メグルユメ
15.深海の悪魔
隻腕の海賊は2mの体をしていながらも、かなりの速度で走っている。部下の一般海賊達は頭のその姿を見て、不審に思った。なぜこのようなところで必死に走っているのだろうか。
部下の一人が頭に尋ねようとすると、頭は後ろを指差した。
「備えろ!」
その一言だけを残して去っていった。何に対して備えるのか分からないので、海賊達はのほほんとしている。
その空気を苛烈なまでに燃やす雰囲気が入ってきた。赤と蒼が他海賊を気にせずに通り抜けようとしてしまう。
「は?」
「え?」
海賊達は無視されることに憤りを覚える。武器を手にした海賊達が行く手を阻もうとした。
しかし、燃え続ける炎色の悪魔の前では、その程度の肉壁はないに等しい。そもそも海賊達の方がビビってしまっている。
アシドが激流のように走り続け、コストイラが炎雷のように過ぎ去っていった。
海賊達はポカンとしていたが、己の置かれている状況に気付いた。先程の備えろと言うのは、足止めをしろという意味だったのではないか? もしそうだとしたら、それが一切できていない我々は無能という扱いになる。
基本的な考えとして、無能は要らない。海賊となれば、この考えはさらに過激になる。
無能は殺して魔物の餌。
そうなると、今ここにいる者達は全員殺処分の対象ということになる。
それは受け入れ難い。
「おい! 第二陣だ!」
ここで無能の汚名を雪ぐ。そして処刑を免れる。
武器を握る手の力を強め、志を燃料に闘争心を燃やす海賊達は、アストロ達に襲い掛かった。
「あの、シキさん?」
「……何?」
シキが走りながら、アレンの質問に耳を傾ける。少し不安げなアレンの声が、シキの胸をざわつかせる。
「これ、道合っているんですか? 凄いところ走っていますけど」
アレンの口端がぴくぴく動いている。
今走っているのは、高さ200mはあろう場所に横たわっている石柱の上だ。しかも両端が固定されているわけではない。それどころか半分のところまですら伸びていない。
正直、こんなところをアストロやエンドローゼが通ったとは考えられない。
「フ」
シキが柱の先で踏み切って跳んだ。アレンは高所恐怖症であるため、不安を解消させたい。何も考えられないアレンは無意識のうちにシキに抱き着く力を強めた。
シキは興奮した。気になっている相手に抱き着かれたのだ、当然だろう。
しかし、冷静になった。この体の抱き心地っていいのか? それとも悪いのか? 以前、エンドローゼがアストロの肉付きについて話していた。どうやら私は肉付きが悪いらしい。女はもう少しふくよかな方がずっと抱き着いていたくなるとか何とか。
おかしな雑念を抱きながら、二人は着地した。このまま抱き合い続けるのはいかがなものか、と思う。とはいえ、アレンを下ろさない。だって、アレンの足、遅いんだもん。
「アレン、到着する」
「は、はい」
世界の主役と役立たずが戦場に到着した。
隻腕の海賊が海に辿り着く。洞窟の奥、海に最も近い場所だ。懐から一つの袋を取り出す。
「目覚めよ、キングクラーケン」
「待て!」
アシドが辿り着き、行為を制止させようとするが、もう遅い。袋はすでに海水の泉の中に投げ入れられていた。
「これでお前等はお終いだ!」
新たな戦力が投下されると直感で理解し、三歩後ろに下がった。
ゴボゴボと水が泡立ち始め、出現を予感させる。
次の瞬間、隻腕が立っている場所が崩れた。
「え?」
隻腕も予想外だったのか、間の抜けた声が出てしまう。下半身まで水に入り、まだまだ沈んでいく。このまま沈んでいくと思った時、2m越えの海賊の胸を職種が貫いた。
「ガ、フ?」
一切制御のできていない魔物が目を覚ました。
部下の一人が頭に尋ねようとすると、頭は後ろを指差した。
「備えろ!」
その一言だけを残して去っていった。何に対して備えるのか分からないので、海賊達はのほほんとしている。
その空気を苛烈なまでに燃やす雰囲気が入ってきた。赤と蒼が他海賊を気にせずに通り抜けようとしてしまう。
「は?」
「え?」
海賊達は無視されることに憤りを覚える。武器を手にした海賊達が行く手を阻もうとした。
しかし、燃え続ける炎色の悪魔の前では、その程度の肉壁はないに等しい。そもそも海賊達の方がビビってしまっている。
アシドが激流のように走り続け、コストイラが炎雷のように過ぎ去っていった。
海賊達はポカンとしていたが、己の置かれている状況に気付いた。先程の備えろと言うのは、足止めをしろという意味だったのではないか? もしそうだとしたら、それが一切できていない我々は無能という扱いになる。
基本的な考えとして、無能は要らない。海賊となれば、この考えはさらに過激になる。
無能は殺して魔物の餌。
そうなると、今ここにいる者達は全員殺処分の対象ということになる。
それは受け入れ難い。
「おい! 第二陣だ!」
ここで無能の汚名を雪ぐ。そして処刑を免れる。
武器を握る手の力を強め、志を燃料に闘争心を燃やす海賊達は、アストロ達に襲い掛かった。
「あの、シキさん?」
「……何?」
シキが走りながら、アレンの質問に耳を傾ける。少し不安げなアレンの声が、シキの胸をざわつかせる。
「これ、道合っているんですか? 凄いところ走っていますけど」
アレンの口端がぴくぴく動いている。
今走っているのは、高さ200mはあろう場所に横たわっている石柱の上だ。しかも両端が固定されているわけではない。それどころか半分のところまですら伸びていない。
正直、こんなところをアストロやエンドローゼが通ったとは考えられない。
「フ」
シキが柱の先で踏み切って跳んだ。アレンは高所恐怖症であるため、不安を解消させたい。何も考えられないアレンは無意識のうちにシキに抱き着く力を強めた。
シキは興奮した。気になっている相手に抱き着かれたのだ、当然だろう。
しかし、冷静になった。この体の抱き心地っていいのか? それとも悪いのか? 以前、エンドローゼがアストロの肉付きについて話していた。どうやら私は肉付きが悪いらしい。女はもう少しふくよかな方がずっと抱き着いていたくなるとか何とか。
おかしな雑念を抱きながら、二人は着地した。このまま抱き合い続けるのはいかがなものか、と思う。とはいえ、アレンを下ろさない。だって、アレンの足、遅いんだもん。
「アレン、到着する」
「は、はい」
世界の主役と役立たずが戦場に到着した。
隻腕の海賊が海に辿り着く。洞窟の奥、海に最も近い場所だ。懐から一つの袋を取り出す。
「目覚めよ、キングクラーケン」
「待て!」
アシドが辿り着き、行為を制止させようとするが、もう遅い。袋はすでに海水の泉の中に投げ入れられていた。
「これでお前等はお終いだ!」
新たな戦力が投下されると直感で理解し、三歩後ろに下がった。
ゴボゴボと水が泡立ち始め、出現を予感させる。
次の瞬間、隻腕が立っている場所が崩れた。
「え?」
隻腕も予想外だったのか、間の抜けた声が出てしまう。下半身まで水に入り、まだまだ沈んでいく。このまま沈んでいくと思った時、2m越えの海賊の胸を職種が貫いた。
「ガ、フ?」
一切制御のできていない魔物が目を覚ました。
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