メグルユメ
2.落ちて 落ちて また落ちて
高い位置から落ちていく感覚は、恐怖と不安の他に、懐かしささえ覚えた。五重の塔を攻略した時だ。
あの時もこうして落ちたが、あの時は水があったからこそ助かったようなものだ。今回は下に何があるのかを知らない。
何かに腕を引っ張られる。コストイラだ。
「お前の眼で何か見えねェのか!?」
ハッとしたアレンが瞳に魔力を込めようとするが、その前に下に着いたようで何かに突っ込んだ。感触からして何かは粘性の高い液体と固体の中間の何かのようだ。外に出ようともがくが、掌には高い抵抗を感じる。
「プハァ」
コストイラも顔を出す。光源が心許ないので、シルエットでしか分からない。
「やばいな。これ全部肉と血だ」
「え?」
何とか腕を引っこ抜き、自分の手をジッと見る。目を凝らすと、自分の手に握られていたのは根元の引き千切られた指だった。
「うっ」
「黙れ。ここには何がいるのか分からないんだ。集めるような真似すんじゃねェよ」
悲鳴を封じられ、暗闇で何も見えないコストイラの顔でも強い圧迫感があった。
「それより、アレン。オレ等以外の奴がどこにいんのか分かるか?オレの感覚じゃあ近くにレイドとエンドローゼしか分からん」
「ボクも同じです。後はアシドさんくらいでしょうか」
「じゃあ、その3人と合流すんぞ」
アレンとコストイラははぐれないように手を繋いで肉の海を掻き分ける。両者ともども好きな女の手だったらなどと思いつつ、レイドとエンドローゼを回収する。アシドとも合流すると肉の海から抜け出すように歩き始める。
カツンと手の甲に硬いものが当たる。それは剣だった。
「この剣はぺデストリのじゃないか」
コストイラは剣の持ち主を看破し、近くにいるのかとと探すと、見つかった。コストイラの感覚ではシルエットしか分からないが、上半身しかない。ぺデストリは同じく上半身のみのアンデッキと手を握っていた。
「こっちだ。外に出れるぞ」
レイドの導き通り、胸の高さまで埋まっていた体はズルズルと解放することができ、自由を手にする。
アレンがいくら瞳に魔力を込めようが、シキとアストロは見当たらない。
エンドローゼは山となって重なる死体たちに祈りを捧げている。
コストイラが一歩踏み出すと、グチャリと音を立てて地面が傾いた。触れた感触は土だが、ここも死体の山だ。
遠くに火の光が見える。
アレンが声をかけようとして止められた。
「不用意に行動するな。アストロも頭がいい。こんなわけ分かんねェ場所で火を使うのは安全を確保してからだ。いったん身を隠して観察するぞ」
アレン達は身を低くして肉の海を下りる。日は近づいてきて、持っている者の姿が見えた。7mはあろう高さまである身長、そのすべてを包み込む外套を見ることができた。唯一見えそうな顔は金の仮面で隠されていた。
「何だ、アイツ」
「魔力を使うなよ。バレるかもしれないからな」
コストイラが眉間に皴を寄せ、アシドはアレンに耳打ちする。魔力を使わなければ相手のことが分からないアレンにとってはツラい指示だが、相手が魔力感知に長けている可能性がある。
7mの巨体は手袋に包まれた手で肉の少し溶けた死体を2,3体一気に掴み取ると、火の灯りが遠ざかっていく。
「行ったな」
コストイラが確認すると、バチッと何かが弾けた。体内からの音ではない。視界の端で光が弾けたようで、1秒後に電気だと判明した。
「よォ、あんたら。そんなとこで何してんだい?」
そこにいたのは金髪金目の男だ。槍で肩をトントンと叩く男は、正しくこちらを見据えてニカッと表情を変えた。その瞬間、再びバチッと電気が弾けた。
あの時もこうして落ちたが、あの時は水があったからこそ助かったようなものだ。今回は下に何があるのかを知らない。
何かに腕を引っ張られる。コストイラだ。
「お前の眼で何か見えねェのか!?」
ハッとしたアレンが瞳に魔力を込めようとするが、その前に下に着いたようで何かに突っ込んだ。感触からして何かは粘性の高い液体と固体の中間の何かのようだ。外に出ようともがくが、掌には高い抵抗を感じる。
「プハァ」
コストイラも顔を出す。光源が心許ないので、シルエットでしか分からない。
「やばいな。これ全部肉と血だ」
「え?」
何とか腕を引っこ抜き、自分の手をジッと見る。目を凝らすと、自分の手に握られていたのは根元の引き千切られた指だった。
「うっ」
「黙れ。ここには何がいるのか分からないんだ。集めるような真似すんじゃねェよ」
悲鳴を封じられ、暗闇で何も見えないコストイラの顔でも強い圧迫感があった。
「それより、アレン。オレ等以外の奴がどこにいんのか分かるか?オレの感覚じゃあ近くにレイドとエンドローゼしか分からん」
「ボクも同じです。後はアシドさんくらいでしょうか」
「じゃあ、その3人と合流すんぞ」
アレンとコストイラははぐれないように手を繋いで肉の海を掻き分ける。両者ともども好きな女の手だったらなどと思いつつ、レイドとエンドローゼを回収する。アシドとも合流すると肉の海から抜け出すように歩き始める。
カツンと手の甲に硬いものが当たる。それは剣だった。
「この剣はぺデストリのじゃないか」
コストイラは剣の持ち主を看破し、近くにいるのかとと探すと、見つかった。コストイラの感覚ではシルエットしか分からないが、上半身しかない。ぺデストリは同じく上半身のみのアンデッキと手を握っていた。
「こっちだ。外に出れるぞ」
レイドの導き通り、胸の高さまで埋まっていた体はズルズルと解放することができ、自由を手にする。
アレンがいくら瞳に魔力を込めようが、シキとアストロは見当たらない。
エンドローゼは山となって重なる死体たちに祈りを捧げている。
コストイラが一歩踏み出すと、グチャリと音を立てて地面が傾いた。触れた感触は土だが、ここも死体の山だ。
遠くに火の光が見える。
アレンが声をかけようとして止められた。
「不用意に行動するな。アストロも頭がいい。こんなわけ分かんねェ場所で火を使うのは安全を確保してからだ。いったん身を隠して観察するぞ」
アレン達は身を低くして肉の海を下りる。日は近づいてきて、持っている者の姿が見えた。7mはあろう高さまである身長、そのすべてを包み込む外套を見ることができた。唯一見えそうな顔は金の仮面で隠されていた。
「何だ、アイツ」
「魔力を使うなよ。バレるかもしれないからな」
コストイラが眉間に皴を寄せ、アシドはアレンに耳打ちする。魔力を使わなければ相手のことが分からないアレンにとってはツラい指示だが、相手が魔力感知に長けている可能性がある。
7mの巨体は手袋に包まれた手で肉の少し溶けた死体を2,3体一気に掴み取ると、火の灯りが遠ざかっていく。
「行ったな」
コストイラが確認すると、バチッと何かが弾けた。体内からの音ではない。視界の端で光が弾けたようで、1秒後に電気だと判明した。
「よォ、あんたら。そんなとこで何してんだい?」
そこにいたのは金髪金目の男だ。槍で肩をトントンと叩く男は、正しくこちらを見据えてニカッと表情を変えた。その瞬間、再びバチッと電気が弾けた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
1259
-
-
2813
-
-
24252
-
-
49989
-
-
15255
-
-
2
-
-
11128
-
-
59
-
-
337
コメント