メグルユメ
5.熱風の吹く道
よし、逃げよう。
勇者パーティの心は一致した。
ジャリと靴が砂を噛む。マスコンディレートが宙に吊られた状態で、次の行動を見極めようとする。
その瞬間、アストロがスタートを切った。他の者達も続々と走り出す。
「へ?」
少女が間抜けた声を出すが、気にせず走り出す。隙を見せた方が悪い。
「……はっ! 行くぞ! ヤタ! サラ!」
呼応するように声が二つ。大音響を鳴らして動き出した。
「何ですか!? 今の音」
「気にしちゃ駄目よ。確認しようとした途端、死ぬわよ」
何かが破壊された音が聞こえてきた。アレンは恐怖で心がざわめいている。それをアストロが強い言葉で制する。
アシドとシキが先頭を走る。アシドにはない野生の勘でもって、シキが道を決めていく。シキ本人もどこに向かっているのか分からない。
後ろからブワリと風が吹いた。空気が一気に乾いた。舌のぬめりが一瞬で消えた。目が乾いて瞬きを強制される。
どこに何がいる? アレンには全く分からないが、コストイラやシキが察知していた。遥か下の方に追いかけてくるように走る何かと、横を追走してくる鳥と少女。
ドゴンと横の壁が破壊された。その穴から圧倒的なまでの熱が入り込んでくる。
「う」
アシドがあまりにも熱すぎて、ギュッと目を硬く閉じてしまう。熱の空間を一気に抜け出す。ドガンと目の前の壁にぶつかってしまった。
「馬鹿じゃない?」
「前見ろよ」
「くっそ」
無様に煽られ、アシドが怒りを顕にする。とはいえ、これはただの幼馴染のノリなので、実際に怒っているわけではない。
後ろからビュオッ! と風が吹いた。それは先程の熱風だった。烏の突風が熱の空間を通ったことで、熱風になっているようだ。
再び壁が破壊された。今度は熱だけでなく炎まで入ってきた。アレンが止まりそうになるが、シキがナイフを抜いて炎を往なした。
「不定形でも往なせるのかよ」
鼻から血を流しながら、シキの行為に目を丸くする。え、それぐらいできない? とコストイラがアストロを見る。アストロは無理でしょ、と首を横に振った。
ドゴンと壁が破壊された。また火球かと思ったが、違う。そこに出ていたのは巨大な烏の頭だった。着地したマスコンディレートが小枝のような長さの棒を振った。おそらく召喚獣を操るための指示棒のようなものだろう。
ヒュッと風切り音。それに合わせて魔物が動き出す。
狭い道を無理矢理打ち壊し、烏の足が出てきた。狙われたシキは魔剣を振るいながら、下に避難した。その足を伝って、斬撃が腹部まで届く。
「な!?」
『ガッ!?』
予想外の反撃に、怪鳥が離れていく。それでも道内に風が吹き荒ぶ。巨大鳥の羽ばたきによるものかと思ったが、違った。コストイラもアストロも勘違いしていた。
マスコンディレートが扱える魔物は二匹ではなかった。
夫の墓参りに行かないのか?
その言葉が胸に突き刺さった。
イライザとインサーニアは政略結婚である。しかし、両者の間には愛情があった。政略結婚ならではの冷たいものではなく、いっそ神から祝福を受けたかのように温かかった。
だからこそ、インサーニアがなくなった時、最も哀しんだのは妃であるイライザであった。
そして、同時に殺意が沸いた。過去に見た勇者達と、現在に見た勇者達とを重ね、気持ちを火にくべた。
体が耐えられなかった。気持ちに追いつかず、体に無茶が祟り、寝込んでしまった。
火の向かう先がいまいち定まらない。寝ている間に考えすぎてしまったようだ。
そんな中、過去の勇者達の一人が家に来た。大の親友であるカレトワが連れてきたのだ。
火が燃え上がらなかった。ヲヌネを殺そうとする炎が、彼女に向かわなかったのだ。
「私達妻は、妻である以上、夫のことを誰よりも分かっていなければなりません。だからこそ、夫の死は、誰よりも受け止め、誰よりも深く考え、誰よりも引き摺らなければなりません」
イライザの目が見開かれる。
「私も夫を亡くしました。私もかなりショックで、今も引き摺っています。でも、いいんです。それが私にとっての愛です」
『愛……』
自信満々に言うヲヌネの隣で、イライザがポツリと呟いた。
私は夫を愛している。それだけは誰にも負けない。
勇者パーティの心は一致した。
ジャリと靴が砂を噛む。マスコンディレートが宙に吊られた状態で、次の行動を見極めようとする。
その瞬間、アストロがスタートを切った。他の者達も続々と走り出す。
「へ?」
少女が間抜けた声を出すが、気にせず走り出す。隙を見せた方が悪い。
「……はっ! 行くぞ! ヤタ! サラ!」
呼応するように声が二つ。大音響を鳴らして動き出した。
「何ですか!? 今の音」
「気にしちゃ駄目よ。確認しようとした途端、死ぬわよ」
何かが破壊された音が聞こえてきた。アレンは恐怖で心がざわめいている。それをアストロが強い言葉で制する。
アシドとシキが先頭を走る。アシドにはない野生の勘でもって、シキが道を決めていく。シキ本人もどこに向かっているのか分からない。
後ろからブワリと風が吹いた。空気が一気に乾いた。舌のぬめりが一瞬で消えた。目が乾いて瞬きを強制される。
どこに何がいる? アレンには全く分からないが、コストイラやシキが察知していた。遥か下の方に追いかけてくるように走る何かと、横を追走してくる鳥と少女。
ドゴンと横の壁が破壊された。その穴から圧倒的なまでの熱が入り込んでくる。
「う」
アシドがあまりにも熱すぎて、ギュッと目を硬く閉じてしまう。熱の空間を一気に抜け出す。ドガンと目の前の壁にぶつかってしまった。
「馬鹿じゃない?」
「前見ろよ」
「くっそ」
無様に煽られ、アシドが怒りを顕にする。とはいえ、これはただの幼馴染のノリなので、実際に怒っているわけではない。
後ろからビュオッ! と風が吹いた。それは先程の熱風だった。烏の突風が熱の空間を通ったことで、熱風になっているようだ。
再び壁が破壊された。今度は熱だけでなく炎まで入ってきた。アレンが止まりそうになるが、シキがナイフを抜いて炎を往なした。
「不定形でも往なせるのかよ」
鼻から血を流しながら、シキの行為に目を丸くする。え、それぐらいできない? とコストイラがアストロを見る。アストロは無理でしょ、と首を横に振った。
ドゴンと壁が破壊された。また火球かと思ったが、違う。そこに出ていたのは巨大な烏の頭だった。着地したマスコンディレートが小枝のような長さの棒を振った。おそらく召喚獣を操るための指示棒のようなものだろう。
ヒュッと風切り音。それに合わせて魔物が動き出す。
狭い道を無理矢理打ち壊し、烏の足が出てきた。狙われたシキは魔剣を振るいながら、下に避難した。その足を伝って、斬撃が腹部まで届く。
「な!?」
『ガッ!?』
予想外の反撃に、怪鳥が離れていく。それでも道内に風が吹き荒ぶ。巨大鳥の羽ばたきによるものかと思ったが、違った。コストイラもアストロも勘違いしていた。
マスコンディレートが扱える魔物は二匹ではなかった。
夫の墓参りに行かないのか?
その言葉が胸に突き刺さった。
イライザとインサーニアは政略結婚である。しかし、両者の間には愛情があった。政略結婚ならではの冷たいものではなく、いっそ神から祝福を受けたかのように温かかった。
だからこそ、インサーニアがなくなった時、最も哀しんだのは妃であるイライザであった。
そして、同時に殺意が沸いた。過去に見た勇者達と、現在に見た勇者達とを重ね、気持ちを火にくべた。
体が耐えられなかった。気持ちに追いつかず、体に無茶が祟り、寝込んでしまった。
火の向かう先がいまいち定まらない。寝ている間に考えすぎてしまったようだ。
そんな中、過去の勇者達の一人が家に来た。大の親友であるカレトワが連れてきたのだ。
火が燃え上がらなかった。ヲヌネを殺そうとする炎が、彼女に向かわなかったのだ。
「私達妻は、妻である以上、夫のことを誰よりも分かっていなければなりません。だからこそ、夫の死は、誰よりも受け止め、誰よりも深く考え、誰よりも引き摺らなければなりません」
イライザの目が見開かれる。
「私も夫を亡くしました。私もかなりショックで、今も引き摺っています。でも、いいんです。それが私にとっての愛です」
『愛……』
自信満々に言うヲヌネの隣で、イライザがポツリと呟いた。
私は夫を愛している。それだけは誰にも負けない。
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