メグルユメ
11.原初の魔龍
その者はただのそりと首を擡げた。
その視線の先には泉があった。
その泉には奈落の様子が映っていた。
その者は泉を覗いた。
その泉を通して奈落を見た。
その泉からは闘技場で盛り上がる観客と、そこで闘う者の声が聞こえてきた。
その者の視線は退屈そうに外へとズレた。
その者の興味は別にあった。
その泉はその者の興味に呼応するように映す場所が変わった。
その映る場所が森、腐界と変わり、その先で止まった。
その者の一つ眼が僅かに見開いた。
その場にいたのは一人のメスとその仲間。
その場にいたのは一体のメスとその従者。
その両陣営のぶつかり合い。
その者が僅かに口を開いた。
『ここまで勇者が来たのか』
その者はたった一つしかない目を瞬かせ、開戦の宣言を聞き届けた。
いくら世界広しと言えど、原初と呼ばれるのは一人と一匹しかいない。魔王と魔龍だ。両者はすべての魔王、すべての龍の祖と言われている。
原初の魔王グレイソレアはいつから存在しているのか分かっていない。しかし、月に住まう魔王フォンが、一番最初の魔王はグレイソレアだという証言を残している。
原初の魔龍はカオスドラゴンであるとされている。そこに異を唱える者は少ない。しかし、問題はその伝説にあった。すべての龍の祖だとするのなら、カオスドラゴンと龍神は同一視されるドラゴンなのかどうかにかかわる。
しかし、そんな醜い争いなど知る由もないカオスドラゴンは今日も元気に奈落で暮らしている。
開戦の合図がなされた。その瞬間、今までの静観が嘘のようにブラックドラゴン達が動きだす。黒い波に一瞬気圧されるが、コストイラは至極冷静に刀を構えた。
「天之五閃を目指しているのに、こんなんでビビッてどうすんだ。正面からぶっちぎる」
覚悟の決まった侍がドラゴンの頭を斬る。覚悟など決めなくても戦うシキは丁寧に目を刳り抜き首を刈る。他の者達も戦いを強いられる。強力な断裂をぶつけ、剛力は横薙ぎを当て、暴力的な魔術を浴びせる。
多くの竜が次々と死していく。それでもなお数が減っているように見えない。間違いない。これはパレードだ。原因はおそらく闇に同化しかけている竜のパレードだ。
「コストイラ、シキ。道は開けてあげる。早く終わらせて」
「よっしゃ!」
「ん」
アストロの言葉に2人が反応する。大質量の水が大量のドラゴンを押し流す。その瞬間開いた道に無理矢理コストイラが体をねじ込む。
走り寄ってくるコストイラに気付いたカオスドラゴンは、家の柱ほどもありそうな前足を踏み鳴らす。地面が震動して、コストイラの視線がガクンと下がった。
最初、先ほどのアストロの水で地面がぬかるんだのかと思った。しかし、違った。水が飛来しなかった部分までぬかるんでいる。これはカオスドラゴン側の攻撃だ。
灯りの少ない空間に光源が発生する。場所はカオスドラゴンの口の中。間違いない。ブレスだ。判断した時にはもう遅い。カオスドラゴンの口からブレスが吐き出されていた。たかだか刀1本でブレスが弾けるはずがなく、コストイラはブレスに巻き込まれた。射線上にいたブラックドラゴンごとブレスが放たれた。
その視線の先には泉があった。
その泉には奈落の様子が映っていた。
その者は泉を覗いた。
その泉を通して奈落を見た。
その泉からは闘技場で盛り上がる観客と、そこで闘う者の声が聞こえてきた。
その者の視線は退屈そうに外へとズレた。
その者の興味は別にあった。
その泉はその者の興味に呼応するように映す場所が変わった。
その映る場所が森、腐界と変わり、その先で止まった。
その者の一つ眼が僅かに見開いた。
その場にいたのは一人のメスとその仲間。
その場にいたのは一体のメスとその従者。
その両陣営のぶつかり合い。
その者が僅かに口を開いた。
『ここまで勇者が来たのか』
その者はたった一つしかない目を瞬かせ、開戦の宣言を聞き届けた。
いくら世界広しと言えど、原初と呼ばれるのは一人と一匹しかいない。魔王と魔龍だ。両者はすべての魔王、すべての龍の祖と言われている。
原初の魔王グレイソレアはいつから存在しているのか分かっていない。しかし、月に住まう魔王フォンが、一番最初の魔王はグレイソレアだという証言を残している。
原初の魔龍はカオスドラゴンであるとされている。そこに異を唱える者は少ない。しかし、問題はその伝説にあった。すべての龍の祖だとするのなら、カオスドラゴンと龍神は同一視されるドラゴンなのかどうかにかかわる。
しかし、そんな醜い争いなど知る由もないカオスドラゴンは今日も元気に奈落で暮らしている。
開戦の合図がなされた。その瞬間、今までの静観が嘘のようにブラックドラゴン達が動きだす。黒い波に一瞬気圧されるが、コストイラは至極冷静に刀を構えた。
「天之五閃を目指しているのに、こんなんでビビッてどうすんだ。正面からぶっちぎる」
覚悟の決まった侍がドラゴンの頭を斬る。覚悟など決めなくても戦うシキは丁寧に目を刳り抜き首を刈る。他の者達も戦いを強いられる。強力な断裂をぶつけ、剛力は横薙ぎを当て、暴力的な魔術を浴びせる。
多くの竜が次々と死していく。それでもなお数が減っているように見えない。間違いない。これはパレードだ。原因はおそらく闇に同化しかけている竜のパレードだ。
「コストイラ、シキ。道は開けてあげる。早く終わらせて」
「よっしゃ!」
「ん」
アストロの言葉に2人が反応する。大質量の水が大量のドラゴンを押し流す。その瞬間開いた道に無理矢理コストイラが体をねじ込む。
走り寄ってくるコストイラに気付いたカオスドラゴンは、家の柱ほどもありそうな前足を踏み鳴らす。地面が震動して、コストイラの視線がガクンと下がった。
最初、先ほどのアストロの水で地面がぬかるんだのかと思った。しかし、違った。水が飛来しなかった部分までぬかるんでいる。これはカオスドラゴン側の攻撃だ。
灯りの少ない空間に光源が発生する。場所はカオスドラゴンの口の中。間違いない。ブレスだ。判断した時にはもう遅い。カオスドラゴンの口からブレスが吐き出されていた。たかだか刀1本でブレスが弾けるはずがなく、コストイラはブレスに巻き込まれた。射線上にいたブラックドラゴンごとブレスが放たれた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
5
-
-
1980
-
-
361
-
-
2813
-
-
93
-
-
76
-
-
27026
-
-
2288
-
-
35
コメント