メグルユメ
16.変容する家族の形
蝋燭の1本を手に取る。ぐるりと空間を見渡すが、誰もいない。火を点けたものはどこにいる?
コストイラがキョロキョロとする中、レイドは蝋燭の側面に刻まれた紋章を見ていた。見覚えがある。それどころか使ったことさえある。
「ナイト、フィリス」
「誰の名前?」
「私の弟達だ。行方不明の、な」
「え、ごめ」
「構わん」
ポツリと呟いた名前にアストロが反応する。しかし、それが無礼に当たってしまった気がして謝るが、レイドはそれを受け入れた。
「じゃあ、その弟がいるかもしれねェのか。ここ、月だぞ? 何でいんだよ」
「ふ、ふ、フォン様は慈悲深きおー方ですからね。ほ、ほ、保護されたのかもしれません」
なぜかエンドローゼが胸を張っている。
「兄上』
石畳の城の2階から声が降ってきた。レイド以外の6人が顔を上げた。2階にいたのはヘルソーディアンだった。とはいえ、姿は骨ではなく、きちんと肉がついている。
「ナイト」
「すごいな、兄上は。こんなところまでやってきてしまうんだ』
ナイトと呼ばれた男は、どこか悲しみをたたえていた。会えて嬉しいというという気持ちを持ってていながら、会いたくなかったという感情が見え隠れしている。
「ナイト。壮健だったか?」
「あぁ、まぁいろいろあったけど、かなり元気だよ。兄上が知らないぐらいにね』
「それは良かった」
2人の会話がぎこちない。明らかに浮いている。久しぶりに会って、ここまで何もできない。
「ナイト」
「分かっているよ、兄上。フィリスだろ』
「……」
「僕はそこまでじゃないけどさ。あの時兄上は狂っていて、あまり近づきたくなかったんだ。その時の兄上のイメージが抜けなくてね。フィリスの奴はまだ兄上を怖がっている』
「…………それは申し訳ない」
ナイトの軽口に、レイドは本当に申し訳なさそうに目を逸らして頭を搔いた。
「そ、そ、そんなに怖かったのですか?」
「あぁ、あの時の家庭は、母上が亡くなって、父上が魔道具製作に夢中になっていてね。自分が家を守るんだって、兄上は躍起になっていたよ』
全員の視線がレイドに集まる。レイドは気まずそうに顔を背けた。守りたい欲は当時からというわけだ。
「兄上。父上はどうなんだい? 改心したのかい? それともまだ製作に夢中なのかい?』
父の話題が出た時、全体に緊張が走る。レイドの父、エヴァンズ・クレアは、魔王インサーニアの手下として敵対していた。レイドは自らの手で、父の息の根を止めたのだ。レイドの心の整理がちゃんとついているのか?
「父なら、私が、殺した」
「え』
「父はエレノアを殺した。お前達がいなくなって、私には家族がエレノアしかいなくなった。にもかかわらず、あれは妹を殺した。私に跡継ぎをさせるためにとかいう理由で、だ」
「父が、エレノアを』
ナイトは驚愕して、両膝を着いた。
「じゃあ家族はもう僕とフィリスだけなのか』
「そうだな。お前達に子がいなければ、な』
「いないよ。僕もフィリスも、ね。もう子はできないし』
どこか意味深長な言い方で、ナイトが悲しそうにしてる。父も妹も死がかなりショックだったのだろう。
「兄上、付いてきてくれ。フィリスに会わせたい』
「あぁ」
奥に歩いていく2人を見て、コストイラ達が視線を絡ませる。これ、オレ達も付いて行くべき?
シキがアストロの袖を引いた。
「ん?」
「あの人、半分魔物」
「え」
「魔物になりかけている」
アストロはナイトの後姿を見て、慌てて追いかけた。
『兄上』
「お前、体が」
案内された部屋の中に、フィリスがいた。久しぶりに会ったが、かなりおびえてしまっている。そのフィリスの体は、骨が見え隠れしている。骨は人骨の白ではなく、ボーンレッドの紫だ。
「最初、僕達は兄上に殺してもらおうと思っていたんだ。でも、それは兄上には酷だ。だから、ここから解放してほしい。この施設を壊してくれ』
弟の懇願に、長男はギリと拳を握った。
コストイラがキョロキョロとする中、レイドは蝋燭の側面に刻まれた紋章を見ていた。見覚えがある。それどころか使ったことさえある。
「ナイト、フィリス」
「誰の名前?」
「私の弟達だ。行方不明の、な」
「え、ごめ」
「構わん」
ポツリと呟いた名前にアストロが反応する。しかし、それが無礼に当たってしまった気がして謝るが、レイドはそれを受け入れた。
「じゃあ、その弟がいるかもしれねェのか。ここ、月だぞ? 何でいんだよ」
「ふ、ふ、フォン様は慈悲深きおー方ですからね。ほ、ほ、保護されたのかもしれません」
なぜかエンドローゼが胸を張っている。
「兄上』
石畳の城の2階から声が降ってきた。レイド以外の6人が顔を上げた。2階にいたのはヘルソーディアンだった。とはいえ、姿は骨ではなく、きちんと肉がついている。
「ナイト」
「すごいな、兄上は。こんなところまでやってきてしまうんだ』
ナイトと呼ばれた男は、どこか悲しみをたたえていた。会えて嬉しいというという気持ちを持ってていながら、会いたくなかったという感情が見え隠れしている。
「ナイト。壮健だったか?」
「あぁ、まぁいろいろあったけど、かなり元気だよ。兄上が知らないぐらいにね』
「それは良かった」
2人の会話がぎこちない。明らかに浮いている。久しぶりに会って、ここまで何もできない。
「ナイト」
「分かっているよ、兄上。フィリスだろ』
「……」
「僕はそこまでじゃないけどさ。あの時兄上は狂っていて、あまり近づきたくなかったんだ。その時の兄上のイメージが抜けなくてね。フィリスの奴はまだ兄上を怖がっている』
「…………それは申し訳ない」
ナイトの軽口に、レイドは本当に申し訳なさそうに目を逸らして頭を搔いた。
「そ、そ、そんなに怖かったのですか?」
「あぁ、あの時の家庭は、母上が亡くなって、父上が魔道具製作に夢中になっていてね。自分が家を守るんだって、兄上は躍起になっていたよ』
全員の視線がレイドに集まる。レイドは気まずそうに顔を背けた。守りたい欲は当時からというわけだ。
「兄上。父上はどうなんだい? 改心したのかい? それともまだ製作に夢中なのかい?』
父の話題が出た時、全体に緊張が走る。レイドの父、エヴァンズ・クレアは、魔王インサーニアの手下として敵対していた。レイドは自らの手で、父の息の根を止めたのだ。レイドの心の整理がちゃんとついているのか?
「父なら、私が、殺した」
「え』
「父はエレノアを殺した。お前達がいなくなって、私には家族がエレノアしかいなくなった。にもかかわらず、あれは妹を殺した。私に跡継ぎをさせるためにとかいう理由で、だ」
「父が、エレノアを』
ナイトは驚愕して、両膝を着いた。
「じゃあ家族はもう僕とフィリスだけなのか』
「そうだな。お前達に子がいなければ、な』
「いないよ。僕もフィリスも、ね。もう子はできないし』
どこか意味深長な言い方で、ナイトが悲しそうにしてる。父も妹も死がかなりショックだったのだろう。
「兄上、付いてきてくれ。フィリスに会わせたい』
「あぁ」
奥に歩いていく2人を見て、コストイラ達が視線を絡ませる。これ、オレ達も付いて行くべき?
シキがアストロの袖を引いた。
「ん?」
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