メグルユメ
10.海没した古城
アシドは右脇に挟んでいた槍を振るった。水の抵抗を感じながら、後ろに向かって振るう。ガキンと槍が斧を防いだ。常人をはるかに超える魔物の一撃に、アシドの身が水に沈む。いつもなら地に足を着けているので、地面の力も借りることができるが、今は水の中でそれができなかった。
見えた姿はクラーケンだ。上半身が人間で下半身が烏賊の魔物だ。まさかレイド並みの筋肉とは思わなかった。
体勢を整えようと体を回転させる。ふと視界の端に入り口のようなものが見えた。あれは洞窟のような自然なものではなく、人工的な物だ。
(お城か?)
アシドは予測を立てたが、すぐに水面に向かって泳いだ。
上部からドブンと音が伝わり、泡が出現した。クラーケンが斧を構えながら潜ってきた。
水中での戦いは慣れである。自分の体のコントロールが陸上とはかなり違うため、百戦錬磨の冒険者でも簡単に、レベルが20以上下でも殺されてしまう。
アシドは海の男だ。しかも、これまでに何度も水中での戦いを制してきた猛者だ。それでも、毎回戦いは緊張する。
相手は水中のプロだ。下手を打てばそれで終わりだ。
クラーケンがその筋肉から繰り出した薙ぎをギリギリで躱す。生み出された水流に巻き込まれて流されてしまう。何とか手足をばたつかせ、動きを止める。
目の前にはすでにクラーケンがいた。下から斧が振り上げられる。何とか槍で防いだが、水の抵抗のせいで少しだけ遅れた。クラーケンの斧を利用して水面から顔を出す。素早く空気の補充をして、すぐに水中に戻っていく。
「アシド!」
「状況が見えねェ。波も泡も邪魔だな」
レイドとコストイラが目を凝らすが、アシドとクラーケンの様子が分からない。アレンはぐったりしていてアシドの方にまで気が回せない。アストロもぐったりしているが、右の指だけを海面につけて潮の流れを感じ取る。指先から分かる。アシドはまだ生きている。
プシと左腕から血が噴き出す。やはり水の中は動きづらい。武器が槍であることも動きづらさの一つだ。
長柄の槍はその分水の抵抗を感じる。先端に行くほど抵抗を大きく感じてしまう。おかげで対応が遅れてしまう。
頭の中にある映像通りに体が動いてくれない。クラーケンがいったん距離を置き、一気に距離を詰めてくる。アシドは最低限の動きだけで槍を構える。槍の形状を考えれば、水中であれば抵抗が少ないのは薙ぎよりも突きだ。アシドはクラーケンに槍を突き出す。踏ん張りがない状態での突きに、クラーケンが斧で防ごうとする。
しかし、突きの速さは振りの速さよりも速い。穂先が斧を擦り抜け、胸を突く。男が憧れる胸板の硬さに苦労するが何とか貫く。
槍を引き抜くと、クラーケンの胸から血が出てきてそのまま沈んでいく。
アシドは呼吸がきつくなってきたので、水面を目指す。
「プハァ」
「アシド」
肩で息を整えながら、差し出されたアストロの手を取る。
「そういえば、この先どこに行くんだ?」
手を握ったまま岩に上がらずにこの先へ行く場所を聞く。その答えはいくら待っても返ってこない。勇者一行はこれまでも無計画に進んできた。今だって何も考えていない。だから答えられない。
予想外に下に落ちてしまったため、本当に行く宛てがない。
「ちょっと待ってろ。探してくる」
アシドがアストロの手を離すと、海に沈んでいった。
「元気ね、アシド。私には無理だわ」
アストロはアシドの温もりの消えた手をジッと見つめ、海につけた。
「プハァ」
中に空間がある。灯りがないので何も見えないが、音からしてかなり広いだろう。50~100m近い岸壁の中に、この空間が存在している。
完全に空間内に立ち上がったが、やはり何も見えない。自身の顎を撫でながら暗闇を見つめる。
「アストロとコストイラなら火を出して調べられるんだろうな」
自分ではどうしようもない壁にぶち当たり、アシドは引き返すことにした。綺麗なフォームで水の中に入り、アストロ達の元まで泳ぐ。
「海の中に遺跡があったぜ」
見えた姿はクラーケンだ。上半身が人間で下半身が烏賊の魔物だ。まさかレイド並みの筋肉とは思わなかった。
体勢を整えようと体を回転させる。ふと視界の端に入り口のようなものが見えた。あれは洞窟のような自然なものではなく、人工的な物だ。
(お城か?)
アシドは予測を立てたが、すぐに水面に向かって泳いだ。
上部からドブンと音が伝わり、泡が出現した。クラーケンが斧を構えながら潜ってきた。
水中での戦いは慣れである。自分の体のコントロールが陸上とはかなり違うため、百戦錬磨の冒険者でも簡単に、レベルが20以上下でも殺されてしまう。
アシドは海の男だ。しかも、これまでに何度も水中での戦いを制してきた猛者だ。それでも、毎回戦いは緊張する。
相手は水中のプロだ。下手を打てばそれで終わりだ。
クラーケンがその筋肉から繰り出した薙ぎをギリギリで躱す。生み出された水流に巻き込まれて流されてしまう。何とか手足をばたつかせ、動きを止める。
目の前にはすでにクラーケンがいた。下から斧が振り上げられる。何とか槍で防いだが、水の抵抗のせいで少しだけ遅れた。クラーケンの斧を利用して水面から顔を出す。素早く空気の補充をして、すぐに水中に戻っていく。
「アシド!」
「状況が見えねェ。波も泡も邪魔だな」
レイドとコストイラが目を凝らすが、アシドとクラーケンの様子が分からない。アレンはぐったりしていてアシドの方にまで気が回せない。アストロもぐったりしているが、右の指だけを海面につけて潮の流れを感じ取る。指先から分かる。アシドはまだ生きている。
プシと左腕から血が噴き出す。やはり水の中は動きづらい。武器が槍であることも動きづらさの一つだ。
長柄の槍はその分水の抵抗を感じる。先端に行くほど抵抗を大きく感じてしまう。おかげで対応が遅れてしまう。
頭の中にある映像通りに体が動いてくれない。クラーケンがいったん距離を置き、一気に距離を詰めてくる。アシドは最低限の動きだけで槍を構える。槍の形状を考えれば、水中であれば抵抗が少ないのは薙ぎよりも突きだ。アシドはクラーケンに槍を突き出す。踏ん張りがない状態での突きに、クラーケンが斧で防ごうとする。
しかし、突きの速さは振りの速さよりも速い。穂先が斧を擦り抜け、胸を突く。男が憧れる胸板の硬さに苦労するが何とか貫く。
槍を引き抜くと、クラーケンの胸から血が出てきてそのまま沈んでいく。
アシドは呼吸がきつくなってきたので、水面を目指す。
「プハァ」
「アシド」
肩で息を整えながら、差し出されたアストロの手を取る。
「そういえば、この先どこに行くんだ?」
手を握ったまま岩に上がらずにこの先へ行く場所を聞く。その答えはいくら待っても返ってこない。勇者一行はこれまでも無計画に進んできた。今だって何も考えていない。だから答えられない。
予想外に下に落ちてしまったため、本当に行く宛てがない。
「ちょっと待ってろ。探してくる」
アシドがアストロの手を離すと、海に沈んでいった。
「元気ね、アシド。私には無理だわ」
アストロはアシドの温もりの消えた手をジッと見つめ、海につけた。
「プハァ」
中に空間がある。灯りがないので何も見えないが、音からしてかなり広いだろう。50~100m近い岸壁の中に、この空間が存在している。
完全に空間内に立ち上がったが、やはり何も見えない。自身の顎を撫でながら暗闇を見つめる。
「アストロとコストイラなら火を出して調べられるんだろうな」
自分ではどうしようもない壁にぶち当たり、アシドは引き返すことにした。綺麗なフォームで水の中に入り、アストロ達の元まで泳ぐ。
「海の中に遺跡があったぜ」
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