【完結】2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
第五章 富士野部長の目標6
少しして頼んだルームサービスが届く。
それでようやく、彼はワインを開けた。
「改めて。
明日美、企画の採用おめでとう」
「ありがとうございます」
グラスを上げてそれを受ける。
チョコアイス片手に、ワインをちびちびと飲んだ。
「そういえばうちの会社って、ビールは造ってるのにワインはないんですよね?」
「そーだなー。
将来的にはワインも作りたいよなー。
ウィスキーもチャレンジしてみたい」
まるで会社が富士野部長のもののような発言に、おかしくなってくすくす笑ってしまう。
「富士野部長の夢、ですか」
「ああ。
とりあえず、日本のビールといえば! ってくらい、有名にしたい。
アルコールはもちろんだが、清涼飲料もまずはコンビニ展開したいよな。
今はせいぜい、スーパーだし。
あとは……」
部長の話は続いていく。
それを、相槌を打つだけして聞いていた。
「まあ、俺が社長にならなきゃ実現しないけどな」
照れくさそうに部長がグラスを口に運ぶ。
「きっと実現しますよ」
私の朝活の時間、部長も一緒に勉強している。
参考書探しに勝手に入っていいと言われた書斎には、経済学の本はもちろん、アルコール醸造やいろいろな飲み物の本もたくさん並んでいた。
会社でもそうだ。
部下のいいところを伸ばし、売り上げを上げている。
富士野部長が部長になってから、会社の売り上げは右肩上がりだ。
こんなに頑張っている人が、社長になれないなんてわけがない。
きっと私はなれるって信じている。
「ありがとう、明日美」
そっと部長が私の左手を取る。
その手が離れたときには薬指に指環が嵌まっていた。
「……これは?」
目の高さまで持ってきてしげしげと眺める。
大きめのダイヤがついたこの指環が、ただの指環じゃないことくらい私にもわかった。
「婚約指環。
俺たち、婚約してるのに指環はまだだっただろ?」
「でも、私たちはフリなので……」
こんなの、本当に部長の婚約者になったみたいで嬉しくなってしまう。
でも同時に、これは仮初めのもので私のものにはならないのだと悲しくなった。
「そうだな。
婚約を解消したときは、買い取りにでも出せばいい。
ま、迷惑料みたいなもんだ」
「はぁ……」
そんなに簡単に、こんな高価なもの……いや。
部長からしたら高価でもなんでもないのか。
「……じゃあ、ありがたく」
なんだろう、婚約指環なんてロマンチックなもののはずなのに、急に俗物的になってきた……。
気持ちよくと酔いも回り、ベッドへと移動する。
「じゃあ、おやすみ」
「……おやすみなさい」
部長は迷いなくふたつ並んだベッドの片方に入り、眼鏡を置いて目を閉じた。
なんか、拍子抜け。
それとも、私にはそんな気分になるほどの魅力が足りないのか?
仕方ないので私も隣のベッドに入り、目を閉じた。
「……なあ」
唐突に部長の声が聞こえ、目を開ける。
「もう寝たか?」
「いえ」
寝返りを打った気配がしたので、私も彼のほうを向く。
「さっきの話の続きだけどな」
さっきの話とはどの話なんだろう。
しかし、考えているうちに部長は話を続けていく。
「俺の目標は会社を一流にして社長になることなんだ。
その目標を達成するまでは、恋なんてしないと決めた」
「そう、なんですね」
薄暗い中、こちらを向いている部長が、どんな表情をしているのかよくわからない。
「ああ。
決めた、はずなんだ……」
声は次第に消えていき、最後には寝息に変わっていた。
「恋なんかしない、か」
気持ちよさそうに眠っている、部長の顔をじっと見つめる。
だったらそれまで、私の気持ちは胸に秘めておくべきなんだろうか。
そうして、彼が社長になれるようにサポートする。
私はそれしか、できないんだろうか。
本当にそれでいいんだろうか。
私には……わからない。
それでようやく、彼はワインを開けた。
「改めて。
明日美、企画の採用おめでとう」
「ありがとうございます」
グラスを上げてそれを受ける。
チョコアイス片手に、ワインをちびちびと飲んだ。
「そういえばうちの会社って、ビールは造ってるのにワインはないんですよね?」
「そーだなー。
将来的にはワインも作りたいよなー。
ウィスキーもチャレンジしてみたい」
まるで会社が富士野部長のもののような発言に、おかしくなってくすくす笑ってしまう。
「富士野部長の夢、ですか」
「ああ。
とりあえず、日本のビールといえば! ってくらい、有名にしたい。
アルコールはもちろんだが、清涼飲料もまずはコンビニ展開したいよな。
今はせいぜい、スーパーだし。
あとは……」
部長の話は続いていく。
それを、相槌を打つだけして聞いていた。
「まあ、俺が社長にならなきゃ実現しないけどな」
照れくさそうに部長がグラスを口に運ぶ。
「きっと実現しますよ」
私の朝活の時間、部長も一緒に勉強している。
参考書探しに勝手に入っていいと言われた書斎には、経済学の本はもちろん、アルコール醸造やいろいろな飲み物の本もたくさん並んでいた。
会社でもそうだ。
部下のいいところを伸ばし、売り上げを上げている。
富士野部長が部長になってから、会社の売り上げは右肩上がりだ。
こんなに頑張っている人が、社長になれないなんてわけがない。
きっと私はなれるって信じている。
「ありがとう、明日美」
そっと部長が私の左手を取る。
その手が離れたときには薬指に指環が嵌まっていた。
「……これは?」
目の高さまで持ってきてしげしげと眺める。
大きめのダイヤがついたこの指環が、ただの指環じゃないことくらい私にもわかった。
「婚約指環。
俺たち、婚約してるのに指環はまだだっただろ?」
「でも、私たちはフリなので……」
こんなの、本当に部長の婚約者になったみたいで嬉しくなってしまう。
でも同時に、これは仮初めのもので私のものにはならないのだと悲しくなった。
「そうだな。
婚約を解消したときは、買い取りにでも出せばいい。
ま、迷惑料みたいなもんだ」
「はぁ……」
そんなに簡単に、こんな高価なもの……いや。
部長からしたら高価でもなんでもないのか。
「……じゃあ、ありがたく」
なんだろう、婚約指環なんてロマンチックなもののはずなのに、急に俗物的になってきた……。
気持ちよくと酔いも回り、ベッドへと移動する。
「じゃあ、おやすみ」
「……おやすみなさい」
部長は迷いなくふたつ並んだベッドの片方に入り、眼鏡を置いて目を閉じた。
なんか、拍子抜け。
それとも、私にはそんな気分になるほどの魅力が足りないのか?
仕方ないので私も隣のベッドに入り、目を閉じた。
「……なあ」
唐突に部長の声が聞こえ、目を開ける。
「もう寝たか?」
「いえ」
寝返りを打った気配がしたので、私も彼のほうを向く。
「さっきの話の続きだけどな」
さっきの話とはどの話なんだろう。
しかし、考えているうちに部長は話を続けていく。
「俺の目標は会社を一流にして社長になることなんだ。
その目標を達成するまでは、恋なんてしないと決めた」
「そう、なんですね」
薄暗い中、こちらを向いている部長が、どんな表情をしているのかよくわからない。
「ああ。
決めた、はずなんだ……」
声は次第に消えていき、最後には寝息に変わっていた。
「恋なんかしない、か」
気持ちよさそうに眠っている、部長の顔をじっと見つめる。
だったらそれまで、私の気持ちは胸に秘めておくべきなんだろうか。
そうして、彼が社長になれるようにサポートする。
私はそれしか、できないんだろうか。
本当にそれでいいんだろうか。
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