メグルユメ
4.研究者の森
アレン達が絶望的な状況なのは変わらない。いくら凶暴な雷獣の脅威を避けようが、いくらアレンの耳が手で無造作に破ったルーズリーフのようにボロボロのようになろうと、灯りが自分たちの周りにないのは変わらない。
「次進む道を勘ででもいいから決めるか。もしくはあの巨大な金仮面を追うかのどっちかだ」
コストイラは究極の2択でも出題するかのように提案する。その金仮面を見ていないアストロとシキは首を傾げる。シンクロ率200%である。
「何その金仮面って」
「さっきの男と遭う前にいたんだよ。2,3体の死体を持ってどっか行っちまってな。正体はオレ達も分かんねェ」
「けど、それしかヒントがないんでしょ? 行くしかないんじゃない?」
アストロはどっちに金仮面がいなくなったのか分からないので、キョロキョロと周辺を見渡す。コストイラがいなくなった方を指さす。
「いなくなったのはあっちだ。途中で道を変えたって構わねェだろ」
コストイラは頭をガリガリと掻いて、鼻息を荒くしている。アレンは追いかければ碌な目に遭わないだろうことは想像できた。しかし、だからといって別の案が出せるわけではないので、素直に従っておくことにする。
アストロの爪に火が灯ったまま、先ほどコストイラが指さした方へ移動していく。本当に光源がない。頼りの炎が頼りないので、いつも先頭を行くアシドとコストイラでさえ、前に出ようとしない。
「何かいる」
「金仮面か?」
「いや、違う。オレ等より小せェ」
暗闇で感覚が極限まで研ぎ澄まされているのか、誰より早く、敵を捕捉する。
「火は消すべき?」
「いや、むしろ囮に使おう。ゆっくりと飛ばせるか?」
「了解」
ゆっくりと炎が爪から離れ、ゆらゆらと揺れながら前に進む。
「敵は?」
「動かねェ。ただ、多分炎を見てる」
しかし、すぐさまコストイラ自身が否定する。
「やっぱりこっち見てんな」
「炎に惑わされていない?」
「もしかしたら、視覚でものを見ていないのかもな」
影に潜む何かは杖を振るう。唯一見えているコストイラが刀を抜き、何かを弾く。刀と当たり、何かが砕け、アレン達の頬に当たる。
「水、いや、氷?」
濡れた頬を指で拭い、何かを類推する。水が飛んできたということは、これは攻撃を受けたということだろうか。
「逃げて行ったぞ」
「何だったんだ?」
コストイラが敵の状況を確認すると、アシドが疑問を呈する。それに対する答えは誰も持ち合わせておらず、沈黙が返ってくる。アレンにはそれ以上の疑問があった。
「何でこの暗闇でそんなに見えるんですか?」
「……オレは闇に愛されているからな」
これはあれか? イタイ発言か?
再び火を着けて歩いていると、森が見えてきた。いや、これは森と呼ぶにはあまりにも冷たく、無機質なものだ。加工された10m大の石柱だらけの場所だ。ところどころにランタンが灯っている。明らかに人工的な森だ。
アストロは爪の先に灯していた炎を消し、石森に足を踏み入れる。
『誰だお前等』
しばらく歩いた先で声をかけられた。瞼をまつり縫いにしたハイウィザードだ。しかし、しっかりとこちらを向いている。この状態でも見えているのだろうか。
『ん? 待て、お前等は目が開いているのか?』
「え? そりゃもちろん」
アレンは自分の発言を悔いた。相手は最初から目が見えていなかったわけではなく、わざわざ自分から目を縫っているのだ。訳がない、はずがない。しかも、そんな相手が、視覚ある者を誘うように火を焚いているのだ。もっと周囲に気を張っておくべきだった。
超人的速度で手が伸ばされ、アレンの頭が掴まれる。
「え?」
間抜けた声が出たせいで、アレンは自分の愚かさに気付いたが、もう遅い。ハイウィザードの手から魔力が飛び出す。その直前、経路が途切れる。真上からシキがナイフを突き立てたのだ。ハイウィザードの腕が派手に折れ、肘が爆発し、オレンジと黒の混じった煙が吐き出される。
ハイウィザードが拳を握る。振ってきた少女もろとも殴り飛ばそうというのだ。
グリッとナイフが捻じられ、ハイウィザードの体勢が崩れる。シキは脛を首の裏に当て、ハイウィザードを地に伏せさせる。
アレンがようやく脱出する。掴まれた時に痛めたのか、頬を押さえている。
『食らっ』
ハイウィザードが何かする前に首にナイフを入れ、一気に切り開く。易々とハイウィザードは絶命した。
「自分から目を縫うなんて正気を疑うぜ。何でこんなことを」
「何か怪しい宗教の匂いがすんな」
コストイラが向いた先には、肌色が90%を占めるゾンビのような奴がいた。
『ヴァア』
急に走り出したかと思えば膝が崩れ、その姿勢のまま腕を振るう。アシドは槍を振るい、腕を弾く。腕は何回も回転し、千切れ飛んだ。槍をそのまま一回転させるようにして、ゾンビの顎を弾いた。顎は砕け、歯がバラバラと宙を舞い、地面に落ちる。
ゾンビがギギギと動きだす。その動きを不審に思い、アシドが少し距離を置く。ゾンビがガクガクと震えだし、そして爆発した。
ビチャリと肉片を頬につけ、アシドが固まる。え? 自爆? 何で?
ヌゥと7m大の巨体が現れる。それは肉の海で見かけた金仮面だ。
『爆発したか。実験は失敗だ。何がいけなかったのだ』
金仮面の大きな手がグズグズの肉塊になったゾンビを掴む。その間もぶつぶつと何かを言っている。金仮面は唐突にアレン達の方を向いた。
『そうか。邪魔が入ったからか』
アレン達の背筋が凍った。
本能が言っている。この金仮面は危険だと。
『ヴァア』
焦点の合わぬ目をした少女は意味もなく声を出した。
「フゥ」
白髪を風になびかせる少女は左目の眼帯を掻きながら声を出した。
「ハァ」
手入れのされていない髪の男は瓢箪から口を離し声を出した。
「ホゥ」
赤く太い腕を掻く男は温泉の気持ちよさに自然と声を出した。
「次進む道を勘ででもいいから決めるか。もしくはあの巨大な金仮面を追うかのどっちかだ」
コストイラは究極の2択でも出題するかのように提案する。その金仮面を見ていないアストロとシキは首を傾げる。シンクロ率200%である。
「何その金仮面って」
「さっきの男と遭う前にいたんだよ。2,3体の死体を持ってどっか行っちまってな。正体はオレ達も分かんねェ」
「けど、それしかヒントがないんでしょ? 行くしかないんじゃない?」
アストロはどっちに金仮面がいなくなったのか分からないので、キョロキョロと周辺を見渡す。コストイラがいなくなった方を指さす。
「いなくなったのはあっちだ。途中で道を変えたって構わねェだろ」
コストイラは頭をガリガリと掻いて、鼻息を荒くしている。アレンは追いかければ碌な目に遭わないだろうことは想像できた。しかし、だからといって別の案が出せるわけではないので、素直に従っておくことにする。
アストロの爪に火が灯ったまま、先ほどコストイラが指さした方へ移動していく。本当に光源がない。頼りの炎が頼りないので、いつも先頭を行くアシドとコストイラでさえ、前に出ようとしない。
「何かいる」
「金仮面か?」
「いや、違う。オレ等より小せェ」
暗闇で感覚が極限まで研ぎ澄まされているのか、誰より早く、敵を捕捉する。
「火は消すべき?」
「いや、むしろ囮に使おう。ゆっくりと飛ばせるか?」
「了解」
ゆっくりと炎が爪から離れ、ゆらゆらと揺れながら前に進む。
「敵は?」
「動かねェ。ただ、多分炎を見てる」
しかし、すぐさまコストイラ自身が否定する。
「やっぱりこっち見てんな」
「炎に惑わされていない?」
「もしかしたら、視覚でものを見ていないのかもな」
影に潜む何かは杖を振るう。唯一見えているコストイラが刀を抜き、何かを弾く。刀と当たり、何かが砕け、アレン達の頬に当たる。
「水、いや、氷?」
濡れた頬を指で拭い、何かを類推する。水が飛んできたということは、これは攻撃を受けたということだろうか。
「逃げて行ったぞ」
「何だったんだ?」
コストイラが敵の状況を確認すると、アシドが疑問を呈する。それに対する答えは誰も持ち合わせておらず、沈黙が返ってくる。アレンにはそれ以上の疑問があった。
「何でこの暗闇でそんなに見えるんですか?」
「……オレは闇に愛されているからな」
これはあれか? イタイ発言か?
再び火を着けて歩いていると、森が見えてきた。いや、これは森と呼ぶにはあまりにも冷たく、無機質なものだ。加工された10m大の石柱だらけの場所だ。ところどころにランタンが灯っている。明らかに人工的な森だ。
アストロは爪の先に灯していた炎を消し、石森に足を踏み入れる。
『誰だお前等』
しばらく歩いた先で声をかけられた。瞼をまつり縫いにしたハイウィザードだ。しかし、しっかりとこちらを向いている。この状態でも見えているのだろうか。
『ん? 待て、お前等は目が開いているのか?』
「え? そりゃもちろん」
アレンは自分の発言を悔いた。相手は最初から目が見えていなかったわけではなく、わざわざ自分から目を縫っているのだ。訳がない、はずがない。しかも、そんな相手が、視覚ある者を誘うように火を焚いているのだ。もっと周囲に気を張っておくべきだった。
超人的速度で手が伸ばされ、アレンの頭が掴まれる。
「え?」
間抜けた声が出たせいで、アレンは自分の愚かさに気付いたが、もう遅い。ハイウィザードの手から魔力が飛び出す。その直前、経路が途切れる。真上からシキがナイフを突き立てたのだ。ハイウィザードの腕が派手に折れ、肘が爆発し、オレンジと黒の混じった煙が吐き出される。
ハイウィザードが拳を握る。振ってきた少女もろとも殴り飛ばそうというのだ。
グリッとナイフが捻じられ、ハイウィザードの体勢が崩れる。シキは脛を首の裏に当て、ハイウィザードを地に伏せさせる。
アレンがようやく脱出する。掴まれた時に痛めたのか、頬を押さえている。
『食らっ』
ハイウィザードが何かする前に首にナイフを入れ、一気に切り開く。易々とハイウィザードは絶命した。
「自分から目を縫うなんて正気を疑うぜ。何でこんなことを」
「何か怪しい宗教の匂いがすんな」
コストイラが向いた先には、肌色が90%を占めるゾンビのような奴がいた。
『ヴァア』
急に走り出したかと思えば膝が崩れ、その姿勢のまま腕を振るう。アシドは槍を振るい、腕を弾く。腕は何回も回転し、千切れ飛んだ。槍をそのまま一回転させるようにして、ゾンビの顎を弾いた。顎は砕け、歯がバラバラと宙を舞い、地面に落ちる。
ゾンビがギギギと動きだす。その動きを不審に思い、アシドが少し距離を置く。ゾンビがガクガクと震えだし、そして爆発した。
ビチャリと肉片を頬につけ、アシドが固まる。え? 自爆? 何で?
ヌゥと7m大の巨体が現れる。それは肉の海で見かけた金仮面だ。
『爆発したか。実験は失敗だ。何がいけなかったのだ』
金仮面の大きな手がグズグズの肉塊になったゾンビを掴む。その間もぶつぶつと何かを言っている。金仮面は唐突にアレン達の方を向いた。
『そうか。邪魔が入ったからか』
アレン達の背筋が凍った。
本能が言っている。この金仮面は危険だと。
『ヴァア』
焦点の合わぬ目をした少女は意味もなく声を出した。
「フゥ」
白髪を風になびかせる少女は左目の眼帯を掻きながら声を出した。
「ハァ」
手入れのされていない髪の男は瓢箪から口を離し声を出した。
「ホゥ」
赤く太い腕を掻く男は温泉の気持ちよさに自然と声を出した。
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