メグルユメ
3.有害な湿原
突然だが、自衛隊の隊員2人の説明をさせてほしい。
一人は青紫色の肌をした戦士風の男だ。隊長が言うには自衛隊の中では中堅あたりらしい。剣を振る速度を見ると限りではレイドと同じぐらいだろう。魔術を見ていないので強さは分からない。
もう一人はピンクの肌をした細身の男。隊長が言うには戦士風の男と比べて強いらしい。武器はレイピアであり、振る速度は速いがパワーがない。最初から魔術を使用しており、戦闘スタイルから、魔術剣士だと分かった。
青紫の男はペデストリ、ピンクの男はアンデッキという名前だ。隊長の名前もそうだが、どうしてこうも覚えづらいのだろう。ホキトタシタのことが言えなくなってしまうので間違えたり、忘れたりはしない。
現在、薄霧に包まれているとはいえ、全員の姿が見えていた。支障はなかった。未だに踝が浸かっており、不快感は消えない。そして、魔物と戦っていた。相手はドラゴンであり、その姿はレッドドラゴンを黒くしただけである。名前も安直でブラックドラゴン。
噛みつきに来るドラゴンの頭をアンデッキが風を纏ったレイピアでかちあげる。晒される黒い首をアシドが貫く。ゆっくりと下ろされる剣はブラックドラゴンの頭に当たり、頭蓋骨を割り、中身を噴き出させる。コストイラは刀に炎を纏わせ、2,3匹を纏めて処理する。
「君達の戦士もやるな」
「貴方の方こそ。あと戦士ではなく冒険者ですよ」
「おっと、そうか」
ホキトタシタとアレンは互いを見ずに会話する。
「君達は参加しないのか?」
「僕達の役割は支援なので」
「そうか」
残りのブラックドラゴンが3匹になり、やられないように飛び上がる。翼を大きく羽ばたかせ、風を起こす。霧が晴らされ、視界が明瞭になる。
少し体が飛ばされるが、これはありがたい。アレンは矢を番え、アストロは指を向けた。魔術は矢よりも速くドラゴンに辿り着き、2匹のドラゴンが地に堕ちる。後を追うように空を駆ける矢が1匹のドラゴンの眉間に刺さる。1本では堕ちなかったがもう1本の矢が右目を射抜き、今度こそドラゴンの体が落ちる。
「おおっ!!」
その光景に数人が感嘆の声を上げる。少し違和感を覚えたホキトタシタは口角は上がったままだが、眉根を寄せて首を捻る。
「これは何の拍手だ?」
「魔物に矢を当てることができたことに対する拍手よ。ようやくまともに当てているのを見たわ」
「そういうレベルだったのか」
ホキトタシタは憐みの目をアレンに向ける。隊長は魔眼を開き、アレンの体内の魔力の流れを見る。魔眼を解除しながらアレンに近づく。
「アロイ。何で弓を射る時にその眼を使わないんだ」
「目ですか? ちゃんと目を開けてましたよ? あと僕はアレンです」
「すまん、かへん。目って魔眼のことだよ」
「何でそれを。あと僕はアレンです」
「すまん、あへん。私も魔眼を持っているからだよ。使ってみたら新たな発見があるかもしれないぞ」
「アドバイスありがとうございます。あと僕はアレンです。覚える気ないなら呼ばなくていいですよ」
アドバイスはありがたいが、正しく名前を呼んでくれないので、真面目に聞く気にもなれない。しかし、改めて考えてみる。魔眼を使いながら弓を射る。正直考えたことがないわけではない。魔力の消費が激しく、発射前に倒れたことがあり、それ以来やっていない。
しかし、あの時は魔力を消費しながら、魔力を使う技を行使しようとした。今回考えているのは魔力を消費しながら、魔力を使わない技を行使することだ。
「ちょうどあそこに魔物がいる。あれに向かってやってみよう。外しても襲われてもこっちがフォローしよう。やってみろ、アリストクラシー」
「もうここまで来ると、わざとだろ」
アレンは無理のある間違いに辟易しつつ、弓を引き絞る。魔眼を発動させる。矢を摘まむ指に自然と力が入る。初めてのことで息も浅くなる。ポンと誰かに肩を叩かれる。目だけを動かすと、シキがいた。呼吸のスパンが短くなるアレンに、シキはいつもの調子でただ一言ポツリと呟いた。
「大丈夫」
その言葉でアレンは一度大きく深呼吸をして呼吸を整える。集中しているからか、魔物の動きがゆっくりに見える。心臓がどんどんとうるさい。無視する。腕が震える。無視する。足も震えている。無視する。
そして一筋の汗がアレンの左目に入った。ブシュッと鼻血が噴き出し、右指から矢が離れる。矢はくわんくわんとたわみながら、2m先の水面にぶつかり、沈んでいく。アレンは後ろに倒れた。アレンの体をシキが受け止める。鼻血がぽたぽたと落ちていく。
「オイ、アレン、大丈夫か」
「今のでドライアドがこっちに気付いたぞ」
アシドがアレンに近寄り、頬をペチペチと叩くが、反応しない。コストイラとレイドがアレンを守るように前に立つ。
「集中しすぎたか?」
ホキトタシタがアレンの顔を覗き込みながら分析する。
「オイ、隊長。責任取れ」
「仕方ない。私の提案だからな。フォロー頼むぞ」
「しゃーねー」
頭を掻きながら剣を抜き、前傾姿勢を取る。
「アシド」
一言添えて走り出すコストイラに、アシドが後を追うように走る。すでに駆けだしていたホキトタシタを追い抜き、ドライアドの蔦を叩き飛ばす。蒼いオーラを纏うアシドと炎を纏うコストイラが拓いた道をホキトタシタが走り抜けていく。前から来る太い蔦に怯えることなく、最低限の高さの跳躍で躱し、蔦の上を最高速で駆けていく。
ドライアドは迫りくるホキトタシタに咆哮を一つ浴びせようとする。隊長は腰元につけていたナイフを投げ、ドライアドの首に命中させる。
ゴボガボと口から血が溢れ出ており、声が出ない。ドライアドがナイフを抜こうと気を取られてしまう。ホキトタシタはドライアドの女型の横を抜け、木の中に入っていく。中に入って30秒後ドライアドが悶え始める。オレンジと黒の混じった煙が噴き出されていく。ボロボロと体が崩れていく。灰になる体の中からホキトタシタが出てくる。
体を叩いて灰を払っているが、髪にも灰が乗っている。ドライアドの討伐は毎回大変なのだ。
一人は青紫色の肌をした戦士風の男だ。隊長が言うには自衛隊の中では中堅あたりらしい。剣を振る速度を見ると限りではレイドと同じぐらいだろう。魔術を見ていないので強さは分からない。
もう一人はピンクの肌をした細身の男。隊長が言うには戦士風の男と比べて強いらしい。武器はレイピアであり、振る速度は速いがパワーがない。最初から魔術を使用しており、戦闘スタイルから、魔術剣士だと分かった。
青紫の男はペデストリ、ピンクの男はアンデッキという名前だ。隊長の名前もそうだが、どうしてこうも覚えづらいのだろう。ホキトタシタのことが言えなくなってしまうので間違えたり、忘れたりはしない。
現在、薄霧に包まれているとはいえ、全員の姿が見えていた。支障はなかった。未だに踝が浸かっており、不快感は消えない。そして、魔物と戦っていた。相手はドラゴンであり、その姿はレッドドラゴンを黒くしただけである。名前も安直でブラックドラゴン。
噛みつきに来るドラゴンの頭をアンデッキが風を纏ったレイピアでかちあげる。晒される黒い首をアシドが貫く。ゆっくりと下ろされる剣はブラックドラゴンの頭に当たり、頭蓋骨を割り、中身を噴き出させる。コストイラは刀に炎を纏わせ、2,3匹を纏めて処理する。
「君達の戦士もやるな」
「貴方の方こそ。あと戦士ではなく冒険者ですよ」
「おっと、そうか」
ホキトタシタとアレンは互いを見ずに会話する。
「君達は参加しないのか?」
「僕達の役割は支援なので」
「そうか」
残りのブラックドラゴンが3匹になり、やられないように飛び上がる。翼を大きく羽ばたかせ、風を起こす。霧が晴らされ、視界が明瞭になる。
少し体が飛ばされるが、これはありがたい。アレンは矢を番え、アストロは指を向けた。魔術は矢よりも速くドラゴンに辿り着き、2匹のドラゴンが地に堕ちる。後を追うように空を駆ける矢が1匹のドラゴンの眉間に刺さる。1本では堕ちなかったがもう1本の矢が右目を射抜き、今度こそドラゴンの体が落ちる。
「おおっ!!」
その光景に数人が感嘆の声を上げる。少し違和感を覚えたホキトタシタは口角は上がったままだが、眉根を寄せて首を捻る。
「これは何の拍手だ?」
「魔物に矢を当てることができたことに対する拍手よ。ようやくまともに当てているのを見たわ」
「そういうレベルだったのか」
ホキトタシタは憐みの目をアレンに向ける。隊長は魔眼を開き、アレンの体内の魔力の流れを見る。魔眼を解除しながらアレンに近づく。
「アロイ。何で弓を射る時にその眼を使わないんだ」
「目ですか? ちゃんと目を開けてましたよ? あと僕はアレンです」
「すまん、かへん。目って魔眼のことだよ」
「何でそれを。あと僕はアレンです」
「すまん、あへん。私も魔眼を持っているからだよ。使ってみたら新たな発見があるかもしれないぞ」
「アドバイスありがとうございます。あと僕はアレンです。覚える気ないなら呼ばなくていいですよ」
アドバイスはありがたいが、正しく名前を呼んでくれないので、真面目に聞く気にもなれない。しかし、改めて考えてみる。魔眼を使いながら弓を射る。正直考えたことがないわけではない。魔力の消費が激しく、発射前に倒れたことがあり、それ以来やっていない。
しかし、あの時は魔力を消費しながら、魔力を使う技を行使しようとした。今回考えているのは魔力を消費しながら、魔力を使わない技を行使することだ。
「ちょうどあそこに魔物がいる。あれに向かってやってみよう。外しても襲われてもこっちがフォローしよう。やってみろ、アリストクラシー」
「もうここまで来ると、わざとだろ」
アレンは無理のある間違いに辟易しつつ、弓を引き絞る。魔眼を発動させる。矢を摘まむ指に自然と力が入る。初めてのことで息も浅くなる。ポンと誰かに肩を叩かれる。目だけを動かすと、シキがいた。呼吸のスパンが短くなるアレンに、シキはいつもの調子でただ一言ポツリと呟いた。
「大丈夫」
その言葉でアレンは一度大きく深呼吸をして呼吸を整える。集中しているからか、魔物の動きがゆっくりに見える。心臓がどんどんとうるさい。無視する。腕が震える。無視する。足も震えている。無視する。
そして一筋の汗がアレンの左目に入った。ブシュッと鼻血が噴き出し、右指から矢が離れる。矢はくわんくわんとたわみながら、2m先の水面にぶつかり、沈んでいく。アレンは後ろに倒れた。アレンの体をシキが受け止める。鼻血がぽたぽたと落ちていく。
「オイ、アレン、大丈夫か」
「今のでドライアドがこっちに気付いたぞ」
アシドがアレンに近寄り、頬をペチペチと叩くが、反応しない。コストイラとレイドがアレンを守るように前に立つ。
「集中しすぎたか?」
ホキトタシタがアレンの顔を覗き込みながら分析する。
「オイ、隊長。責任取れ」
「仕方ない。私の提案だからな。フォロー頼むぞ」
「しゃーねー」
頭を掻きながら剣を抜き、前傾姿勢を取る。
「アシド」
一言添えて走り出すコストイラに、アシドが後を追うように走る。すでに駆けだしていたホキトタシタを追い抜き、ドライアドの蔦を叩き飛ばす。蒼いオーラを纏うアシドと炎を纏うコストイラが拓いた道をホキトタシタが走り抜けていく。前から来る太い蔦に怯えることなく、最低限の高さの跳躍で躱し、蔦の上を最高速で駆けていく。
ドライアドは迫りくるホキトタシタに咆哮を一つ浴びせようとする。隊長は腰元につけていたナイフを投げ、ドライアドの首に命中させる。
ゴボガボと口から血が溢れ出ており、声が出ない。ドライアドがナイフを抜こうと気を取られてしまう。ホキトタシタはドライアドの女型の横を抜け、木の中に入っていく。中に入って30秒後ドライアドが悶え始める。オレンジと黒の混じった煙が噴き出されていく。ボロボロと体が崩れていく。灰になる体の中からホキトタシタが出てくる。
体を叩いて灰を払っているが、髪にも灰が乗っている。ドライアドの討伐は毎回大変なのだ。
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