メグルユメ
1.階段の先にあるものは
かつて、初代勇者”英雄”ジョコンドが更新するまで、世界最高レベルはレインレインの62だった。この男は世界に10本しかない魔剣を打ったことで有名だが、もう一つ偉業がある。最初に最高レベルに到達してから約300年間もの間も更新されずにいたのだ。
そのレインレインが言った。人間の足は工学上の最高傑作である。
人間の足は通常の獣に比べて踵が肥大化しているらしい。歩く時に踵から接地する。その瞬間は全体重が踵に集中しており、それを支えるために肥大化したのだとか。
さらに、多くの骨によって構築された足の構造は土踏まずのあたりでアーチ状になっている。その部分が衝撃を吸収したり、次の足を踏み出すための力となるらしい。
成る程とアレンも思う。素晴らしい考えだとアレンも思う。しかし、と。アレンは靴を脱ぎ、晒した素足の土踏まずを押しながら考える。
しかし、吸収する衝撃にも限界はあるのだろう、と。
「マジで何段上ってきたし」
コストイラも階段に座り込み、これまでに上ってきた道を眺めている。すでに道は雲の上にまで来ているので、奈落を見ることができない。
「1000からは数えるのを止めたわ」
アストロは自身の腰をトントンと叩きながら背を伸ばしている。背を反らしながら階段の上を見る。
「まぁでも、あと150段くらいか」
ここまで所要時間、休憩込みで約2日。主な原因は今まさにレイドに背負われているエンドローゼだろう。階段に躓いて足首を捻ってしまった。
「ま、階段はきつかったけど。魔物が出てこないってのは楽で新鮮でよかった」
そう、ここはコストイラの言う通り魔物が出てこなかった。境目果ての温泉といい、奈落の闘技場周辺といい、勇者ゆかりのある場所には魔物が寄り付かない。何か特別なことでもあるのだろうか。
「そろそろ行きましょうか」
考えても分からないものは置いておいて、今は先に進むことに集中しよう。アレン達は自身の足で階段を上がっていく。雲の層を抜けると、数週間ぶりに太陽を拝むことができた。階段を上り切ると、そこには色鮮やかな森や山が広がっていた。
「き、綺麗」
最後の150段を自力で上ったエンドローゼが最後にその言葉を残し、力尽きた。
「今日はもう進まずに休みましょうか」
「休めるほどの体力もないけど、どうすんの?」
「…………が、頑張りましょう」
倒れるエンドローゼを見つめるアストロとアレンだが、実は両者と共にエンドローゼと同じように倒れてしまいそうな体力なのだが、プライドがそうさせない。
体力があるコストイラやレイドもすでに尻を土に付けている。もう動く気がない。
「もう階段の外にいるんだ。いつ魔物が襲ってきてもおかしくねェ。でも誰も体力が残ってねェぞ。どうする」
「仕方ないので階段まで戻って寝ましょう。最後のひと踏ん張りです。死にますよ」
「嫌な鼓舞だな」
コストイラがのそりと立ち上がる。尻の砂を払う気力すらない。エンドローゼも一人でのらりくらりと階段に向かった。意外とエンドローゼって体力あるな、などと見守っているが、アレンが動けない。
アレンが何とか気力を振り絞ろうとする前に一度振り返る。とりあえず、明日から目指すのはあの山だろう。
そのレインレインが言った。人間の足は工学上の最高傑作である。
人間の足は通常の獣に比べて踵が肥大化しているらしい。歩く時に踵から接地する。その瞬間は全体重が踵に集中しており、それを支えるために肥大化したのだとか。
さらに、多くの骨によって構築された足の構造は土踏まずのあたりでアーチ状になっている。その部分が衝撃を吸収したり、次の足を踏み出すための力となるらしい。
成る程とアレンも思う。素晴らしい考えだとアレンも思う。しかし、と。アレンは靴を脱ぎ、晒した素足の土踏まずを押しながら考える。
しかし、吸収する衝撃にも限界はあるのだろう、と。
「マジで何段上ってきたし」
コストイラも階段に座り込み、これまでに上ってきた道を眺めている。すでに道は雲の上にまで来ているので、奈落を見ることができない。
「1000からは数えるのを止めたわ」
アストロは自身の腰をトントンと叩きながら背を伸ばしている。背を反らしながら階段の上を見る。
「まぁでも、あと150段くらいか」
ここまで所要時間、休憩込みで約2日。主な原因は今まさにレイドに背負われているエンドローゼだろう。階段に躓いて足首を捻ってしまった。
「ま、階段はきつかったけど。魔物が出てこないってのは楽で新鮮でよかった」
そう、ここはコストイラの言う通り魔物が出てこなかった。境目果ての温泉といい、奈落の闘技場周辺といい、勇者ゆかりのある場所には魔物が寄り付かない。何か特別なことでもあるのだろうか。
「そろそろ行きましょうか」
考えても分からないものは置いておいて、今は先に進むことに集中しよう。アレン達は自身の足で階段を上がっていく。雲の層を抜けると、数週間ぶりに太陽を拝むことができた。階段を上り切ると、そこには色鮮やかな森や山が広がっていた。
「き、綺麗」
最後の150段を自力で上ったエンドローゼが最後にその言葉を残し、力尽きた。
「今日はもう進まずに休みましょうか」
「休めるほどの体力もないけど、どうすんの?」
「…………が、頑張りましょう」
倒れるエンドローゼを見つめるアストロとアレンだが、実は両者と共にエンドローゼと同じように倒れてしまいそうな体力なのだが、プライドがそうさせない。
体力があるコストイラやレイドもすでに尻を土に付けている。もう動く気がない。
「もう階段の外にいるんだ。いつ魔物が襲ってきてもおかしくねェ。でも誰も体力が残ってねェぞ。どうする」
「仕方ないので階段まで戻って寝ましょう。最後のひと踏ん張りです。死にますよ」
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