メグルユメ

トラフィックライトレイディ

2.フウ

 短い白い髪を激しく揺らしながら、高速で躍る。緑と青のオッドアイを忙しなく動かしている。ここまで動かしていると、眼球を動かす筋肉が攣ってしまいそうだ。というか、大丈夫? 何か動かしすぎて、眼球が2個ではなく4個6個と増えて見えるような気がする。

 これが、魔大陸への道しゅげんどう

 敵が魔物だらけだと思ったなら、そうではない。地形や天候までもが敵なのだ。

 魔物ならば倒せるし、回避できるし、逃走だってできる。

 フウのレベルは魔大陸への道しゅげんどうのレベルに合っていない。適正レベルが500ほどなのに対して、少女は300と少ししかない。

 シキ達と会った時のレベルが80であったことを考えれば、この上がり方は異常そのものであり、狂気的だ。

 それだけ会いたいと思っているということだ。会いたいと思えるからこそ、頑張れる。狂気の沼に身を沈められる。

「ペッ!?」

 数本の頭髪が舞う中、フウは全力で逃走した。黒鎧の騎士ソードジェネラルの剣がスレスレを通り、命を削ってきた。精神が先に死にそうだ。

 無理、勝てない!

 即座に結論をつけたフウは一瞬、この道の魔物ですら感知できない程の一瞬で逃走に移った。
 極度の緊張と吐き気を抱えながら逃走する。

 大丈夫! 吐き気があるうちは生きている! 

 両手を大きく振って、両足を遠くまで伸ばして、ぐんぐんと距離を開けていく。安心しろ。フウは逃げ足に自信がある。他にも自信があることがあるが、逃げ足は特に自信がある。

「ポゥ!?」

 フウが走りながら頭を下げる。その0.2秒後、針状の岩が通り過ぎた。ちょっと掠った気がするが、気にしたら追い付かれる。
 急に両脇の岩が立ち上がり、内側の部分が溶岩に変わった。溶岩が降り注ごうとしてくるが、フウは逃げ切った。

 これだ。これがあるから休まらない。

 この溶岩は魔物ではなく土地の仕業なのだ。土地が攻撃してくる。土地は倒せない。回避と逃走はできても、倒すことができないのだ。

「シキ! お前、どこだ! 助けろ――!!」

 フウは今日も走る。走る。走る。

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