メグルユメ
8.茨の塔
コポコポと小さなカップに紅茶が注がれていく。馥郁とした香りが鼻腔をくすぐる。
グレイソレアはその香りを楽しみながら、目の前の少女を見る。フォンは礼儀正しく椅子に座り、お茶を待っている。そわそわと落ち着きないのは、マナー的にはよくないことだが。
グレイソレアはこのお茶の時間が好きだ。たった数分であったとしても無限に時間が引き延ばされているような感覚になる。このまったりとした時間が大好きだ。
コッと小さな音を立てて、カップが置かれた。小さく紳士然とした男を見て、会釈した。紳士然とした男も軽く会釈した。
グレイソレアはカップをそっと持ち、口をつけた。喉と唇を濡らす。
『それで? フォン。貴方がこんなところに何の用なの?』
『エンドローゼちゃんを通して聞いたんだけどね』
『はい』
『どうやら今、エンドローゼちゃん達がグレイソレアちゃんのところに向かっているらしいよ』
お茶請けのクッキーを口にしながら、フォンはビシッ! とグレイソレアを指差した。やっぱり一度ちゃんとマナーを教え込んだ方がいいのではないか? と思いながら、原初はカップに再び口をつけた。
『まぁ、私は特に敵対する意味はないので、私なりにおもてなしをしますよ』
カチャと静かにカップをソーサーに置く。
『貴女とももう敵対したくありませんし』
『そりゃそうだね』
両者はフォンが魔王になった頃に、約10年間戦争を続けていた過去がある。その際、地図を大きく書き換える必要が出てきたほどだ。
今は二人ともかなり仲良しになっている。それこそ、一緒に風呂に入ったり、体洗いっこするくらいだ。
『ぶっちゃけ、今日はこれを言いに来ただけ。他に用はないよ』
『では、ゆっくりとティータイムを楽しみましょう』
乱暴に生い茂る森の中、怖いくらい唐突に塔が現れた。石造りの塔で、それ以上に絡まった蔦の方が気になってしまう。
「何だ、この塔」
「入りたい。入りたくない?」
「そんな目で見ないでください。分かりました。行きましょう」
訴えるような目で見てくるコストイラとアストロを前に、アレンは簡単に折れた。正直、アレンも気になっている。
「よしよしよし」
コストイラが嬉々として塔に近づいていく。
「およ?」
扉に手を伸ばしそうとして止まった。なかなか扉が開かないため、不審に思ったアストロは覗き込んだ。
「おっと」
アストロはドアノブを見て面倒事の雰囲気を感じ取った。
ドアノブに薔薇の茨が巻き付いているのだ。迂闊に触れれば、掌は血だらけになること間違いなしだ。
とりあえず、まずはアレンに解体用のナイフを借りて、茨の切断を試みる。
「切れ味悪くね?」
「手入れはしているのですが、そろそろ寿命なんですかね」
「その説濃厚」
約一分半の格闘の末、ようやく一本目の茨を切断する。
「よしやっと切れた。周りは大丈夫だよな」
「平気だ。どっか町に着いたらアレンの装備を見直そう。最初の頃と同じだろ」
アレンは少し申し訳なさそうに肩を竦めた。シキがアレンの肩をポンと叩いた。シキは一緒に行こうという目で訴える。アレンのテンションは上がった。
コストイラは慣れてきたのか、先程よりも短い時間で茨を切る。
その瞬間、茨がゾルゾルゾルとノブに巻き付いた。一からのやり直しと言うどころではない。先程よりも増えた。
「嘘だろ」
魔物か植物操作か分からないが、コストイラの3分近い時間は無駄になった。
コストイラは誓った、絶対倒す、と。
グレイソレアはその香りを楽しみながら、目の前の少女を見る。フォンは礼儀正しく椅子に座り、お茶を待っている。そわそわと落ち着きないのは、マナー的にはよくないことだが。
グレイソレアはこのお茶の時間が好きだ。たった数分であったとしても無限に時間が引き延ばされているような感覚になる。このまったりとした時間が大好きだ。
コッと小さな音を立てて、カップが置かれた。小さく紳士然とした男を見て、会釈した。紳士然とした男も軽く会釈した。
グレイソレアはカップをそっと持ち、口をつけた。喉と唇を濡らす。
『それで? フォン。貴方がこんなところに何の用なの?』
『エンドローゼちゃんを通して聞いたんだけどね』
『はい』
『どうやら今、エンドローゼちゃん達がグレイソレアちゃんのところに向かっているらしいよ』
お茶請けのクッキーを口にしながら、フォンはビシッ! とグレイソレアを指差した。やっぱり一度ちゃんとマナーを教え込んだ方がいいのではないか? と思いながら、原初はカップに再び口をつけた。
『まぁ、私は特に敵対する意味はないので、私なりにおもてなしをしますよ』
カチャと静かにカップをソーサーに置く。
『貴女とももう敵対したくありませんし』
『そりゃそうだね』
両者はフォンが魔王になった頃に、約10年間戦争を続けていた過去がある。その際、地図を大きく書き換える必要が出てきたほどだ。
今は二人ともかなり仲良しになっている。それこそ、一緒に風呂に入ったり、体洗いっこするくらいだ。
『ぶっちゃけ、今日はこれを言いに来ただけ。他に用はないよ』
『では、ゆっくりとティータイムを楽しみましょう』
乱暴に生い茂る森の中、怖いくらい唐突に塔が現れた。石造りの塔で、それ以上に絡まった蔦の方が気になってしまう。
「何だ、この塔」
「入りたい。入りたくない?」
「そんな目で見ないでください。分かりました。行きましょう」
訴えるような目で見てくるコストイラとアストロを前に、アレンは簡単に折れた。正直、アレンも気になっている。
「よしよしよし」
コストイラが嬉々として塔に近づいていく。
「およ?」
扉に手を伸ばしそうとして止まった。なかなか扉が開かないため、不審に思ったアストロは覗き込んだ。
「おっと」
アストロはドアノブを見て面倒事の雰囲気を感じ取った。
ドアノブに薔薇の茨が巻き付いているのだ。迂闊に触れれば、掌は血だらけになること間違いなしだ。
とりあえず、まずはアレンに解体用のナイフを借りて、茨の切断を試みる。
「切れ味悪くね?」
「手入れはしているのですが、そろそろ寿命なんですかね」
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