メグルユメ
11.誰が為だとしても
エンドローゼ達はこれまでに見た街の中でも、トップクラスに賑わっている光景に、腰が引けていた。しかし、青行燈を然るべき場所に連れていくという決意を曲げることなく、エンドローゼは病院を目指す。
見たことのない料理に鼻を鳴らし、美味しそうなアップルパイに目を奪われる。
しかし、エンドローゼは無事に病院に辿り着いた。しかし、その病院の佇まいに珍妙な顔になる。
電飾でデコレーションされており、ネオンで”BYO-IN”とアピールしてくる。愛を育むホテルのようなピンク色に不安しかない。
「何の用だ」
出てきたのは革製のエプロンを着け、手袋をした男性だ。それだけならよかったのだが、エプロンには返り血が、手袋にはピンク色の肉が付着しており、目には開瞼器を、口には開口器を装着している。
奇抜な見た目にも驚きだが、異常に落ち着いた声にも驚きだ。
「えっと、足が、う、う、動かなくて」
『うん』
「……中で聞こう。診療は立ち話ですることではない」
まともなことを言っているのだが、格好のせいで入ってこない。
医者の後を追って、エンドローゼが入っていく。いまいち信用しきれないレイドとアシドが入っていく。
2人がいれば平気だと判断したコストイラは、食道楽の資金のため、魔石の換金をしに行く。それにアストロも同行する。
残されたアレンがシキを見る。
「どうしましょうか」
「?」
シキは首を傾げる。アレンに任されたようだ。
アレンは基本は小心者だ。好きな子とのデートが急に決まった時など、すぐに行く場所が思いつくはずがない。アレンは内心、頭を抱えて悩んでしまう。
そこで、シキが明後日の方を見ていることに気付いた。
「何を見ているんですか?」
「この雰囲気、父さん?」
「え?」
構築していたデートプランが、すべて吹っ飛んだ。
じゅわりと口の中に肉汁が広がり、アストロの相好が崩れた。
「口の周りが汚れてんぞ」
「ん、ありがと」
口の端に付いたソースを薬指で拭い、口に運ぶ。コストイラは差し出していたハンカチをポケットに入れた。
「行儀悪くね?」
「食べ歩きでそれ言う? 食べ歩きはこれが基本よ。それに、美味しいものほど汚れるものよ」
コストイラが手に持っている串焼きを確認し、言えてる、と返した。
串に残った最後の肉を口に含む。肉を噛みながら、想いを馳せる。食事の流儀を教えてくれた彼女は、今どうしているのだろうか。
「次はアップルパイかな」
「そうね。でも、その前に飲み物でリフレッシュしたいわ」
何か合図があったわけではない。しかし、アストロにはとても衝撃的な出来事だった。コストイラがアストロを突き飛ばしたのだ。
文句を言おうと、コストイラを睨みつけるが、その光景にすぐには飲み込めなかった。
コストイラの左手を竹串が貫通していたのだ。その竹串はアストロのものでも、コストイラのものでもなく、コストイラの目の前にいる、黒ずくめの男のものだろう。
コストイラの左手の筋肉は異様に収縮していて、串が1mmも動かない。男の眉が皺を刻む。
コストイラが躊躇することなく、男の首めがけて串を突き出す。男はかなり早い段階で、強き刃の手首を掴んだ。
両者の手が動かない状態で、黒ずくめの男が蹴りを繰り出した。短い助走にもかかわらず、膝の一撃でコストイラの骨や内臓が逝った。
コストイラが気合を入れて手首を動かすと、男の左腕に竹串が刺さった。
男はこれ以上は赤字だと判断して撤退を決意する。あたりからキャーと声が聞こえてくるが、関係ない。この場で男を正しく認識できたものはいないのだ。
男はコストイラの手首と竹串から手を放し、腹を蹴飛ばした。後ろに飛ばされたコストイラは、男のことを睨みつける。しかし、もう男はいなかった。
「見えたか?」
「いいえ」
「追えるか?」
「無理ね。隠密が上手すぎるわ」
コストイラが貫通している串を見つめながら、アストロに聞くが、彼女は首を振った。
「エンドローゼ激怒事件」
「うぇ。それは嫌だな。基本的に何も言い返せねェんだもん」
「まぁ、どっちにしても病院には向かわないとね」
コストイラは腹を押さえながら、高笑いした。
シキがアレンの手を握る。
「こっち」
「え」
唐突で大胆な行動に、アレンの思考は追い付かない。為すが儘に連れていかれる。
そして、2人は路地に入った。さらに、裏路地へと進んでいき、誰もいないところまできた。もうアレンの頭の中はピンク一色だ。
「出てきて」
浮ついていたアレンの思考に、空白が生じる。シキは誰に向かって言っている?
目にも止まらぬ速さでナイフが振るわれる。アレンの後頭部から火花が散った。
誰かいる。そう思った時、アレンの腰が抜けた。地面にぺたりと尻を着ける。
後ろにいた男の顔が見える。歳は40後半だろう。そう思えるくらいには皺が刻まれていた。
黒ずくめの男は距離を取ることなく、ナイフで連撃を繰り出した。シキはその速度に食らいつく。食らいつくだけで精一杯だ。
時間をかければ押し切れるが、そんな戦いは、信条に反する。
男は一度距離を取ると、懐から煙球を取り出し、地面に叩きつけた。
チュドッと煙が路地に充満する。シキは慌ててナイフを振るった。しかし、斬撃は煙しか切れなかった。
シキは体の中心から風を放ち、煙を晴らす。しかし、そこに誰もいなかった。
ブワリと汗が噴き出る。珍しくシキが焦っている。
それは、なぜ?
見たことのない料理に鼻を鳴らし、美味しそうなアップルパイに目を奪われる。
しかし、エンドローゼは無事に病院に辿り着いた。しかし、その病院の佇まいに珍妙な顔になる。
電飾でデコレーションされており、ネオンで”BYO-IN”とアピールしてくる。愛を育むホテルのようなピンク色に不安しかない。
「何の用だ」
出てきたのは革製のエプロンを着け、手袋をした男性だ。それだけならよかったのだが、エプロンには返り血が、手袋にはピンク色の肉が付着しており、目には開瞼器を、口には開口器を装着している。
奇抜な見た目にも驚きだが、異常に落ち着いた声にも驚きだ。
「えっと、足が、う、う、動かなくて」
『うん』
「……中で聞こう。診療は立ち話ですることではない」
まともなことを言っているのだが、格好のせいで入ってこない。
医者の後を追って、エンドローゼが入っていく。いまいち信用しきれないレイドとアシドが入っていく。
2人がいれば平気だと判断したコストイラは、食道楽の資金のため、魔石の換金をしに行く。それにアストロも同行する。
残されたアレンがシキを見る。
「どうしましょうか」
「?」
シキは首を傾げる。アレンに任されたようだ。
アレンは基本は小心者だ。好きな子とのデートが急に決まった時など、すぐに行く場所が思いつくはずがない。アレンは内心、頭を抱えて悩んでしまう。
そこで、シキが明後日の方を見ていることに気付いた。
「何を見ているんですか?」
「この雰囲気、父さん?」
「え?」
構築していたデートプランが、すべて吹っ飛んだ。
じゅわりと口の中に肉汁が広がり、アストロの相好が崩れた。
「口の周りが汚れてんぞ」
「ん、ありがと」
口の端に付いたソースを薬指で拭い、口に運ぶ。コストイラは差し出していたハンカチをポケットに入れた。
「行儀悪くね?」
「食べ歩きでそれ言う? 食べ歩きはこれが基本よ。それに、美味しいものほど汚れるものよ」
コストイラが手に持っている串焼きを確認し、言えてる、と返した。
串に残った最後の肉を口に含む。肉を噛みながら、想いを馳せる。食事の流儀を教えてくれた彼女は、今どうしているのだろうか。
「次はアップルパイかな」
「そうね。でも、その前に飲み物でリフレッシュしたいわ」
何か合図があったわけではない。しかし、アストロにはとても衝撃的な出来事だった。コストイラがアストロを突き飛ばしたのだ。
文句を言おうと、コストイラを睨みつけるが、その光景にすぐには飲み込めなかった。
コストイラの左手を竹串が貫通していたのだ。その竹串はアストロのものでも、コストイラのものでもなく、コストイラの目の前にいる、黒ずくめの男のものだろう。
コストイラの左手の筋肉は異様に収縮していて、串が1mmも動かない。男の眉が皺を刻む。
コストイラが躊躇することなく、男の首めがけて串を突き出す。男はかなり早い段階で、強き刃の手首を掴んだ。
両者の手が動かない状態で、黒ずくめの男が蹴りを繰り出した。短い助走にもかかわらず、膝の一撃でコストイラの骨や内臓が逝った。
コストイラが気合を入れて手首を動かすと、男の左腕に竹串が刺さった。
男はこれ以上は赤字だと判断して撤退を決意する。あたりからキャーと声が聞こえてくるが、関係ない。この場で男を正しく認識できたものはいないのだ。
男はコストイラの手首と竹串から手を放し、腹を蹴飛ばした。後ろに飛ばされたコストイラは、男のことを睨みつける。しかし、もう男はいなかった。
「見えたか?」
「いいえ」
「追えるか?」
「無理ね。隠密が上手すぎるわ」
コストイラが貫通している串を見つめながら、アストロに聞くが、彼女は首を振った。
「エンドローゼ激怒事件」
「うぇ。それは嫌だな。基本的に何も言い返せねェんだもん」
「まぁ、どっちにしても病院には向かわないとね」
コストイラは腹を押さえながら、高笑いした。
シキがアレンの手を握る。
「こっち」
「え」
唐突で大胆な行動に、アレンの思考は追い付かない。為すが儘に連れていかれる。
そして、2人は路地に入った。さらに、裏路地へと進んでいき、誰もいないところまできた。もうアレンの頭の中はピンク一色だ。
「出てきて」
浮ついていたアレンの思考に、空白が生じる。シキは誰に向かって言っている?
目にも止まらぬ速さでナイフが振るわれる。アレンの後頭部から火花が散った。
誰かいる。そう思った時、アレンの腰が抜けた。地面にぺたりと尻を着ける。
後ろにいた男の顔が見える。歳は40後半だろう。そう思えるくらいには皺が刻まれていた。
黒ずくめの男は距離を取ることなく、ナイフで連撃を繰り出した。シキはその速度に食らいつく。食らいつくだけで精一杯だ。
時間をかければ押し切れるが、そんな戦いは、信条に反する。
男は一度距離を取ると、懐から煙球を取り出し、地面に叩きつけた。
チュドッと煙が路地に充満する。シキは慌ててナイフを振るった。しかし、斬撃は煙しか切れなかった。
シキは体の中心から風を放ち、煙を晴らす。しかし、そこに誰もいなかった。
ブワリと汗が噴き出る。珍しくシキが焦っている。
それは、なぜ?
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