メグルユメ
28.白銀の悪魔
『誰かあそこまで行ける者はっ!?』
「いねぇよ!オレ達ァ人間だぞ!」
『いたとして、行かせると思うか!』
戦士達がぶつかり合う。そこに一切の余裕がない。
『あの中に貴様等の仲間がいる』
「私を投げて」
『ほぅ?』
『無駄なことを!』
四m大の体を捻り、敵を仕留めようとする。レイドが間に入り、楯でハンマーを弾いた。同時にレイドも弾かれる。
「オレ達が隙を作ってやる!」
「やりなさい!」
ゴイアレはコストイラ達に押され、一時戦場を離れた。
『たかが人間が!!』
「されど人間ってな!!」
ペテロシウスの一撃をコストイラが頑張って往なしてみせた。その隙にゴイアレが五mの巨体を大きく捻り、シキを投げ飛ばした。そして、すぐに戦線に復帰する。
『ぐ、む、ぬ』
リュリュレが器用に片手で包帯を巻いた。
『待ってくれたのですか?』
『我々は慈悲深き種族ですからね』
『慈悲深いだと?』
『えぇ、ですから、なるべく長く生き永らえられるように、刻んであげますよ』
『慈悲深過ぎて泣けてくるな』
『えぇ、感謝なさい』
ヴァルキリーは血の付いた剣を振って、構えた。完全に殺す構えだ。
リュリュレには左手がない。ヴァルキリーも左手が使えない。この二つ同じようで違いすぎる。
リュリュレは左手が完全にないが、ヴァルキリーは黒い箱を持っているだけだ。前者は完全に使えないが、後者は使おうと思えば使える。この差は実に大きい。
このままでは勝てない。
しかし、重要なのは勝つことが必須ではないことだ。最悪、箱さえ取り返せればいい。
私は”滅天隊”リーダーのリュリュレだ!
そう決意を固めた時、下から白銀の雷が昇った。
何が通ったのか確認しようと上を見ると、そこに白銀の悪魔がいた。その手の中には箱を持った手があり。
『あ?』
ヴァルキリーの左手がなくなっている。気付いた瞬間に痛みがやってきた。目が白黒に成る程痛い。こいつはこれを耐えていたのか。
ヴァルキリーはさらに、白銀の悪魔の姿を見て目を張った。あの時のアイツか。ならば、あの時、あの泉で殺すべきだった。
残された右手で切ろうとした時、左腕にさらなる痛みが走った。斬撃が左腕を走っている。左腕から肩に入ると二つに分かれ、顔の左側、左の脇腹でようやく止まった。
シキが持っている、斬られた左手にも斬撃が走った。黒い箱にも傷ができたが、中は大丈夫だろうか?
細かく切られた傷から血を流しながら、ヴァルキリーが剣を振るう。
シキが闇の魔剣で防ごうとする。しかし、その前に下からやってきた岩がぶつかった。
「ブッ」
シキの左腕が折れ、頭や鼻から血が出る。ヴァルキリーの剣が空振った。
『勇者!?』
『貴女に人のことを気にする余裕があるのですか?』
フォーリナーがシキを見る中、ヴァルキリーが攻撃してくる。リュリュレは三叉の槍を咄嗟に振るい、剣を防いだ。
『これを防ぐとは、流石は”滅天隊”のリーダーですね』
『嬉しくないです、ねっ!!』
言葉が終わるタイミングで、ヴァルキリーの腹を蹴って距離を作る。しかし、ヴァルキリーはすぐに肉薄し、剣を振るった。
ヴァルキリーは早く戦闘を終わらせようとしている。傷の処置をしたいのだろう。
ならば、リュリュレにできる最高の戦いは、このヴァルキリーを倒すこと。最低でも時間を稼いで道連れにする。
三叉の槍を振り回し、覚悟を決める。片手だということは互いに同じ。粘りに粘ってやる。その直後、ズドンと上から白銀の悪魔が降ってきた。膝が首裏に当たる。ミグァシャアと聞いたことのない音が響いた。ヴァルキリーの口から液体が吐き出され、目玉が半分以上飛び出した。
勢いの死んだシキがナイフを振るって、ヴァルキリーの首を飛ばした。
『おぉ』
「リュリュレ。私を投げて」
『え?』
「あそこ」
ヴァルキリーとともにゆっくりと落ちながら、シキがある一点を指差した。そこにいたのは副官のセプオク。
体の左側をかなり破壊されたようで、起き上がれていない。しかし、右手をゴイアレやコストイラの方に向けている。
何かをする気だ。それが分かった時、自然と体が動いた。
『合わせろ』
「箱頼んだ」
三叉の槍に合わせて箱を投げ、シキが発射された。
『大丈夫だ、いける』
少し目が霞み、腕が震えていたとしても、必ず役に立つ。むしろ、役に立ちたい。
この一撃で決める。
セプオクは命を燃やした。
それは慣用句的な意味では決してない。本物の命の輝き。その一撃は術者の命と引き換えに放たれる最高火力。あのグレイソレアでさえただでは済まない一撃を放とうとしていた。
いける。
燃えている。今のセプオクは限りなく炎に近い存在となっていた。未だかつてないほどに燃えていた。
だというのに心は限りなく凪に近い状態で、いっそ穏やかでさえあった。
いける。
狙いが完全に定まった。今こそ魔王を葬り去るときだ。
そして。そして。そして……。
上から白銀の悪魔が降ってきた。命の輝きが集まる右腕が斬り飛ばされた。
命の輝きを制御していた司令塔から切り離された。暴発する。
自身の痛みを忘れて、両腕をクロスさせて耐えようとした。
シキは高速で蹴りを放ち、遠くまで飛ばした。後ろで物凄い爆発音と爆風が訪れているが、それを気にせず、ナイフを振るい、セプオクを絶命させた。
「いねぇよ!オレ達ァ人間だぞ!」
『いたとして、行かせると思うか!』
戦士達がぶつかり合う。そこに一切の余裕がない。
『あの中に貴様等の仲間がいる』
「私を投げて」
『ほぅ?』
『無駄なことを!』
四m大の体を捻り、敵を仕留めようとする。レイドが間に入り、楯でハンマーを弾いた。同時にレイドも弾かれる。
「オレ達が隙を作ってやる!」
「やりなさい!」
ゴイアレはコストイラ達に押され、一時戦場を離れた。
『たかが人間が!!』
「されど人間ってな!!」
ペテロシウスの一撃をコストイラが頑張って往なしてみせた。その隙にゴイアレが五mの巨体を大きく捻り、シキを投げ飛ばした。そして、すぐに戦線に復帰する。
『ぐ、む、ぬ』
リュリュレが器用に片手で包帯を巻いた。
『待ってくれたのですか?』
『我々は慈悲深き種族ですからね』
『慈悲深いだと?』
『えぇ、ですから、なるべく長く生き永らえられるように、刻んであげますよ』
『慈悲深過ぎて泣けてくるな』
『えぇ、感謝なさい』
ヴァルキリーは血の付いた剣を振って、構えた。完全に殺す構えだ。
リュリュレには左手がない。ヴァルキリーも左手が使えない。この二つ同じようで違いすぎる。
リュリュレは左手が完全にないが、ヴァルキリーは黒い箱を持っているだけだ。前者は完全に使えないが、後者は使おうと思えば使える。この差は実に大きい。
このままでは勝てない。
しかし、重要なのは勝つことが必須ではないことだ。最悪、箱さえ取り返せればいい。
私は”滅天隊”リーダーのリュリュレだ!
そう決意を固めた時、下から白銀の雷が昇った。
何が通ったのか確認しようと上を見ると、そこに白銀の悪魔がいた。その手の中には箱を持った手があり。
『あ?』
ヴァルキリーの左手がなくなっている。気付いた瞬間に痛みがやってきた。目が白黒に成る程痛い。こいつはこれを耐えていたのか。
ヴァルキリーはさらに、白銀の悪魔の姿を見て目を張った。あの時のアイツか。ならば、あの時、あの泉で殺すべきだった。
残された右手で切ろうとした時、左腕にさらなる痛みが走った。斬撃が左腕を走っている。左腕から肩に入ると二つに分かれ、顔の左側、左の脇腹でようやく止まった。
シキが持っている、斬られた左手にも斬撃が走った。黒い箱にも傷ができたが、中は大丈夫だろうか?
細かく切られた傷から血を流しながら、ヴァルキリーが剣を振るう。
シキが闇の魔剣で防ごうとする。しかし、その前に下からやってきた岩がぶつかった。
「ブッ」
シキの左腕が折れ、頭や鼻から血が出る。ヴァルキリーの剣が空振った。
『勇者!?』
『貴女に人のことを気にする余裕があるのですか?』
フォーリナーがシキを見る中、ヴァルキリーが攻撃してくる。リュリュレは三叉の槍を咄嗟に振るい、剣を防いだ。
『これを防ぐとは、流石は”滅天隊”のリーダーですね』
『嬉しくないです、ねっ!!』
言葉が終わるタイミングで、ヴァルキリーの腹を蹴って距離を作る。しかし、ヴァルキリーはすぐに肉薄し、剣を振るった。
ヴァルキリーは早く戦闘を終わらせようとしている。傷の処置をしたいのだろう。
ならば、リュリュレにできる最高の戦いは、このヴァルキリーを倒すこと。最低でも時間を稼いで道連れにする。
三叉の槍を振り回し、覚悟を決める。片手だということは互いに同じ。粘りに粘ってやる。その直後、ズドンと上から白銀の悪魔が降ってきた。膝が首裏に当たる。ミグァシャアと聞いたことのない音が響いた。ヴァルキリーの口から液体が吐き出され、目玉が半分以上飛び出した。
勢いの死んだシキがナイフを振るって、ヴァルキリーの首を飛ばした。
『おぉ』
「リュリュレ。私を投げて」
『え?』
「あそこ」
ヴァルキリーとともにゆっくりと落ちながら、シキがある一点を指差した。そこにいたのは副官のセプオク。
体の左側をかなり破壊されたようで、起き上がれていない。しかし、右手をゴイアレやコストイラの方に向けている。
何かをする気だ。それが分かった時、自然と体が動いた。
『合わせろ』
「箱頼んだ」
三叉の槍に合わせて箱を投げ、シキが発射された。
『大丈夫だ、いける』
少し目が霞み、腕が震えていたとしても、必ず役に立つ。むしろ、役に立ちたい。
この一撃で決める。
セプオクは命を燃やした。
それは慣用句的な意味では決してない。本物の命の輝き。その一撃は術者の命と引き換えに放たれる最高火力。あのグレイソレアでさえただでは済まない一撃を放とうとしていた。
いける。
燃えている。今のセプオクは限りなく炎に近い存在となっていた。未だかつてないほどに燃えていた。
だというのに心は限りなく凪に近い状態で、いっそ穏やかでさえあった。
いける。
狙いが完全に定まった。今こそ魔王を葬り去るときだ。
そして。そして。そして……。
上から白銀の悪魔が降ってきた。命の輝きが集まる右腕が斬り飛ばされた。
命の輝きを制御していた司令塔から切り離された。暴発する。
自身の痛みを忘れて、両腕をクロスさせて耐えようとした。
シキは高速で蹴りを放ち、遠くまで飛ばした。後ろで物凄い爆発音と爆風が訪れているが、それを気にせず、ナイフを振るい、セプオクを絶命させた。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
4.9万
-
-
7万
-
-
4.8万
-
-
2.3万
-
-
1.6万
-
-
1.1万
-
-
2.4万
-
-
2.3万
-
-
5.5万
書籍化作品
-
-
441
-
-
4117
-
-
37
-
-
149
-
-
44
-
-
-
3431
-
-
-
1980
-
-
161
-
-
147
コメント