メグルユメ
10.花に願いを込めて
今更だが、自分の選択を後悔している。なぜ塔の内部になど入ってしまったのか。
周りは魔物の茨だらけだ。胃袋の中に入った気分だ。四方八方から茨が迫ってくる。
分担など一切決めず、コストイラもアシドも目に入るそばから切っていった。
互いに負けたくないという気持ちで動いている。
互いに死んでほしくないという思いに気合が入る。
「コストイラ、炎をくれ!」
「おら!」
刀が折り返した瞬間に残った炎を拾い上げる。アシドは槍に炎を纏わせる。
「お前の炎、暴れるかと思ったけど、アストロと同じかそれ以上に纏い易いな」
「オレと同じで器用な炎だからな」
何か反論しようとしたが、その通りなので黙っておく。
「屋上まで一気に行くぞ」
「おっしゃ」
アシドが炎を纏う槍を回しながら階段を駆け上がる。
コストイラはその後ろで、後ろや横から来る茨を処理する。
ドガンと大きな音を立てながら、壁が壊された。中に巨大な茨が侵入してくる。
「ぐっ!?」
唐突な茨はアシドの脇腹を削った。茨の安全な場所を蹴飛ばし、階段に戻る。その茨はコストイラが叩き切った。
「あと半分!」
「一気に行くぞ!」
足の回転を全く止めない。それどころかぐんぐん加速していく。その点は流石アシド、というところか。
ビシ、と塔に罅が入った。当然のように、階段にも罅が入る。
崩れる。
一瞬、意識した。しかし、そんなことはすぐに追い払った。今、我々にすべきことは敵の討伐。ならば、問題ない。ここで決める。
互いが確認する。
日和ってる奴、いる?
そして、一気に加速する。
コストイラは気合を入れるために、懐から白くのっぺりとした、何も彫られていない面を取り出し、装着した。
シュルメが力をくれる。その力を燃料にして屋上へと辿り着いた。
フワリと凛として澄みやかな香りが鼻を刺激する。この匂いを放つ者を、コストイラは一人しかいない。
「シキ」
「ん?」
屋上には巨大な薔薇の上に佇むシキがいた。
「もう終わらせたのかよ。早ェな」
「つまらなかった」
シキが心底つまらなそうに声を出した。
コストイラはのっぺりとした面を外す。
「つまらないとかあんのかよ」
アシドが呆れながら薔薇の花弁を摘まみ上げた。花弁一枚でさえ、エンドローゼの身長ほどはあるだろう。
「デッカ」
アシドが小さく感想を述べる。
コストイラ画面を懐にしまいながら、シキに近づく。
「成る程。皆で戦いたいって言っていたな」
「ん?」
「寂しいんだろ」
「…………ん?」
「あ、これ自覚ねぇな」
眉根を寄せながら、首を傾げた。コストイラは額を手で覆った。アレンとシキのカップル成立はいつになるのだろうか。
「これで終わりか?」
「ん」
「この魔物のことについて、茨しか知らねぇわ」
本体を見ずして終わったことに少し不満を漏らす。
「名前はラヴィアンローズ、らしい。アレンが言ってた」
「へ? あ、そう」
求めていたものとは微妙に違うものが返ってきたが、指摘しないでおく。わざわざ言う必要もあるまい。
「おい。ちゃんと海が見えるぞ」
はしゃぐアシドが指差す先には、確かに海があった。
周りは魔物の茨だらけだ。胃袋の中に入った気分だ。四方八方から茨が迫ってくる。
分担など一切決めず、コストイラもアシドも目に入るそばから切っていった。
互いに負けたくないという気持ちで動いている。
互いに死んでほしくないという思いに気合が入る。
「コストイラ、炎をくれ!」
「おら!」
刀が折り返した瞬間に残った炎を拾い上げる。アシドは槍に炎を纏わせる。
「お前の炎、暴れるかと思ったけど、アストロと同じかそれ以上に纏い易いな」
「オレと同じで器用な炎だからな」
何か反論しようとしたが、その通りなので黙っておく。
「屋上まで一気に行くぞ」
「おっしゃ」
アシドが炎を纏う槍を回しながら階段を駆け上がる。
コストイラはその後ろで、後ろや横から来る茨を処理する。
ドガンと大きな音を立てながら、壁が壊された。中に巨大な茨が侵入してくる。
「ぐっ!?」
唐突な茨はアシドの脇腹を削った。茨の安全な場所を蹴飛ばし、階段に戻る。その茨はコストイラが叩き切った。
「あと半分!」
「一気に行くぞ!」
足の回転を全く止めない。それどころかぐんぐん加速していく。その点は流石アシド、というところか。
ビシ、と塔に罅が入った。当然のように、階段にも罅が入る。
崩れる。
一瞬、意識した。しかし、そんなことはすぐに追い払った。今、我々にすべきことは敵の討伐。ならば、問題ない。ここで決める。
互いが確認する。
日和ってる奴、いる?
そして、一気に加速する。
コストイラは気合を入れるために、懐から白くのっぺりとした、何も彫られていない面を取り出し、装着した。
シュルメが力をくれる。その力を燃料にして屋上へと辿り着いた。
フワリと凛として澄みやかな香りが鼻を刺激する。この匂いを放つ者を、コストイラは一人しかいない。
「シキ」
「ん?」
屋上には巨大な薔薇の上に佇むシキがいた。
「もう終わらせたのかよ。早ェな」
「つまらなかった」
シキが心底つまらなそうに声を出した。
コストイラはのっぺりとした面を外す。
「つまらないとかあんのかよ」
アシドが呆れながら薔薇の花弁を摘まみ上げた。花弁一枚でさえ、エンドローゼの身長ほどはあるだろう。
「デッカ」
アシドが小さく感想を述べる。
コストイラ画面を懐にしまいながら、シキに近づく。
「成る程。皆で戦いたいって言っていたな」
「ん?」
「寂しいんだろ」
「…………ん?」
「あ、これ自覚ねぇな」
眉根を寄せながら、首を傾げた。コストイラは額を手で覆った。アレンとシキのカップル成立はいつになるのだろうか。
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「この魔物のことについて、茨しか知らねぇわ」
本体を見ずして終わったことに少し不満を漏らす。
「名前はラヴィアンローズ、らしい。アレンが言ってた」
「へ? あ、そう」
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「おい。ちゃんと海が見えるぞ」
はしゃぐアシドが指差す先には、確かに海があった。
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