メグルユメ
1.幽明の境界
アレンが目を覚ます。やはり最後だ。そのことはもういい。諦めた。
しかし、それより気になるのは、光で飛んだ先だ。とてつもなく危険な地域なのか、それとも楽園のような場所なのか。どっちにしろ地獄か。
そこでアレンが気付いた。僕、揺さぶられてない?
「んお? 起きたか?」
「ふぁい」
「あんまり体動かすと落ちるぞ?」
アシドの声がのんびりしていたので、安全なのだと思い、伸びをしようとする。しかし、そこで注意が飛んできた。何も気づかずに伸びをしてしまい、シキの声が聞こえた。あ、とは何だろう?
重心が後ろに動いたアレンが必死に腕を動かし、元に戻ろうとする。が、駄目。アレンの体は見事に倒れ落ちていった。
アレンは後頭部を押さえながら理解した。どうやらシキに背負われていたらしい。
でも、どうして移動しているんだ?
アレンが目を覚ますかなり前。シキが起き上がると、ローブを着た男がいた。
『ヒッヒッ、起きたのかい? 嬢ちゃん』
シキが目にも止まらぬ速さでナイフを抜き、臨戦態勢に入る。
『ヒッヒッ!? ま、待ってくれよい。儂に敵対する気はねーよ。それに、嬢ちゃん起きんの速すぎ。正直、3秒で目覚めてたぜ』
ローブの男は情けない声を出しながら、シキを止める。腰が引けているのがさらに情けなさを加速している。
『こ、こ、このままだとお仲間が死んじまうぜ』
シキがナイフを握る手を強め、切り殺そうとする。
『ヒッヒッ!? こ、ここは幽明の境界って言ってな。あんまり長居していると、ポロリと境界から落ちちまう。速くこの山を登った方がいい。あそこからしか帰れないらしいからな。ヒッヒッ。直線距離で行くと、凶悪な魔物に食い殺されちまうぜ。ヒッヒッ。必死に生きて、落ちちまうんだな。ヒッヒッ!』
最後まで行った時、男の左腕が消えた。速く動いたわけではない。本当に消えたのだ。
『ヒッヒッ。儂の時間はこれで終わりなようじゃな。ヒッヒッ』
そして、男の体が消えた。灰色のローブだけを残して、完全に。
「コストイラ」
「おう。安心しな、聞いていたぜ。マズいことになったな。どれくらい時間があるのか、分かんねェからな。早速動こうぜ。皆、準備してくれ」
起きていたアレン以外の者達が準備を終わらせる。
「ここまであって起きないのは、むしろ才能よね」
「誰が運ぶ?」
アストロとシキがアレンの顔を覗く。起きてくる気配はない。シキが頬をツンツンしているが、身動ぎするだけだ。早々に起こすのを諦めたコストイラが呼びかけると、シキが手を上げた。
「私が背負う」
「僕ってそんなに起きなかったんですか?」
「自然と皆の意思が起こさない方に固まるくらいには、な」
アレンの両手は、後頭部を押さえていることから顔を覆い隠すことに使われることになった。
しかし、それより気になるのは、光で飛んだ先だ。とてつもなく危険な地域なのか、それとも楽園のような場所なのか。どっちにしろ地獄か。
そこでアレンが気付いた。僕、揺さぶられてない?
「んお? 起きたか?」
「ふぁい」
「あんまり体動かすと落ちるぞ?」
アシドの声がのんびりしていたので、安全なのだと思い、伸びをしようとする。しかし、そこで注意が飛んできた。何も気づかずに伸びをしてしまい、シキの声が聞こえた。あ、とは何だろう?
重心が後ろに動いたアレンが必死に腕を動かし、元に戻ろうとする。が、駄目。アレンの体は見事に倒れ落ちていった。
アレンは後頭部を押さえながら理解した。どうやらシキに背負われていたらしい。
でも、どうして移動しているんだ?
アレンが目を覚ますかなり前。シキが起き上がると、ローブを着た男がいた。
『ヒッヒッ、起きたのかい? 嬢ちゃん』
シキが目にも止まらぬ速さでナイフを抜き、臨戦態勢に入る。
『ヒッヒッ!? ま、待ってくれよい。儂に敵対する気はねーよ。それに、嬢ちゃん起きんの速すぎ。正直、3秒で目覚めてたぜ』
ローブの男は情けない声を出しながら、シキを止める。腰が引けているのがさらに情けなさを加速している。
『こ、こ、このままだとお仲間が死んじまうぜ』
シキがナイフを握る手を強め、切り殺そうとする。
『ヒッヒッ!? こ、ここは幽明の境界って言ってな。あんまり長居していると、ポロリと境界から落ちちまう。速くこの山を登った方がいい。あそこからしか帰れないらしいからな。ヒッヒッ。直線距離で行くと、凶悪な魔物に食い殺されちまうぜ。ヒッヒッ。必死に生きて、落ちちまうんだな。ヒッヒッ!』
最後まで行った時、男の左腕が消えた。速く動いたわけではない。本当に消えたのだ。
『ヒッヒッ。儂の時間はこれで終わりなようじゃな。ヒッヒッ』
そして、男の体が消えた。灰色のローブだけを残して、完全に。
「コストイラ」
「おう。安心しな、聞いていたぜ。マズいことになったな。どれくらい時間があるのか、分かんねェからな。早速動こうぜ。皆、準備してくれ」
起きていたアレン以外の者達が準備を終わらせる。
「ここまであって起きないのは、むしろ才能よね」
「誰が運ぶ?」
アストロとシキがアレンの顔を覗く。起きてくる気配はない。シキが頬をツンツンしているが、身動ぎするだけだ。早々に起こすのを諦めたコストイラが呼びかけると、シキが手を上げた。
「私が背負う」
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