メグルユメ
18.英霊の闘技場
「で? な、な、何で、私達は、と、闘技場にいるんですか?」
確実に相手を非難する目でコストイラを見ている。
そう。今エンドローゼが言ったとおり、コストイラ達は闘技場に来ていた。エンドローゼの怒りも尤もだ。現在のコストイラ達はアレンを探すことを目的に動いている。闘技場で過ごすなど、時間の無駄だと言われても仕方ない。
エンドローゼがプリプリと怒っているが、五人が戦うことが決定していた。コストイラとアシドとアストロは自分から、シキとレイドは巻き込まれたのだ。
「す、済まない。どうしても断れなくて」
「……、ホ、ホ、本当に、どー、どうしようもなかったんですか?」
「あ、あぁ」
ジトーと咎めるような視線に耐えきれず、ダラダラと汗が流れ出す。やっぱり嘘です、と口を割ろうとした時、エンドローゼはプイと顔を背けた。
「な、な、な、何かをおー、話しようとしているか、わ、分かりませんが、し、信じましょう。レ、レイドさんはホ、ホ、本当に仕方なかった、と」
ギラリと両目が光った気がした。
子の勇者パーティの中で一番強いのは誰かと聞かれると、外部の者は勇者であるシキか一番刀のコストイラあたりを答えるだろう。
しかし、パーティメンバーはそう答えない。パーティメンバーはあのコストイラやシキまでもが、エンドローゼだと即答する。もちろんエンドローゼは否定するが。
それほどまでにエンドローゼは強い。そのエンドローゼが宣言した。
「こ、これが終わったら、あ、あ、アレンさんのところにい、い、急ぎますよ!」
「はい」
全員が従順だった。
コストイラが登録したのはレベルアップしていくためだ。魔王とこれから戦いに行くのだ。力があって悪いことはない。
今までインサーニア、ジャスレ、ンッナンシリス、フォンと四名の魔王と戦ってきた。いや、後半三人はまともに戦っていない。ジャスレはフォンが倒し、ンッナンシリスは本気で戦わず、フォンはエンドローゼにお熱で大歓迎をされてしまった。
死力を尽くして戦ったのはインサーニアのみ。そのインサーニアとの戦いは今でも心に巣くっている。
魔王に勝つ。それには相当な実力がいる。ここで調整を行う。
「よし」
両頬を叩いて根性を入れ直すと、木刀を手にして戦場に顔を出した。
向かいの入口にはすでに対戦相手がいた。コストイラと同じくらいの身長を持つ獣人だ。綺麗な金の毛並みをした戦士は、凪のような表情でこちらを見ている。こちらが戦場に入ったのを確認すると、片手剣を抜いた。
「素晴らしい。まさかパンティエカ・バンバンイルが出現するとは」
この闘技場は登録者の強さに合わせて対戦相手が決められる。シュリントロンの魔法によって作られているらしい。ちょっと背伸びをして指を伸ばして限界まで伸ばした時、倒せるような相手が用意される。
コストイラに用意されたのはパンティエカ・バンバンイル。獣人の中でも特に強く、史上最強の獣人とさえ言われている。
コストイラは口角を上げた。こんな栄誉なことはない。観客も沸いている。
パティは口角を上げた。目の前にいる男は強い。潜在能力もまだまだ有り余っている。何と言ったって、あのフラメテの息子なのだから。
「シュルメに感謝を」
「ッ!? あぁ、シュルメに感謝を」
両者が剣を構えた。会場が静まり返る。観客の誰かが緊張に耐えかねて、唾を大きく呑んだ。
その音をきっかけに両者が動いた。目にも止まらぬ剣戟に、誰も声を出せない。
「君は魔術を使わないのかい?」
「反発したくなる言い方するな」
「フラメテの言ったとおりだな」
「母さんめッ!」
二度の接触が行われ、その瞬間、爆炎が発せられた。
「なっ」
「使わんとは言ってねェさ」
「バラガキめ」
両者の駆け引きに会場が沸いた。
「ハァッ!」
コストイラの集中力がどんどん増していく。さらに蒼いオーラが纏われていく。
「斬開者か」
パティの目が輝く。その技は過去にフラメテから食らったことがある。彼女の斬開者は赤黒いオーラであり、身体能力の向上を効果としたものだ。
その息子の技だ。異常性がない筈がない。
食らいたい。あのフラメテの息子の、系統された魔法を食らってみたい!
「来い!」
パティが腰を落として、地面と平行に剣を構えた。自分史上最高の技で迎え撃ってやる。
「いざ」
コストイラが蒼い尾を引きながら走り出した。地面が一歩ごとに抉れている。
その威力を見て、落胆と驚嘆から顔を輝かせた。威力を自分のものにできていないと一目で分かりしかし、そのポテンシャルの高さに感動した。
剣と剣が交わる。コストイラのオーラが弾けて消えた。
コストイラの鼻から血が噴き出した。爆発的な力の奔流が自身の体に抑えきれていない。ここから先は命を削る行為だ。早く終わらせてやろう。
パティが剣を構えて待機した。来たら斬る。そのことを胸にコストイラを待っていると、コストイラの目や耳からも血が噴き出た。
エンドローゼが真っ青になる。耳からの血はマズイ。脳からのダメージの可能性がある。
コストイラは医務室へと運ばれた。
アシドは結果を見ていない。見ると、異常なまでに燃えてしまうからだ。
くるくると槍を回して、こんと地面を突いた。
「いつまでもアイツの影を追っていちゃいけねェ。オレの道を見つけるんだ」
「ここにいたか、アシド」
控室にレイドが入ってきた。最終調整中だが、問題ない。
「呼び出しか?」
「コストイラが医務室に運ばれたらしい」
「あ!?」
確実に相手を非難する目でコストイラを見ている。
そう。今エンドローゼが言ったとおり、コストイラ達は闘技場に来ていた。エンドローゼの怒りも尤もだ。現在のコストイラ達はアレンを探すことを目的に動いている。闘技場で過ごすなど、時間の無駄だと言われても仕方ない。
エンドローゼがプリプリと怒っているが、五人が戦うことが決定していた。コストイラとアシドとアストロは自分から、シキとレイドは巻き込まれたのだ。
「す、済まない。どうしても断れなくて」
「……、ホ、ホ、本当に、どー、どうしようもなかったんですか?」
「あ、あぁ」
ジトーと咎めるような視線に耐えきれず、ダラダラと汗が流れ出す。やっぱり嘘です、と口を割ろうとした時、エンドローゼはプイと顔を背けた。
「な、な、な、何かをおー、話しようとしているか、わ、分かりませんが、し、信じましょう。レ、レイドさんはホ、ホ、本当に仕方なかった、と」
ギラリと両目が光った気がした。
子の勇者パーティの中で一番強いのは誰かと聞かれると、外部の者は勇者であるシキか一番刀のコストイラあたりを答えるだろう。
しかし、パーティメンバーはそう答えない。パーティメンバーはあのコストイラやシキまでもが、エンドローゼだと即答する。もちろんエンドローゼは否定するが。
それほどまでにエンドローゼは強い。そのエンドローゼが宣言した。
「こ、これが終わったら、あ、あ、アレンさんのところにい、い、急ぎますよ!」
「はい」
全員が従順だった。
コストイラが登録したのはレベルアップしていくためだ。魔王とこれから戦いに行くのだ。力があって悪いことはない。
今までインサーニア、ジャスレ、ンッナンシリス、フォンと四名の魔王と戦ってきた。いや、後半三人はまともに戦っていない。ジャスレはフォンが倒し、ンッナンシリスは本気で戦わず、フォンはエンドローゼにお熱で大歓迎をされてしまった。
死力を尽くして戦ったのはインサーニアのみ。そのインサーニアとの戦いは今でも心に巣くっている。
魔王に勝つ。それには相当な実力がいる。ここで調整を行う。
「よし」
両頬を叩いて根性を入れ直すと、木刀を手にして戦場に顔を出した。
向かいの入口にはすでに対戦相手がいた。コストイラと同じくらいの身長を持つ獣人だ。綺麗な金の毛並みをした戦士は、凪のような表情でこちらを見ている。こちらが戦場に入ったのを確認すると、片手剣を抜いた。
「素晴らしい。まさかパンティエカ・バンバンイルが出現するとは」
この闘技場は登録者の強さに合わせて対戦相手が決められる。シュリントロンの魔法によって作られているらしい。ちょっと背伸びをして指を伸ばして限界まで伸ばした時、倒せるような相手が用意される。
コストイラに用意されたのはパンティエカ・バンバンイル。獣人の中でも特に強く、史上最強の獣人とさえ言われている。
コストイラは口角を上げた。こんな栄誉なことはない。観客も沸いている。
パティは口角を上げた。目の前にいる男は強い。潜在能力もまだまだ有り余っている。何と言ったって、あのフラメテの息子なのだから。
「シュルメに感謝を」
「ッ!? あぁ、シュルメに感謝を」
両者が剣を構えた。会場が静まり返る。観客の誰かが緊張に耐えかねて、唾を大きく呑んだ。
その音をきっかけに両者が動いた。目にも止まらぬ剣戟に、誰も声を出せない。
「君は魔術を使わないのかい?」
「反発したくなる言い方するな」
「フラメテの言ったとおりだな」
「母さんめッ!」
二度の接触が行われ、その瞬間、爆炎が発せられた。
「なっ」
「使わんとは言ってねェさ」
「バラガキめ」
両者の駆け引きに会場が沸いた。
「ハァッ!」
コストイラの集中力がどんどん増していく。さらに蒼いオーラが纏われていく。
「斬開者か」
パティの目が輝く。その技は過去にフラメテから食らったことがある。彼女の斬開者は赤黒いオーラであり、身体能力の向上を効果としたものだ。
その息子の技だ。異常性がない筈がない。
食らいたい。あのフラメテの息子の、系統された魔法を食らってみたい!
「来い!」
パティが腰を落として、地面と平行に剣を構えた。自分史上最高の技で迎え撃ってやる。
「いざ」
コストイラが蒼い尾を引きながら走り出した。地面が一歩ごとに抉れている。
その威力を見て、落胆と驚嘆から顔を輝かせた。威力を自分のものにできていないと一目で分かりしかし、そのポテンシャルの高さに感動した。
剣と剣が交わる。コストイラのオーラが弾けて消えた。
コストイラの鼻から血が噴き出した。爆発的な力の奔流が自身の体に抑えきれていない。ここから先は命を削る行為だ。早く終わらせてやろう。
パティが剣を構えて待機した。来たら斬る。そのことを胸にコストイラを待っていると、コストイラの目や耳からも血が噴き出た。
エンドローゼが真っ青になる。耳からの血はマズイ。脳からのダメージの可能性がある。
コストイラは医務室へと運ばれた。
アシドは結果を見ていない。見ると、異常なまでに燃えてしまうからだ。
くるくると槍を回して、こんと地面を突いた。
「いつまでもアイツの影を追っていちゃいけねェ。オレの道を見つけるんだ」
「ここにいたか、アシド」
控室にレイドが入ってきた。最終調整中だが、問題ない。
「呼び出しか?」
「コストイラが医務室に運ばれたらしい」
「あ!?」
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