メグルユメ

トラフィックライトレイディ

15.暗闇から光明へ

「っ」
『ギィ!!』

 シキがナイフでダークトレントを切り離す。父に遺された闇の魔剣の試運用をしていた。

 どうやら切れ味は変わらないようだ。然の魔剣は切れ味抜群だったが、闇の魔剣はどうなのだろうか。

「魔力流したらどうなるんだ?」
「やってみる」

 然の魔剣は魔力を流すことで抜群の切れ味を発揮できるが、闇の魔剣に魔力を流すと、どう変わるのだろう。

『グァ!!』

 現れたアックスビークにナイフを振るう。アックスビークの首を切ったと思ったら、そのまま腹、背、腰、足、尾と次々と斬撃が伝播する。振ったのは一振りであるにもかかわらず、無数の斬撃が繰り出せた。

「それが魔剣の能力か」
「みたい」
「無限の手数と一撃必殺。凄い手札が揃いましたね」
「う、うん」

 樹木の多く生える林の中で、シキが闇の魔剣を見つける。ナイフにだけ日光が当たる。
 感情表現の乏しいシキが、口角を上げた。

 アシドが後頭部に手を回し、笑顔になる。アレンも笑顔になる。

 ガサリと叢から装備した女達が出てきた。銀の鎧に大きめのトライデント、そして街の前で出会った者達と同じタイプのサンダル。もしかして、同じ所属の者達か?

 前にいた二人がトライデントを構える。唯一兜を被ってる兵がこちらとの対話を望んでいる。しかし、武器を構えられている状態で、対等に話せるわけがない。

『我々はこの世界の衛兵、ガーディアンズだ。エインヘリアル部隊を知っているか?』

 エインヘリアル部隊という単語に聞き覚えがない。とはいえ、心当たりがないわけではない。どうせ、ミラージュの街に入る前に戦った五人組だろう。

 しかし、アレンとアストロには心当たりすらなかった。二人が見たのは死体だったからだろう。

「分かりますか?」
「いいえ、分からないわ」

 嘘が一つもない会話を見て、リーダーらしき女が兜をカチャカチャいじる。

『知らないのであれば仕方ない。まぁ、貴様等に言っても意味がないのだろうが、通信が切れていてな。何か知らないか?』
「知らないってわかってて聞いているだろ。ま、実際知らねェんだけどさ。その、何だっけ? エインナンチャラ部隊」
『だろうな。呼び止めて済まなかった。まったく、どこに行ったのだ』

 リーダー格の女が溜息を吐いた。コストイラは肩を竦めて困り顔をする。

 ところで、前にいる二人が警戒を解いていない。

「これは?」
『エインヘリアル部隊に関しては知らないのだろう。しかし、我々には見逃すことができない事実がある』
「見逃せない事実?」

 リーダー格の女がウムと頷いた。そして、真っ直ぐにアレンを指差した。

『魔眼だ。その男の目には魔眼が宿っている』

 ドキリとした。アレンは思いっ切り顔に出ていたのだろう。

 そして、と女の指がスライドしていく。

『お前だ、エンドローゼ。お前が原因で、ジャスレ様がお怪我なさったのだ!』

 その時、うわっ! マズイッ! という顔になった。あのシキやレイドでさえも。

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