メグルユメ
4.天上の守り人
神に至る。王に至る。
それは簡単なことではない。特に前者はほぼ不可能であろう。ただの市民から王になったものはほぼおらず、その者は魔王とさえ呼ばれる。
ロイヤルガードとヴァルキリーはこの天界に存在する魔王を守護する”世話焼き”という軍の一員だ。上の命令を待たずに行動している血の気の多い連中だが、天界の魔王は関心が薄い。
かつては最も喧嘩っ早い者だったが、今は別のことにお熱だったのだ。とはいえ”世話焼き”は忠誠を誓っているので、愛想は尽かさず、任せたままだ。王が動かぬのなら我々が、という考えの者が多いせいでアレン達は現在の戦闘が始まってしまった。
シキがコストイラの横を抜き、躊躇なくナイフを振るう。高速の一閃はロイヤルガードの反応速度を超えており、楯も武器も擦り抜けて鎧の隙間にナイフを差し入れる。
ゾブリとナイフから肉の手応えが伝わり、そしてすぐに途絶える。ナイフが折れたのだ。シキは目を丸くしながら回転蹴りをして、折れたナイフを先端が見えなくなるほど刃を中に押し込む。
倒れたロイヤルガードが2,3度ビクビクと痙攣すると、動かなくなる。シキは砕けたナイフの柄を見つめながら、静かに焦った。え? 代えのナイフ無いんだけど?
「今の動き凄かったな。次の敵もいけ……あ……」
近づいてきたコストイラが、ナイフだったものを目撃する。コストイラの顔が引き攣る。コストイラもナイフに代えがないのを聞いているので、え? どうする? みたいな顔でシキを見る。シキは無表情でブルブルと震えていた。策が一切ないらしい。
「ま、街までは爆弾と格闘で何とかするしかないな」
「ん、ん?」
コストイラが震えながら案を出す。シキも震えながら頷く。流石のシキも動揺しているようだ。とにかく、まずは皆と合流しようとすると、ガササと叢が揺れた。2名は腰を落としながら叢を見つめる。え? 合流前にもう一戦?
叢から出てきたのはコストイラと同じ身長をした魔物で、見た目は小さくしたヴァルキリーだ。今は見えないが背中から翼が生えてくるかもしれない。ロイヤルガードのような丸盾とバルキリーのようなサーベルを持っている。シキとコストイラは一瞬目を合わせ、すぐに小ヴァルキリーと対峙する。
雄大の飛ぶヴァルキリーへの連撃が一向に当たらない。羽を落としながら翼を羽ばたかせ、魔術も矢も躱していく。
5mの大きさがあるとは思えないほど機敏に動く。ヴァルキリーが右手から左手にサーベルを持ち替えて、溜め始める。もう一度あの貫通力のある技が来る。どう避けたらいいのか分からず、ただ見つめるしかできない。
剣先が揺れている。どこに向けて撃つのかが決まっていないのだろう。その剣先がピタリと止まる。その剣先にいるのはエンドローゼか。
レイドはエンドローゼにタックルするように飛びつき、守るように胸の中にしまい込む。そのまま森の中に逃げ込もうとする。
ブシュッと左腕から血が噴き出した。ヴァルキリーの顔が、姿勢の変わらないままに左腕を見る。視界の端、左腕の上に蒼髪の青年がいた。血の尾を引く槍の穂先を見る限り、今自分は刺されたのだ。
大丈夫だ。このまま左腕を突き出すように伸ばせば、この青年は空中に取り残される。放置すればいい。
その一瞬もかかった思考時間にレイドは木々に隠れていた。剣をどこに向ければいい。紫色も茶色ももう見えない。森のどこを狙えばいい。
迷う時間を利用され、左腕の青年が槍を何度も振り下ろす。ヴァルキリーの左腕から幾線もの血の線が表される。
駄目だ。先に左腕の青年から何とかするべきだ。ヴァルキリーは右手を青年に向ける。アシドは左腕から右手に飛び移る。右腕にも槍を刺す。
抜きながらヴァルキリーの腕を上っていく。ヴァルキリーは嫌がり、体を揺すったり一回転したりなど、縦横無尽に動き回り青年を落とそうとする。
そのたびに槍を刺しやり過ごし、何とか背中にまで辿り着く。そして、槍を振るい、翼の一方だけを傷付ける。
翼の対称性が崩れ、ヴァルキリーの体が落ちる。背が地面を向き、天に手を伸ばすが、その手を誰も掴まない。
アシドはヴァルキリーの背を蹴り、一早く着地する。着地と同時に膝を曲げ両手も着き、両腕も肘を曲げる。威力を逃がしたつもりだったが、体に衝撃が走り、血を吐きそうになる。
上からヴァルキリーが降ってくる。5mの大きさに相応しい質量のあるヴァルキリーだ。あの重さが降ってくればひとたまりもないだろう。
他の者達は距離があるので助けてくれるのはアシド自身しかいない。何とか肘と膝を伸ばし、ヴァルキリーから逃れる。
ドガンとヴァルキリーの体が地面に激突する。衝撃により地面が罅割れる。何とか起き上がろうとするが、脳震盪を起こしているのか成功しない。
レイドが森の中から出現する。回転しながらジャンプし、大剣を断頭台のギロチンのように振り下ろす。避けようともヴァルキリーの体は動かない。大剣の刃が首を切り飛ばした。
それは簡単なことではない。特に前者はほぼ不可能であろう。ただの市民から王になったものはほぼおらず、その者は魔王とさえ呼ばれる。
ロイヤルガードとヴァルキリーはこの天界に存在する魔王を守護する”世話焼き”という軍の一員だ。上の命令を待たずに行動している血の気の多い連中だが、天界の魔王は関心が薄い。
かつては最も喧嘩っ早い者だったが、今は別のことにお熱だったのだ。とはいえ”世話焼き”は忠誠を誓っているので、愛想は尽かさず、任せたままだ。王が動かぬのなら我々が、という考えの者が多いせいでアレン達は現在の戦闘が始まってしまった。
シキがコストイラの横を抜き、躊躇なくナイフを振るう。高速の一閃はロイヤルガードの反応速度を超えており、楯も武器も擦り抜けて鎧の隙間にナイフを差し入れる。
ゾブリとナイフから肉の手応えが伝わり、そしてすぐに途絶える。ナイフが折れたのだ。シキは目を丸くしながら回転蹴りをして、折れたナイフを先端が見えなくなるほど刃を中に押し込む。
倒れたロイヤルガードが2,3度ビクビクと痙攣すると、動かなくなる。シキは砕けたナイフの柄を見つめながら、静かに焦った。え? 代えのナイフ無いんだけど?
「今の動き凄かったな。次の敵もいけ……あ……」
近づいてきたコストイラが、ナイフだったものを目撃する。コストイラの顔が引き攣る。コストイラもナイフに代えがないのを聞いているので、え? どうする? みたいな顔でシキを見る。シキは無表情でブルブルと震えていた。策が一切ないらしい。
「ま、街までは爆弾と格闘で何とかするしかないな」
「ん、ん?」
コストイラが震えながら案を出す。シキも震えながら頷く。流石のシキも動揺しているようだ。とにかく、まずは皆と合流しようとすると、ガササと叢が揺れた。2名は腰を落としながら叢を見つめる。え? 合流前にもう一戦?
叢から出てきたのはコストイラと同じ身長をした魔物で、見た目は小さくしたヴァルキリーだ。今は見えないが背中から翼が生えてくるかもしれない。ロイヤルガードのような丸盾とバルキリーのようなサーベルを持っている。シキとコストイラは一瞬目を合わせ、すぐに小ヴァルキリーと対峙する。
雄大の飛ぶヴァルキリーへの連撃が一向に当たらない。羽を落としながら翼を羽ばたかせ、魔術も矢も躱していく。
5mの大きさがあるとは思えないほど機敏に動く。ヴァルキリーが右手から左手にサーベルを持ち替えて、溜め始める。もう一度あの貫通力のある技が来る。どう避けたらいいのか分からず、ただ見つめるしかできない。
剣先が揺れている。どこに向けて撃つのかが決まっていないのだろう。その剣先がピタリと止まる。その剣先にいるのはエンドローゼか。
レイドはエンドローゼにタックルするように飛びつき、守るように胸の中にしまい込む。そのまま森の中に逃げ込もうとする。
ブシュッと左腕から血が噴き出した。ヴァルキリーの顔が、姿勢の変わらないままに左腕を見る。視界の端、左腕の上に蒼髪の青年がいた。血の尾を引く槍の穂先を見る限り、今自分は刺されたのだ。
大丈夫だ。このまま左腕を突き出すように伸ばせば、この青年は空中に取り残される。放置すればいい。
その一瞬もかかった思考時間にレイドは木々に隠れていた。剣をどこに向ければいい。紫色も茶色ももう見えない。森のどこを狙えばいい。
迷う時間を利用され、左腕の青年が槍を何度も振り下ろす。ヴァルキリーの左腕から幾線もの血の線が表される。
駄目だ。先に左腕の青年から何とかするべきだ。ヴァルキリーは右手を青年に向ける。アシドは左腕から右手に飛び移る。右腕にも槍を刺す。
抜きながらヴァルキリーの腕を上っていく。ヴァルキリーは嫌がり、体を揺すったり一回転したりなど、縦横無尽に動き回り青年を落とそうとする。
そのたびに槍を刺しやり過ごし、何とか背中にまで辿り着く。そして、槍を振るい、翼の一方だけを傷付ける。
翼の対称性が崩れ、ヴァルキリーの体が落ちる。背が地面を向き、天に手を伸ばすが、その手を誰も掴まない。
アシドはヴァルキリーの背を蹴り、一早く着地する。着地と同時に膝を曲げ両手も着き、両腕も肘を曲げる。威力を逃がしたつもりだったが、体に衝撃が走り、血を吐きそうになる。
上からヴァルキリーが降ってくる。5mの大きさに相応しい質量のあるヴァルキリーだ。あの重さが降ってくればひとたまりもないだろう。
他の者達は距離があるので助けてくれるのはアシド自身しかいない。何とか肘と膝を伸ばし、ヴァルキリーから逃れる。
ドガンとヴァルキリーの体が地面に激突する。衝撃により地面が罅割れる。何とか起き上がろうとするが、脳震盪を起こしているのか成功しない。
レイドが森の中から出現する。回転しながらジャンプし、大剣を断頭台のギロチンのように振り下ろす。避けようともヴァルキリーの体は動かない。大剣の刃が首を切り飛ばした。
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