【完結】2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
最終章 私の一番は……3
――犯人は意外と簡単に目星がついた。
「富士野くん」
「はい」
今日も専務が、富士野部長を呼びに来る。
部内には不安そうな人間も、彼に疑いの目を向ける人間もいた。
「きっと富士野部長は無罪だ!
信じてやろうじゃないか」
ざわつく部内を治めるように、ひとりの人物が立ち上がる。
それはあろうことか、あんなに富士野部長を敵視していた生野課長だった。
「富士野部長の分はオレがカバーするから、心配しなくていい」
彼の言葉で安心している人間もいるが。
……絶対怪しいよね。
目の敵にしていながらライバルとして認めている、とかならこういう態度はありえる。
しかし生野課長に限っては、ない。
誰がどう見ても富士野部長が正しいときでも、それは間違っていると必ず主張し、いかに彼を失脚させるかいつも企んでいるのが生野課長なのだ。
その課長が部長のピンチで上機嫌なのはわかるが、彼を庇うなんてありえなさすぎる。
いくらなんでも、こんなあきらかに〝疑ってください〟なんて行動を取るわけが……とも考えたが、少し前、私の噂が流れ始めたときから、思いおこせば様子がおかしかった。
ケチで有名なのに、出張先でお菓子を買ってきてくれたり。
たまたま居合わせた課長が、自販機のコーヒーを奢ってくれたなんて話もある。
もう怪しすぎて困るくらいだ。
しかも。
「あっ」
コンビニへ昼食を買いに出たら、生野課長を見かけた。
なんとなく、あとをつける。
彼が入っていたのは、鉄板焼きの店だった。
……こんな高級なところに、昼間から?
『ローンと子供の学費で給料のほとんどが飛んでいくから、金がない』
いつもそう言って飲み会の会費を払うのすら文句を言う彼が、昼間からこんなお店に入るのはありえない。
もしかして……花恋さんからお金をもらったとか?
そう考えるのはおかしいだろうか。
今日も部長は一日中拘束され、仕事にならなかった。
さらなる情報を元に他社に移るつもりだとかという噂まで出てくれば、そうなるだろう。
「……疲れた」
「お疲れ様です」
帰ってきて冷蔵庫に直行し、部長はビールを開けた。
それだけ、疲れたのだろう。
「適当に温めますねー」
「わるい、頼む」
ぐったりとソファーに座る部長を横目に、キッチンへ行って作り置きされている料理を温める。
ガッツリ系よりも、摘まめるものがいいかな。
冷凍ポテトあるはずだし、あれも揚げちゃおう。
「おまたせしましたー」
「サンキューな」
今日はダイニングテーブルではなく、リビングのローテーブルの上に料理を並べた。
ついでに、部長へビールを一本追加する。
もちろん、自社製だ。
「まあ、怪しいヤツの目星はついたけどな」
右の口端だけ上げて意地悪くニヤリと笑い、部長は新しいビールをごくごくと飲んだ。
「私もです」
「アイツ、だよな」
「はい」
「生野課長!」
互いに指を指しながら同時に出てきた名前は、同じだった。
「『私は富士野部長を信じいていますから、頑張ってください』とか、嬉しそうに笑いながら言われてもなー。
まあ、それだけ俺の失脚が嬉しいんだろうけど」
ポテトを摘まみ、部長はもりもり食べている。
「それもですけど。
最近、おみやげ買ってきたり、部下にジュースを奢ったりとかおかしくないですか。
それに今日、生野部長がお昼、高級鉄板焼きのお店に入っていくの、見たんですよ」
「……アイツから金、もらったんだろうな」
想像しているのか、部長は遠い目をした。
「ですよねー」
私もうんうんと頷く。
やっぱり部長だって、生野課長が怪しいと思うよね。
「捕まえて白状させたいところだが、まだ怪しいってだけで、証拠がないからな」
これだけ疑わしくても、証拠がないと動けないのが部長は歯痒そうだ。
「引き続き、監視を続けます!」
「よしっ、任せた!」
少しでも明るくしようとふざけて敬礼したら、部長も笑ってくれた。
「富士野くん」
「はい」
今日も専務が、富士野部長を呼びに来る。
部内には不安そうな人間も、彼に疑いの目を向ける人間もいた。
「きっと富士野部長は無罪だ!
信じてやろうじゃないか」
ざわつく部内を治めるように、ひとりの人物が立ち上がる。
それはあろうことか、あんなに富士野部長を敵視していた生野課長だった。
「富士野部長の分はオレがカバーするから、心配しなくていい」
彼の言葉で安心している人間もいるが。
……絶対怪しいよね。
目の敵にしていながらライバルとして認めている、とかならこういう態度はありえる。
しかし生野課長に限っては、ない。
誰がどう見ても富士野部長が正しいときでも、それは間違っていると必ず主張し、いかに彼を失脚させるかいつも企んでいるのが生野課長なのだ。
その課長が部長のピンチで上機嫌なのはわかるが、彼を庇うなんてありえなさすぎる。
いくらなんでも、こんなあきらかに〝疑ってください〟なんて行動を取るわけが……とも考えたが、少し前、私の噂が流れ始めたときから、思いおこせば様子がおかしかった。
ケチで有名なのに、出張先でお菓子を買ってきてくれたり。
たまたま居合わせた課長が、自販機のコーヒーを奢ってくれたなんて話もある。
もう怪しすぎて困るくらいだ。
しかも。
「あっ」
コンビニへ昼食を買いに出たら、生野課長を見かけた。
なんとなく、あとをつける。
彼が入っていたのは、鉄板焼きの店だった。
……こんな高級なところに、昼間から?
『ローンと子供の学費で給料のほとんどが飛んでいくから、金がない』
いつもそう言って飲み会の会費を払うのすら文句を言う彼が、昼間からこんなお店に入るのはありえない。
もしかして……花恋さんからお金をもらったとか?
そう考えるのはおかしいだろうか。
今日も部長は一日中拘束され、仕事にならなかった。
さらなる情報を元に他社に移るつもりだとかという噂まで出てくれば、そうなるだろう。
「……疲れた」
「お疲れ様です」
帰ってきて冷蔵庫に直行し、部長はビールを開けた。
それだけ、疲れたのだろう。
「適当に温めますねー」
「わるい、頼む」
ぐったりとソファーに座る部長を横目に、キッチンへ行って作り置きされている料理を温める。
ガッツリ系よりも、摘まめるものがいいかな。
冷凍ポテトあるはずだし、あれも揚げちゃおう。
「おまたせしましたー」
「サンキューな」
今日はダイニングテーブルではなく、リビングのローテーブルの上に料理を並べた。
ついでに、部長へビールを一本追加する。
もちろん、自社製だ。
「まあ、怪しいヤツの目星はついたけどな」
右の口端だけ上げて意地悪くニヤリと笑い、部長は新しいビールをごくごくと飲んだ。
「私もです」
「アイツ、だよな」
「はい」
「生野課長!」
互いに指を指しながら同時に出てきた名前は、同じだった。
「『私は富士野部長を信じいていますから、頑張ってください』とか、嬉しそうに笑いながら言われてもなー。
まあ、それだけ俺の失脚が嬉しいんだろうけど」
ポテトを摘まみ、部長はもりもり食べている。
「それもですけど。
最近、おみやげ買ってきたり、部下にジュースを奢ったりとかおかしくないですか。
それに今日、生野部長がお昼、高級鉄板焼きのお店に入っていくの、見たんですよ」
「……アイツから金、もらったんだろうな」
想像しているのか、部長は遠い目をした。
「ですよねー」
私もうんうんと頷く。
やっぱり部長だって、生野課長が怪しいと思うよね。
「捕まえて白状させたいところだが、まだ怪しいってだけで、証拠がないからな」
これだけ疑わしくても、証拠がないと動けないのが部長は歯痒そうだ。
「引き続き、監視を続けます!」
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