メグルユメ

トラフィックライトレイディ

8.句芒の門

 コストイラは吹き飛ばされた先で、木々を倒して壁にめり込んだ。コストイラの髪の端からポタポタと水が滴っている。
 コストイラが壁から体を剥がし、髪を掻き上げた。

「血ぃ落ちたわ」

 コストイラがフラフラしながら両膝に手を置いた。水属性技はかなり効いたようだが、それ以上に頭を揺らされたのがきつそうだ。
 エンドローゼがコストイラの背を擦りながら、回復魔法をかけてあげる。回復されていくほど、コストイラが吐いた。

 普段もっと激しい動きをしているではないか。

 そもそも水を放ったのは誰だ? 確認するために発射元に目を向けた。そこには海の中に半分以上体を沈めたディープドラゴンがいた。

 水球を放ったばかりだからか、その顔が笑っているように見えた。コストイラが見ていたらブチギレていたかもしれない。

 シキがどうする? と視線を向けてきたので、アストロは試しに魔力をぶつけてみることにした。大ダメージを与えられる魔術にはTPが足りない。
 ディープドラゴンは着弾前に水の中に潜り、難を逃れる。再び自ら顔を出し、にやりと笑った気がした。

 アストロは当たり前のようにプツンときた。

「シキ」
「ん」

 名前を呼ばれ、シキはどこからか大量の石を抱えて戻ってきた。

「やれ」

 アストロは容赦なく、敵に指を向けた。その瞬間にシキは全力で一投目を放った。そして、石の速さは異常なまま進み、ディープドラゴンを穿つ。

 デロリと右眼から粘性の強い液体が出てきた。砕けて潰れた右目の残骸が海に落ちた。

『ゴォアアアアアア!!』

 一歩遅れて激痛による叫びが喉を割って出てきた。首をぶんぶんと振って痛みから逃れようとしている。
 そして、ブンブン首を振ったところで痛みは出ていかず、シキが狙えないわけではない。

 二投目。大きく揺れる頭ではなく、その根元にある首の付け根を狙う。簡単に貫通して水柱がたつ。皮が剥げて、肉も骨も表に見えてしまっている。口から血の泡を吹きながら海に沈んだ。
 海に赤い円ができていく。

「化け物みたいな投擲ね」

「む?」

 呆れるアストロの隣で、シキが小首を傾げた。

 アレンはやっぱり僕なんていらないのでは? と思い始めた。

 ゴプと泡が弾けた。何か出てくる。

 コストイラが伸びをして刀を構えた。

「最近、シキばっかり働いているからな。次はオレの番だ。飛んでない奴求む」

 最後にポロリと本音を漏らしながら、コストイラが闘志を燃やした。

 血だまりが光り始めた。その光は門で見た光に似ている。あの時は火の鳥が出現したが、今回は何が出てくる?

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