メグルユメ
6.荒波の崖路
行きたい方向の崖が崩れている。ジャンプすれば何とかなるだろう。
戻るための方向も崩れている。先の道よりも崩れているので危ないだろう。
「前に進むしかないわね」
まだ本調子ではないアストロが、コストイラの背に負ぶわれながら、前を指さす。指の先では1人ぽつんと佇むアシドがいた。
「しゃぁねぇ。アストロ、しっかり掴まってろよ」
コストイラの言うことを素直に聞き、抱き着く力を強める。むぎゅりと豊かな胸がコストイラの背で潰れ、コストイラが耳を赤くする。
エンドローゼも負けじと背負ってくれているレイドに胸を押し付ける。しかし、悲しいかな。エンドローゼの胸は小さく、レイドは鎧を着込んでいた。
とある月の土地でフォンが崩れた。
『ごめん。そればっかりは私じゃどうにもならないんだ!!』
フォンが四つん這いで涙を流しながら床をドンドン叩いていた。流れが分かっていないディーノイは突然の奇行に白い目を向ける。流れが見えていないとはいえ、ディーノイはフォンの一番の理解者であるため、どうせあの淡紫色の少女のことでも考えているのだろうという予想を立てていた。
コストイラは背負っているアストロに気を遣いながら、岸壁の中にある出っ張った岩に手をかけ、壁を伝って向こう側まで移動し始める。
「落ちたら死ぬ」
「そんなこと言うなよ。本当に落ちるだろ」
アストロが本調子でないまま下を見て、顔を青くする。コストイラは伝うことに集中したいので竦めておく。レイドもコストイラの後を追って、エンドローゼを背負って岸壁を伝う。アレンは信じられない光景を見るように戦いている。
コストイラが無事にロッククライミングを成功させる。レイドも成功させるのを見て絶望する。アレンはここを越えることができない。
え、ここで旅は終了ですか?
アレンが泣きそうな顔をしていると、お姫様抱っこで抱えられる。上を見るとシキの顔があった。
やだ、かっこいい。
アレンはきゅんとした。
そんなアレンのことなど一切気付いていないシキが、助走をつけて大きく跳んだ。いつもより重い体だったにもかかわらず、無事向こう岸まで着いた。
唐突なことで恐怖を感じたアレンは強くシキに抱き着いた。シキは手を離しているにもかかわらず未だに離れず抱き着いたままだ。シキはどうすればいいのか分からず、助けを求めるようにアストロを見る。
アストロは面倒臭そうに溜息を吐いて、額に手を当てた。私に聞くな、と思いながらステイのハンドサインを出す。シキはアストロの言う通りに抱き着かれたままステイする。
ふと、アレンが正気に戻った。今のアレンは片思いをしている相手に抱き着いて密着している。シュバッとシキよりも速く離れ、顔を耳まで真っ赤にしている。
シキはなぜ顔を赤くしているのか分からず、可愛らしく小首を傾げた。
「よし、行こうぜ」
コストイラがアストロを下ろしながら先に行くことを提案する。アストロは気分の悪さを溜息として吐きながら、1人で待っていて寂しくなっていたアシドの肩を叩く。壁に向かって体育座りをしていたアシドが、槍を掴みながらゆっくりと立ち上がり、アストロの後を追った。
エンドローゼがレイドの背から下りると、顔を真っ赤にしながら小走りでついて行った。
しばらくの間歩いていると、道幅が広くなってきた。広くなってきたということはそれだけ魔物と戦いやすくなったということだろう。
駄目だ。考えの基準が戦うことになっている。
いつからだ? いつからアレン達はこんなに卑屈になった? 勇者に認定される前はこんなんじゃなかったはずだ。
いつからだ? いや、どこからだ? こんなに考えが傾いてきたのは?
アレンは仲間達を見る。足を鳴らして崖路の安全性を確かめたり、自身の武器に指を這わせたりしている。
駄目だ。皆も似たような思考なんだ。歩きやすいなぁとか、一段落しようとかではなく、戦いやすくなったとか、もっと大きな敵が出てくるかもしれないとか、そんなことを考えている。
この思考は狂っているのか?
狂っているのはどっちだ? アレンか? 皆か?
「どうした?」
「へぇ?」
いつも通り半眼のシキを見て固まった。もしかしてシキはいつも通りなのか? それとも中身はもう狂っているのか?
ザバーンと荒波が打ち寄せる音さえ耳に届かず、ただアレンは立ち尽くした。
戻るための方向も崩れている。先の道よりも崩れているので危ないだろう。
「前に進むしかないわね」
まだ本調子ではないアストロが、コストイラの背に負ぶわれながら、前を指さす。指の先では1人ぽつんと佇むアシドがいた。
「しゃぁねぇ。アストロ、しっかり掴まってろよ」
コストイラの言うことを素直に聞き、抱き着く力を強める。むぎゅりと豊かな胸がコストイラの背で潰れ、コストイラが耳を赤くする。
エンドローゼも負けじと背負ってくれているレイドに胸を押し付ける。しかし、悲しいかな。エンドローゼの胸は小さく、レイドは鎧を着込んでいた。
とある月の土地でフォンが崩れた。
『ごめん。そればっかりは私じゃどうにもならないんだ!!』
フォンが四つん這いで涙を流しながら床をドンドン叩いていた。流れが分かっていないディーノイは突然の奇行に白い目を向ける。流れが見えていないとはいえ、ディーノイはフォンの一番の理解者であるため、どうせあの淡紫色の少女のことでも考えているのだろうという予想を立てていた。
コストイラは背負っているアストロに気を遣いながら、岸壁の中にある出っ張った岩に手をかけ、壁を伝って向こう側まで移動し始める。
「落ちたら死ぬ」
「そんなこと言うなよ。本当に落ちるだろ」
アストロが本調子でないまま下を見て、顔を青くする。コストイラは伝うことに集中したいので竦めておく。レイドもコストイラの後を追って、エンドローゼを背負って岸壁を伝う。アレンは信じられない光景を見るように戦いている。
コストイラが無事にロッククライミングを成功させる。レイドも成功させるのを見て絶望する。アレンはここを越えることができない。
え、ここで旅は終了ですか?
アレンが泣きそうな顔をしていると、お姫様抱っこで抱えられる。上を見るとシキの顔があった。
やだ、かっこいい。
アレンはきゅんとした。
そんなアレンのことなど一切気付いていないシキが、助走をつけて大きく跳んだ。いつもより重い体だったにもかかわらず、無事向こう岸まで着いた。
唐突なことで恐怖を感じたアレンは強くシキに抱き着いた。シキは手を離しているにもかかわらず未だに離れず抱き着いたままだ。シキはどうすればいいのか分からず、助けを求めるようにアストロを見る。
アストロは面倒臭そうに溜息を吐いて、額に手を当てた。私に聞くな、と思いながらステイのハンドサインを出す。シキはアストロの言う通りに抱き着かれたままステイする。
ふと、アレンが正気に戻った。今のアレンは片思いをしている相手に抱き着いて密着している。シュバッとシキよりも速く離れ、顔を耳まで真っ赤にしている。
シキはなぜ顔を赤くしているのか分からず、可愛らしく小首を傾げた。
「よし、行こうぜ」
コストイラがアストロを下ろしながら先に行くことを提案する。アストロは気分の悪さを溜息として吐きながら、1人で待っていて寂しくなっていたアシドの肩を叩く。壁に向かって体育座りをしていたアシドが、槍を掴みながらゆっくりと立ち上がり、アストロの後を追った。
エンドローゼがレイドの背から下りると、顔を真っ赤にしながら小走りでついて行った。
しばらくの間歩いていると、道幅が広くなってきた。広くなってきたということはそれだけ魔物と戦いやすくなったということだろう。
駄目だ。考えの基準が戦うことになっている。
いつからだ? いつからアレン達はこんなに卑屈になった? 勇者に認定される前はこんなんじゃなかったはずだ。
いつからだ? いや、どこからだ? こんなに考えが傾いてきたのは?
アレンは仲間達を見る。足を鳴らして崖路の安全性を確かめたり、自身の武器に指を這わせたりしている。
駄目だ。皆も似たような思考なんだ。歩きやすいなぁとか、一段落しようとかではなく、戦いやすくなったとか、もっと大きな敵が出てくるかもしれないとか、そんなことを考えている。
この思考は狂っているのか?
狂っているのはどっちだ? アレンか? 皆か?
「どうした?」
「へぇ?」
いつも通り半眼のシキを見て固まった。もしかしてシキはいつも通りなのか? それとも中身はもう狂っているのか?
ザバーンと荒波が打ち寄せる音さえ耳に届かず、ただアレンは立ち尽くした。
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