メグルユメ

トラフィックライトレイディ

2.ウィザードリィストラグル

 消えた男の話でが正しければ、アレン達には時間がない。アレンには落ち込んでいる暇はない。ただし、近道はない。直線では殺されてしまう。遠回りをしつつ、最短最速で山頂を目指す。

「そういうことだな」
「山に登りすぎて山の名人になれそうね」
「山はそんなに甘くないぞ」

 アレンが今回の目標と条件の確認をすると、コストイラが頷く。アストロが遠い目をしながら発言すると、レイドが真剣に答えた。最近は冗句を言えるようになったと思ったが、山に関してはかなり本気らしい。

「えぇ~っと、急ぎましょう」
「特にお前がな」

 言い返されたアレンが肩を落としながら、歩き始めた。

 2分ほど歩くと、4人のパーティと出会った。相手パーティの顔はだいぶ焦っている。時間制限があることを知っているのだろう。

「くっ!? 邪魔をするな!」

 邪魔をしているつまりは一切ない。相手が焦りから勘違いしているのだろう。
 弁明しようとすると、錯乱した相手が魔術を放ってきた。コストイラが刀を抜いて、魔術を往なした。

 この時点でコストイラ達は敵認定した。アストロは指を構えて魔術を放った。パーティの前列にいた2人が炎を浴びた。

「うわぁ!?」
「ぬぅえ!?」

 腕をぶんぶんと振るいながら倒れた。地面をゴロゴロと転がり、炎を消す。

「くっ!?」

 報復しようと、相手が腕を構える。始めたのはお前達だろう? と思いながら刀を振るうと、魔術師達の指が簡単に切れた。

 コストイラは奇妙な感覚を得た。このパーティは魔術師しかしないのか?

 コストイラが不思議に思ったとしても、アストロは納得した。この4人はグランセマイユの真似をしているのだ。そう考えると、この4人は残念な実力しかない。グランセマイユの10分の1もないだろう。

 アストロの魔力が残りの2人に当たる。魔術師達ががくりと首を折った。

「生かすのは慈悲よ。すぐ死ぬかもしれないけど」

 エンドローゼが慈悲の心で回復魔法をかけてあげた。

「私達は行きましょう。死ぬのはごめんだわ」
「そうだな」

 コストイラは4人組から視線を切って歩き出す。エンドローゼとアレンは名残惜しそうに見つめるが、連れて行った結果自分達も死んでしまっては元も子もない。諦めて追従する。

「今後はもっとああいう奴が出てくる可能性がいないのか。今まで以上の警戒が必要になったな。くっそ。このままだと心が廃れる一方だぜ」
「貴方、自分がまだ正常だと思っていたの?」

 コストイラの悪態に、アストロが目を丸くする。その反応にコストイラが目を丸くした。

 いつもの会話をしながら、いつも以上の早歩きをする。アレンの体力は尽きかけている。

「アレン、乗る?」

 シキが自分の背を指して提案する。一刻も早く受け入れたい気持ちがあったが、アレンにも少ないがプライドがある。アレンはその提案を断った。

「どこかで一旦、のんびりと休暇したいものですね。今は絶対無理ですけど」

 アレンがこんな願いを口にしたからだろうか。正反対の出来事が起こった。自然にできた天井のある道を通っていると、目の前にはグレートドラゴンが現れた。
 左右の幅は50㎝、上に至っては20㎝あるかないかだ。

「隙間は、通れそうにないですね。真正面、いけそうですか?」
「いける、と言っておこうかな」
「ん」

 アレンの言葉に、コストイラとシキが前に出た。

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