えようとする。指先からオレンジと黒が混じった煙が漏れていく。生きようとするオーウェンの願いは叶わず、斃れる。
刀を収めようとした時、前から包丁が飛んでくる。素早く叩き落とし、向かってきた方へ視線を移すと、布が浮いていた。
布の周りには包丁や錐、ハンマーが浮いている。魔力だろうか。
「フラップゴーストか」
空中に浮いた布であるフラップゴーストは支えている部分がないため、異常なまでに斬りにくい。ゆえに剣士、戦士にとってやりづらい相手なのだ。
「ふんっ、私に任せなさい」
あのアストロが、断りを入れてから魔法を放った。
何か心変わりがあったのだろうか。
フラップゴーストは無情にも燃え、その一片までも灰になる。
最後の抵抗としてすべての武器をアストロに向け発射するが、そのすべてをアシドが捌ききる。
「お前動じねェな」
「信じているからよ」
アストロの返答にその場にいた全員がギョッとする。あのシキさえも。
「何よ?」
アストロに睨まれ全員が視線を逸らす。
「ふんっ」
アストロが口を引き結ぶ。完全に不機嫌だが、触れないを選択した。
本当に何かあったのだろうか。
ドガッシャ―ン。
一人の少女が机の上に乗っていたものを全て払いのける。その開いた空間に肘と顎をつけ、頭を掻きむしる。
『なんだい、なんだい。あの男は~~!!』
『ふ、フォン様。そのようにされては御髪が』
『うるさ~い!!』
フォンと呼ばれた少女はギリギリと歯を食いしばる。周りにいた従者達はどうしていいの分からずオロオロしてしまう。従者の一人がお菓子の入った籠を差し出す。プルプルしている。
フォンはすまないことをしてしまったと思った。しかし、ここで謝るのは沽券に係わる。とりあえずお菓子を一口。甘すぎずしょっぱすぎもしない。美味い。
(そういえばここのお菓子職人は私に食べさせるのが生きがいだって、頬を赤らめていた気がする)
今は気持ちを落ち着かせることができたが、次似たようなことが起こったら容赦はしない。
フォンはお菓子に合う紅茶を飲みながらそう思った。
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