メグルユメ
5.効かぬならそれ以上のダメージを与えればいいじゃない
グレートドラゴンの重みとシキの踵落としの威力によって崩れた崖路が、大小の岩石となって、その大きさに見合った水飛沫を上げて落ちていく。ディープドラゴンはここで攻撃しない。戦況を冷静に見極めるのだ。自分が今攻撃すべきなのはどれだ?
何とか背中を岸壁から剥がしたのだが、コストイラはしがみついたままだ。今、コストイラとアシドは危険な状態にいる。
グレートドラゴンが崖路を壊しながら落ちたせいで、着地点がなくなってしまったのだ。このまま落ちたら斜めになっている地面に着地することになり、転がるか滑るかの二択だろう。
助かるためにはこの岸壁を伝っていくしかない。コストイラは自慢の筋肉を活かしてレイド達の元に行こうと動き出した。
アストロが軽く頭を押さえながら立ち上がる。まだ頭がグワングワンしているので、岸壁に背を凭れさせている。
隣を見ると、アレンが気絶しており、エンドローゼに介抱されていた。少しイラついたので蹴ってやりたいが、エンドローゼに怒られそうなので止めておく。
半分も残っていない崖路から落ちないように注意しながら、ディープドラゴンを見る。
オレンジの瞳が何かを訴えようと動く。崖路が少し削れ、視線が通りやすくなっている。自分を射殺するようにこちらを見てくる女を先に殺すべきか、無防備に壁を伝って移動している男2人を殺すべきか。
アストロはキレた。ただ静かにキレた。自分のフィールドは遠距離しかない。それにもかかわらず、その遠距離でも相手にされない。使い勝手が良く、いつも使っている火魔術。テクニカルポイントが必要だが、結構気に入っている水魔術。両方とも威力があっても属性的に相性が悪く、余計に魔力を使ってしまう。
自分と一番相性のいい闇魔法。100mも離れていれば射程範囲外だ。
育ての親から教わった光魔術。育ての親と比べて明らかに見劣りする威力の光魔術が一番ダメージを与えられている。しかし、あと何発打てばいい。
アストロには才能がある。魔力を扱う才能が十分にある。
されどアストロは凡人である。血に恵まれず、ここまで高みに辿り着けたのは間違いなく才能の賜物だろう。学舎の中でも優秀な成績を修め、最終的に首席で卒業できたのも、才能が故だ。
しかし、アストロは天才ではない。凡人の中でもできる方というだけだ。学生時代に優秀だった者が、世界の優秀者というわけではない。
アストロは井の中の蛙だった。
ギリと奥歯を噛む。倦怠感が、吐き気が、眩暈が襲ってくるのも気にせず、ただ集中して、魔力を高める。
アストロには才能がある。凡人の範疇に収まってしまうほどの才能がある。
アストロには凡人の自覚がある。レイドのような確かな血統も、コストイラのような誰もが羨む才覚も、エンドローゼのような強力な力もない自覚がある。
だからこそアストロは努力するのだ。深く考察するのだ。じっと観察するのだ。教わった魔術を自分のものとし、自分なりの解釈を加え、自分の魔術へと昇華させるのだ。
イメージするのは自分の育ての親。一番古くから存在する家族の記憶。その”父”が放っていた雷の魔法。
ごっそりと体内の魔力が持っていかれる。空間内に存在する魔素が一気に体内に入ってくる。詰まりかけている、魔素を体内に取り込む器官がフル稼働している。魔力酔いが始まった。
全てを押し込めて、右の人差し指を向ける。
その隠す気もない、明らかすぎる殺気に、ディープドラゴンが反応する。反応したが、何かに絡めとられたかのように動けない。
一瞬右腕からバチリと青白い火花が散った。直後、右の人差し指から青白い雷が放射された。
雷がジグザグと曲がりながら海面を撃ち、ディープドラゴンを感電させると、次に直撃した。この時の威力は育ての親のそれを超えていただろう。
どこか糸が切れたようにアストロが崩れ落ちた。そのままの勢いで崖から落ちそうになり、その腕をコストイラが取った。
「死なせるかよ、アストロ」
コストイラは慎重にアストロを引き上げる。エンドローゼが慌ててアストロに駆け寄ろうとして、膝の上に置いていたアレンの頭を落とした。
「アデ!?」
気絶していたアレンが衝撃で目を覚ました。エンドローゼはぶつけた頭を押さえるアレンと、気絶してコストイラに支えられるアストロの間でわたわたしていた。
何とか背中を岸壁から剥がしたのだが、コストイラはしがみついたままだ。今、コストイラとアシドは危険な状態にいる。
グレートドラゴンが崖路を壊しながら落ちたせいで、着地点がなくなってしまったのだ。このまま落ちたら斜めになっている地面に着地することになり、転がるか滑るかの二択だろう。
助かるためにはこの岸壁を伝っていくしかない。コストイラは自慢の筋肉を活かしてレイド達の元に行こうと動き出した。
アストロが軽く頭を押さえながら立ち上がる。まだ頭がグワングワンしているので、岸壁に背を凭れさせている。
隣を見ると、アレンが気絶しており、エンドローゼに介抱されていた。少しイラついたので蹴ってやりたいが、エンドローゼに怒られそうなので止めておく。
半分も残っていない崖路から落ちないように注意しながら、ディープドラゴンを見る。
オレンジの瞳が何かを訴えようと動く。崖路が少し削れ、視線が通りやすくなっている。自分を射殺するようにこちらを見てくる女を先に殺すべきか、無防備に壁を伝って移動している男2人を殺すべきか。
アストロはキレた。ただ静かにキレた。自分のフィールドは遠距離しかない。それにもかかわらず、その遠距離でも相手にされない。使い勝手が良く、いつも使っている火魔術。テクニカルポイントが必要だが、結構気に入っている水魔術。両方とも威力があっても属性的に相性が悪く、余計に魔力を使ってしまう。
自分と一番相性のいい闇魔法。100mも離れていれば射程範囲外だ。
育ての親から教わった光魔術。育ての親と比べて明らかに見劣りする威力の光魔術が一番ダメージを与えられている。しかし、あと何発打てばいい。
アストロには才能がある。魔力を扱う才能が十分にある。
されどアストロは凡人である。血に恵まれず、ここまで高みに辿り着けたのは間違いなく才能の賜物だろう。学舎の中でも優秀な成績を修め、最終的に首席で卒業できたのも、才能が故だ。
しかし、アストロは天才ではない。凡人の中でもできる方というだけだ。学生時代に優秀だった者が、世界の優秀者というわけではない。
アストロは井の中の蛙だった。
ギリと奥歯を噛む。倦怠感が、吐き気が、眩暈が襲ってくるのも気にせず、ただ集中して、魔力を高める。
アストロには才能がある。凡人の範疇に収まってしまうほどの才能がある。
アストロには凡人の自覚がある。レイドのような確かな血統も、コストイラのような誰もが羨む才覚も、エンドローゼのような強力な力もない自覚がある。
だからこそアストロは努力するのだ。深く考察するのだ。じっと観察するのだ。教わった魔術を自分のものとし、自分なりの解釈を加え、自分の魔術へと昇華させるのだ。
イメージするのは自分の育ての親。一番古くから存在する家族の記憶。その”父”が放っていた雷の魔法。
ごっそりと体内の魔力が持っていかれる。空間内に存在する魔素が一気に体内に入ってくる。詰まりかけている、魔素を体内に取り込む器官がフル稼働している。魔力酔いが始まった。
全てを押し込めて、右の人差し指を向ける。
その隠す気もない、明らかすぎる殺気に、ディープドラゴンが反応する。反応したが、何かに絡めとられたかのように動けない。
一瞬右腕からバチリと青白い火花が散った。直後、右の人差し指から青白い雷が放射された。
雷がジグザグと曲がりながら海面を撃ち、ディープドラゴンを感電させると、次に直撃した。この時の威力は育ての親のそれを超えていただろう。
どこか糸が切れたようにアストロが崩れ落ちた。そのままの勢いで崖から落ちそうになり、その腕をコストイラが取った。
「死なせるかよ、アストロ」
コストイラは慎重にアストロを引き上げる。エンドローゼが慌ててアストロに駆け寄ろうとして、膝の上に置いていたアレンの頭を落とした。
「アデ!?」
気絶していたアレンが衝撃で目を覚ました。エンドローゼはぶつけた頭を押さえるアレンと、気絶してコストイラに支えられるアストロの間でわたわたしていた。
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