メグルユメ
2.海水の女神
自然に起きる災害とは、その土地に住まう神の怒りである。その為、地元の住民は木彫りの人形を一つ作り、それを神と定めた。
信仰して神にすることで、災害を封じた。
災害が起こるたびに木彫りの人形を作り、信仰を捧げた。
ただのものであったとしても、信仰が集まれば神格を得る。道端の地蔵のように。
水神を象った像は力を得た。
像そのものが動くわけではなく、ただ一つの概念として形ができた。
そして生まれたのが、海水の女神様である。
「仮にあれが女神だとして、だ」
コストイラがしっかり臨戦態勢のまま、自身の怒りを述べる。
「神でも魔物になるってことか」
「ものっすごく言いづらいんだけどさ」
アストロがちらとエンドローゼを見る。エンドローゼは少し首を傾げ、言いたいことを察した。
何か言おうとした寸前、神が襲来した。陸に手を着き、不意の一発で仕留めようとする動きだ。
しかし、相手が悪かった。シキは反射神経の良さのみで攻撃を躱し、腹に蹴りを入れた。
目が飛び出そうなほどの威力を入れえられ、女神をトライデントを落とし、腹を抱えて悶え始めた。
水神は藍色の長髪を振り乱し、目くらましをする。その隙に逃げようとするが、アシドが槍を突き出し、髪のカーテンに穴をあけ、水神の肩を抉った。
水神は痛みに対して、絶叫ではなく水流返した。アシドが激流に飲まれる。さらに、その延長線上にいたレイド、アレン、アストロも餌食になる。
シキが俊足で裏へと回り、水神の首を切った。手応えの重さに少々驚く。手首が痛くなるほどではないが、シキの感じた中では重い方だ。
とはいえ、シキには然の魔剣がある。闇で感じた手応えは、然にはない。いっそ異常なほど、あっさりと神の首が落ちた。
「アレン?」
「無事だぜ。ほら、あそこ」
「よかった」
シキがアレンのことを心配する。コストイラに無事を言い渡され、かなり安堵する。そんなシキに、コストイラが口を曲げた。
「そんなに好きなら告っちまえよ」
「す?」
雑に進言され、シキは分かりづらく狼狽した。表情も態度も雰囲気さえほとんど変わっていない。この点は流石の一言に尽きる。
「ま、タイミングは人それぞれか」
コストイラはそう言うと、アストロ達のところに向かった。シキはアレンの側に行きたい欲を一旦置いておいて、エンドローゼの元へ向かう。さっきから頭を抱えて蹲っているのが気になってしょうがない。
「エンドローゼ?」
「し、シキさんのい、意ー見を聞かせて、く、く、下さい!」
「?」
急に肩を掴まれ、眼を白黒させてしまう。エンドローゼがこんなに熱くなるなんて珍しい。
「私でいいの?」
「ふ、ふ、フォン様は、ま、ま、魔物なんですか!?」
ものすごく繊細な問題を託されてしまった。ここで当たり障りのない答えを返すのは簡単だ。シキにだってできる。しかし、本当にそれでいいのだろうか。
自分の辿り着いてしまった答えを否定してほしいのかもしれない。
だが、エンドローゼはそんな噓を望んでいるのだろうか。
「し、シキさん?」
正直に言うことにした。エンドローゼは籠の中の鳥ではないのだ。
「神フォンは魔物。確信はない。ただ、魔物である確率は、私の中では80%」
「そ、そ、そうですか。私も、何となく、そ、そ、そんな気がしていました」
「エンドローゼ、無理してない?」
「だ、だだだ、だ、大丈夫です。わ、私は、こ、こう見えて、つ、つ、強いですから」
ムンと可愛らしく力こぶを作ってみせてくる。シキは詰めすぎれば崩れてしまうことを理解し、一歩引いた。
『ごめんよ、エンドローゼちゃん』
「何に対しての謝罪なのでしょうか」
「さぁ?』
主が急に宙に向かって謝った。ナイトとフィリスは不審な目を向けている。そんな部下のことなど気にせず、フォンは謝罪を続けている。
「知らなかった。我々も魔物なのか』
「どうなのだろうな。フォン様の謝罪を聞く限りではそう聞こえる」
『二人はまだだな。フィリスは成りかけているが』
「「ディーノイ様」』
いつの間にか後ろにいた騎士長に、慌てて挨拶をする。ディーノイは片手で制し、横に並び立つ。
『魔物は成った際に、それ相応の身体の変化が訪れる。フィリス、君の場合は腕だな。3,4本目の腕が生えてきている』
フィリスは肩甲骨あたりから生まれてきている腕に、意識を向けた。
「人にも魔物にもなるのですね」
『君の常識を訂正しておこう。魔物は一から生まれたりしない』
「では、我々の姿はどこから」
『ん?』
「なぜ同じ種の魔物が生まれるのですか?」
ようやく聞きたいことが分かり、手を打った。
『魔物の種類自体は最初から決まっているのだ。そこに願いが寄る』
「願いが寄る」
『あぁ。願いによって体がかわる。何者かを守りたいのであれば騎士に近い形になる。水に縁があるのであれば水棲生物のような形になることが多い』
「成る程です」
だとしたら、いったい弟は何を望んだのだろうか。
信仰して神にすることで、災害を封じた。
災害が起こるたびに木彫りの人形を作り、信仰を捧げた。
ただのものであったとしても、信仰が集まれば神格を得る。道端の地蔵のように。
水神を象った像は力を得た。
像そのものが動くわけではなく、ただ一つの概念として形ができた。
そして生まれたのが、海水の女神様である。
「仮にあれが女神だとして、だ」
コストイラがしっかり臨戦態勢のまま、自身の怒りを述べる。
「神でも魔物になるってことか」
「ものっすごく言いづらいんだけどさ」
アストロがちらとエンドローゼを見る。エンドローゼは少し首を傾げ、言いたいことを察した。
何か言おうとした寸前、神が襲来した。陸に手を着き、不意の一発で仕留めようとする動きだ。
しかし、相手が悪かった。シキは反射神経の良さのみで攻撃を躱し、腹に蹴りを入れた。
目が飛び出そうなほどの威力を入れえられ、女神をトライデントを落とし、腹を抱えて悶え始めた。
水神は藍色の長髪を振り乱し、目くらましをする。その隙に逃げようとするが、アシドが槍を突き出し、髪のカーテンに穴をあけ、水神の肩を抉った。
水神は痛みに対して、絶叫ではなく水流返した。アシドが激流に飲まれる。さらに、その延長線上にいたレイド、アレン、アストロも餌食になる。
シキが俊足で裏へと回り、水神の首を切った。手応えの重さに少々驚く。手首が痛くなるほどではないが、シキの感じた中では重い方だ。
とはいえ、シキには然の魔剣がある。闇で感じた手応えは、然にはない。いっそ異常なほど、あっさりと神の首が落ちた。
「アレン?」
「無事だぜ。ほら、あそこ」
「よかった」
シキがアレンのことを心配する。コストイラに無事を言い渡され、かなり安堵する。そんなシキに、コストイラが口を曲げた。
「そんなに好きなら告っちまえよ」
「す?」
雑に進言され、シキは分かりづらく狼狽した。表情も態度も雰囲気さえほとんど変わっていない。この点は流石の一言に尽きる。
「ま、タイミングは人それぞれか」
コストイラはそう言うと、アストロ達のところに向かった。シキはアレンの側に行きたい欲を一旦置いておいて、エンドローゼの元へ向かう。さっきから頭を抱えて蹲っているのが気になってしょうがない。
「エンドローゼ?」
「し、シキさんのい、意ー見を聞かせて、く、く、下さい!」
「?」
急に肩を掴まれ、眼を白黒させてしまう。エンドローゼがこんなに熱くなるなんて珍しい。
「私でいいの?」
「ふ、ふ、フォン様は、ま、ま、魔物なんですか!?」
ものすごく繊細な問題を託されてしまった。ここで当たり障りのない答えを返すのは簡単だ。シキにだってできる。しかし、本当にそれでいいのだろうか。
自分の辿り着いてしまった答えを否定してほしいのかもしれない。
だが、エンドローゼはそんな噓を望んでいるのだろうか。
「し、シキさん?」
正直に言うことにした。エンドローゼは籠の中の鳥ではないのだ。
「神フォンは魔物。確信はない。ただ、魔物である確率は、私の中では80%」
「そ、そ、そうですか。私も、何となく、そ、そ、そんな気がしていました」
「エンドローゼ、無理してない?」
「だ、だだだ、だ、大丈夫です。わ、私は、こ、こう見えて、つ、つ、強いですから」
ムンと可愛らしく力こぶを作ってみせてくる。シキは詰めすぎれば崩れてしまうことを理解し、一歩引いた。
『ごめんよ、エンドローゼちゃん』
「何に対しての謝罪なのでしょうか」
「さぁ?』
主が急に宙に向かって謝った。ナイトとフィリスは不審な目を向けている。そんな部下のことなど気にせず、フォンは謝罪を続けている。
「知らなかった。我々も魔物なのか』
「どうなのだろうな。フォン様の謝罪を聞く限りではそう聞こえる」
『二人はまだだな。フィリスは成りかけているが』
「「ディーノイ様」』
いつの間にか後ろにいた騎士長に、慌てて挨拶をする。ディーノイは片手で制し、横に並び立つ。
『魔物は成った際に、それ相応の身体の変化が訪れる。フィリス、君の場合は腕だな。3,4本目の腕が生えてきている』
フィリスは肩甲骨あたりから生まれてきている腕に、意識を向けた。
「人にも魔物にもなるのですね」
『君の常識を訂正しておこう。魔物は一から生まれたりしない』
「では、我々の姿はどこから」
『ん?』
「なぜ同じ種の魔物が生まれるのですか?」
ようやく聞きたいことが分かり、手を打った。
『魔物の種類自体は最初から決まっているのだ。そこに願いが寄る』
「願いが寄る」
『あぁ。願いによって体がかわる。何者かを守りたいのであれば騎士に近い形になる。水に縁があるのであれば水棲生物のような形になることが多い』
「成る程です」
だとしたら、いったい弟は何を望んだのだろうか。
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