メグルユメ

トラフィックライトレイディ

1.夢と現の狭間

 アレンはわなわなと震えていた。これが貴族の食糧か。
 もう何日も連続で活動をしている勇者一行にとって、休息の時間はほとんどない。食事や睡眠時間であっても、気が休まることはない。いつ魔物や敵対者が襲撃してくるか分からないからだ。
 だからこそ、襲撃がないと分かっているときは、心から休むことができる。

 ナイト・クレアとフィリス・クレアは久しぶりに会えた兄と、その仲間をもてなすために、特別な時にしか出さない料理を提供していた。

 ビックホーンのステーキ。捕獲することが難しいほど強く、絶対数が少ないので、超高級品だ。貴族だからと言って、好きな時に食べられるわけではない。
 その肉はドラゴンやキラーシャークと違い柔らかく、食用家畜より硬い。グリフォンやオルトロスと同じく、旨い魔物ランキング上位に必ず入る。

 アレンは感動しすぎて涙を流している。

 ちなみに、アストロもアシドもコストイラも泣いた。




「じゃあね、兄上』
『……』
「あぁ、元気でな」

 クレア家の三兄弟は握手をしながら、ハグをした。他6人は誰も邪魔しない。邪魔するほど無粋ではない。

「そろそろ、行かせてもらおう」
「じゃあ』
『また』

 扉を開けて、勇者達は旅立った。




「……一旦戻んない?」

 あのコストイラが弱音を吐いている。正直、アレンも戻りたい。

 家屋を出たら一本道だった。その一本道が戻りたい原因である。なぜか紺やピンクなどの色が淡く輝いている。タイル生地のようになっていて、目がチカチカしてくる。色とりどりで、一つとして同じ色のタイルがない。色彩豊かな道が不安を煽ってくる。

 何でこんな道にしたんだ?

 ガシと曲がり角に指がかけられた。位置から考えて背丈は5mを超えて8mはありそうだ。
 ヌッと姿が現れる。予想通り身長は8mくらい。肌は淡紫色で、金髪を長く伸ばした女体。裸であり、豊かに膨らんだ胸に視線を向けると、金髪が大部分を隠していた。
 尻尾をくるりとくねらせると、翼を限界まで広げて、指をこちらに向けてきた。指に魔力が集まっていく。

「マズッ!」

 初手を取られてしまったので、カウンターを狙う。
 しかし、その前に攻撃をどうする?

 レイドが前に出た。楯を構えている。やはりこういう時のレイドは本当に頼りになる。

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