メグルユメ
7.豊かすぎる自然
森はあればいいというものではない。緑が乱暴なまでに生い茂っている時、森は地獄に変わる。
葉が大きいうえに多く、森内部の風通しが明らかに悪い。その為か、幾本の木々が生きながらに腐っているのだ。
嫌な腐臭が立ち込めている。
「何でこんなになってんだよ。これ燃やしちゃ駄目か?」
「駄目に決まってんでしょ」
コストイラが苛立ちすぎて冗句に聞こえないことを言ったため、アストロが頭を叩く。
「何バカなことを言っているのよ。この腐臭よ。ガスがその辺にあって、引火したら爆発するかもしれないわ」
アストロの指摘は、確かにその通りなのだが、少しズレている。絶対にそれが理由で炎を使ってはいけないわけではないだろう。
フワリと風が髪を持ち上げた。同時に腐臭を浴びる。
鼻が曲がる思いをしながら、風が吹いてきた方を見る。
そこには風の精霊がいた。
精霊がいながら森は生い茂りすぎている。それを管理する者がおらず、管理する立場にある者が義務を放棄している。
シルフィードが相手を蔑むような眼で見ている。コストイラやアストロを見て、片眉だけを上げて、怒りを顕にした。
シルフィードが腕を振るって、風の刃を生み出した。
コストイラが居合で風の刃を断つ。
アストロが魔力をシルフィードに向けて放つ。旋風精霊は体を傾けて躱した。
コストイラが一気に距離を詰め、刀で切り付けようとする。
ブシュと血が出た。足の甲に何か傷を負ったようだが、何も見えない。何かが足の甲を貫いた?
足を無理矢理動かそうとすると、傷口が広がった。釘が留められた紙束を引き千切るような感覚だ。つまり、今も何かが貫いている。
そこで意識を戻す。目の前にシルフィードがいるではないか。
左手に何かを握っている。しかし、手の中に何も見えない。
キュウと瞳が絞られていく。その手の中のものを見ようとする。
もう少し。もう少し。あとちょっと。
そこで空気が集まっているのが見えた。これは空気の塊だ。集まってきた空気が剣の形をしている。
あれ? 長さ的に大丈夫か? これ?
汁をちらっと流しながら、横に跳んだ。ピッと耳たぶが切れた。そのままごろごろ転がり、少し離れる。
「あっぶね~」
「あっ! アウトです!」
怪我を見逃さない回復術士エンドローゼは許さない。コストイラは耳を覆いながら、エンドローゼの顔を見た。
アウト? そりゃそうだ。問題は耳ではなく足の方だ。足を貫いていた空気を無理矢理引き剥がした時にできた傷が、かなり開いてしまっている。靴など関係なく血がドクドク出ている。
エンドローゼが歯茎剥き出しにして怒っている。コストイラのテンションはダダ下がりだ。エンドローゼの怒りによっては月が代わってお仕置きしてくるだろう。
今はエンドローゼの優しさで生かされているだけ。それを実感させられる。プレッシャーがヤヴァイ。
シルフィードは少し気まずそうにしていたが、キッと目を吊り上げ、風の刃を放った。
コストイラは足に力を込めて刀を振るった。足の甲からプシッと血が噴き出た。
エンドローゼが”あ”と声を出した。
シルフィードの頭上からシキが落ちてきた。魔物の頭を貫いた。ナイフを抜き、流れるように首を斬る。
「おぉん!?」
コストイラの珍妙な声が響いた。
「天罰?」
アストロの口が引き攣る。エンドローゼが少しオロオロしているのを見ると、フォンは出力ミスを起こしたようだ。フォンの適正とエンドローゼの適正は違うので当然だ。
コストイラが仕方ない、と言いたげな顔をしている。少しはこれで懲りたら、と思う一方で、無茶無謀を冒すのがコストイラの味だと知っている。
今後数十回は天罰を食らいそうだ。
葉が大きいうえに多く、森内部の風通しが明らかに悪い。その為か、幾本の木々が生きながらに腐っているのだ。
嫌な腐臭が立ち込めている。
「何でこんなになってんだよ。これ燃やしちゃ駄目か?」
「駄目に決まってんでしょ」
コストイラが苛立ちすぎて冗句に聞こえないことを言ったため、アストロが頭を叩く。
「何バカなことを言っているのよ。この腐臭よ。ガスがその辺にあって、引火したら爆発するかもしれないわ」
アストロの指摘は、確かにその通りなのだが、少しズレている。絶対にそれが理由で炎を使ってはいけないわけではないだろう。
フワリと風が髪を持ち上げた。同時に腐臭を浴びる。
鼻が曲がる思いをしながら、風が吹いてきた方を見る。
そこには風の精霊がいた。
精霊がいながら森は生い茂りすぎている。それを管理する者がおらず、管理する立場にある者が義務を放棄している。
シルフィードが相手を蔑むような眼で見ている。コストイラやアストロを見て、片眉だけを上げて、怒りを顕にした。
シルフィードが腕を振るって、風の刃を生み出した。
コストイラが居合で風の刃を断つ。
アストロが魔力をシルフィードに向けて放つ。旋風精霊は体を傾けて躱した。
コストイラが一気に距離を詰め、刀で切り付けようとする。
ブシュと血が出た。足の甲に何か傷を負ったようだが、何も見えない。何かが足の甲を貫いた?
足を無理矢理動かそうとすると、傷口が広がった。釘が留められた紙束を引き千切るような感覚だ。つまり、今も何かが貫いている。
そこで意識を戻す。目の前にシルフィードがいるではないか。
左手に何かを握っている。しかし、手の中に何も見えない。
キュウと瞳が絞られていく。その手の中のものを見ようとする。
もう少し。もう少し。あとちょっと。
そこで空気が集まっているのが見えた。これは空気の塊だ。集まってきた空気が剣の形をしている。
あれ? 長さ的に大丈夫か? これ?
汁をちらっと流しながら、横に跳んだ。ピッと耳たぶが切れた。そのままごろごろ転がり、少し離れる。
「あっぶね~」
「あっ! アウトです!」
怪我を見逃さない回復術士エンドローゼは許さない。コストイラは耳を覆いながら、エンドローゼの顔を見た。
アウト? そりゃそうだ。問題は耳ではなく足の方だ。足を貫いていた空気を無理矢理引き剥がした時にできた傷が、かなり開いてしまっている。靴など関係なく血がドクドク出ている。
エンドローゼが歯茎剥き出しにして怒っている。コストイラのテンションはダダ下がりだ。エンドローゼの怒りによっては月が代わってお仕置きしてくるだろう。
今はエンドローゼの優しさで生かされているだけ。それを実感させられる。プレッシャーがヤヴァイ。
シルフィードは少し気まずそうにしていたが、キッと目を吊り上げ、風の刃を放った。
コストイラは足に力を込めて刀を振るった。足の甲からプシッと血が噴き出た。
エンドローゼが”あ”と声を出した。
シルフィードの頭上からシキが落ちてきた。魔物の頭を貫いた。ナイフを抜き、流れるように首を斬る。
「おぉん!?」
コストイラの珍妙な声が響いた。
「天罰?」
アストロの口が引き攣る。エンドローゼが少しオロオロしているのを見ると、フォンは出力ミスを起こしたようだ。フォンの適正とエンドローゼの適正は違うので当然だ。
コストイラが仕方ない、と言いたげな顔をしている。少しはこれで懲りたら、と思う一方で、無茶無謀を冒すのがコストイラの味だと知っている。
今後数十回は天罰を食らいそうだ。
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