メグルユメ
8.地底都市
コストイラが部屋の扉を開ける。ディーノイがいない。どこかの部屋の窓から出ていったのだろうか。
「変なところがないわね。ディーノイに襲撃されるような出来事が分からないわ」
「で、ディ、ディーノイ様は正義の方です。な、な、何かあるはずです」
アストロの言葉に、エンドローゼが頬を膨らませて怒っている。頬がこけていて、不摂生のせいで荒れている髪や、そばかすだらけの顔をアストロに向ける。アストロは年の離れた妹のような感想を抱き、微笑ましく思いながら押し返した。
「何にもねェぞ」
一階から声が届く。一階を探索していたアシドが叫んだ。二階を探索しているコストイラ達も何も見つけられていない。至って普通の屋敷だ。執務室の窓が開いていることを除いては。
「駄目だ。これ以上は何も出てこねェ」
「そうね。多分、不利益になりそうなものをディーノイは持って行ったってとこでしょうね」
コストイラとアストロが階段を下りるのを追って、エンドローゼも下りていく。アシド達も合流すると、そのまま屋敷を後にする。
玄関の扉を開けると、廃れた街が広がっていた。誰かが住んでいるとは思えない。壁に穴が開いていたり、窓に何も嵌まっていなかったりしていて、冷たい印象を受ける。
しかし、人がかなり歩いている。かなり賑わっているように見える。
「こんなに人がいんの?」
「あの白髪、ヲルクィトゥじゃね? 何でいるの?」
「は、は、早く出ましょう」
エンドローゼが顔を青くしながらアストロの服を掴んだ。人が多くて気分が悪くなったのだろうか。今までにそのようなことが起きていなかったので、意外な印象を受けた。
「寵愛のお姫様が脱出をご所望だ。とっとと行こう」
出口がありそうな方に向かって歩く。
「よーし、お金が貯まったからガクエイのところに行くぞ!」
「いいねいいね! でも今どこにいるの?」
「確かクレアだよ」
2人組の女冒険者が通り過ぎる。レイドが身を強張らせた。
「どうした、レイド」
「いや、知り合いの名前が聞こえたのでな」
「知り合い?」
「あぁ」
少し微妙に嬉しそうにも恥ずかしそうにも見える表情をしている。
「あいつ。こんなにも有名だったのか」
チェシバルの街は幸せ一色だった。キャンパスママリスが、街に絶望と恐怖を蔓延させた凶悪な獣を捕らえたからだ。
しかし、その幸せは強制されたものだ。
妻を喰われた男、メントモールは昼間から酒を飲んでいた。愛する妻が殺されたことで、生きる気力を失ったのだ。
とはいえ、簡単に死ぬわけにはいかない。メントモールには、愛する妻の間にできた子供がいる。
息子のシアサキミは今、家にいない。親友のメティスケントンの娘、ジーユーコマメイのところに遊びに行っている。色恋に疎いメントモールだが、息子がケンちゃんの娘を好いているのは明白だ。とっとと告白すればいいのに。そうすれば死ねるのに。
メントモールは息子を迎えに行こうと立ち上がる。酒のせいでくらりとして椅子に手を着く。千鳥足であるが、まぁいいか。
街に出ると、人だかりができていた。男がそこに向かう。
「よぉケンちゃん、どうかしたのか?」
「お前、昼間から酒なんて呑気だな」
どこか辛そうな顔をしたメティスケントンが立ち去った。
人だかりの中心を見ると、息子のシアサキミがいた。下半身を泥だらけにして、上半身は細かい擦り傷や切り傷を創っている。目を赤く腫らしており、すでにかなり泣いていると分かる。
「どうかしたのか?」
「メントモールか」
その日、史実が変わった。
再び街には絶望と恐怖が伝播した。凶悪な獣は死んだ。しかし、ベートは死んでいなかった。
新しい被害者はジーユーコマメイ。
計50人目の被害者となった。
「変なところがないわね。ディーノイに襲撃されるような出来事が分からないわ」
「で、ディ、ディーノイ様は正義の方です。な、な、何かあるはずです」
アストロの言葉に、エンドローゼが頬を膨らませて怒っている。頬がこけていて、不摂生のせいで荒れている髪や、そばかすだらけの顔をアストロに向ける。アストロは年の離れた妹のような感想を抱き、微笑ましく思いながら押し返した。
「何にもねェぞ」
一階から声が届く。一階を探索していたアシドが叫んだ。二階を探索しているコストイラ達も何も見つけられていない。至って普通の屋敷だ。執務室の窓が開いていることを除いては。
「駄目だ。これ以上は何も出てこねェ」
「そうね。多分、不利益になりそうなものをディーノイは持って行ったってとこでしょうね」
コストイラとアストロが階段を下りるのを追って、エンドローゼも下りていく。アシド達も合流すると、そのまま屋敷を後にする。
玄関の扉を開けると、廃れた街が広がっていた。誰かが住んでいるとは思えない。壁に穴が開いていたり、窓に何も嵌まっていなかったりしていて、冷たい印象を受ける。
しかし、人がかなり歩いている。かなり賑わっているように見える。
「こんなに人がいんの?」
「あの白髪、ヲルクィトゥじゃね? 何でいるの?」
「は、は、早く出ましょう」
エンドローゼが顔を青くしながらアストロの服を掴んだ。人が多くて気分が悪くなったのだろうか。今までにそのようなことが起きていなかったので、意外な印象を受けた。
「寵愛のお姫様が脱出をご所望だ。とっとと行こう」
出口がありそうな方に向かって歩く。
「よーし、お金が貯まったからガクエイのところに行くぞ!」
「いいねいいね! でも今どこにいるの?」
「確かクレアだよ」
2人組の女冒険者が通り過ぎる。レイドが身を強張らせた。
「どうした、レイド」
「いや、知り合いの名前が聞こえたのでな」
「知り合い?」
「あぁ」
少し微妙に嬉しそうにも恥ずかしそうにも見える表情をしている。
「あいつ。こんなにも有名だったのか」
チェシバルの街は幸せ一色だった。キャンパスママリスが、街に絶望と恐怖を蔓延させた凶悪な獣を捕らえたからだ。
しかし、その幸せは強制されたものだ。
妻を喰われた男、メントモールは昼間から酒を飲んでいた。愛する妻が殺されたことで、生きる気力を失ったのだ。
とはいえ、簡単に死ぬわけにはいかない。メントモールには、愛する妻の間にできた子供がいる。
息子のシアサキミは今、家にいない。親友のメティスケントンの娘、ジーユーコマメイのところに遊びに行っている。色恋に疎いメントモールだが、息子がケンちゃんの娘を好いているのは明白だ。とっとと告白すればいいのに。そうすれば死ねるのに。
メントモールは息子を迎えに行こうと立ち上がる。酒のせいでくらりとして椅子に手を着く。千鳥足であるが、まぁいいか。
街に出ると、人だかりができていた。男がそこに向かう。
「よぉケンちゃん、どうかしたのか?」
「お前、昼間から酒なんて呑気だな」
どこか辛そうな顔をしたメティスケントンが立ち去った。
人だかりの中心を見ると、息子のシアサキミがいた。下半身を泥だらけにして、上半身は細かい擦り傷や切り傷を創っている。目を赤く腫らしており、すでにかなり泣いていると分かる。
「どうかしたのか?」
「メントモールか」
その日、史実が変わった。
再び街には絶望と恐怖が伝播した。凶悪な獣は死んだ。しかし、ベートは死んでいなかった。
新しい被害者はジーユーコマメイ。
計50人目の被害者となった。
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