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【完結】2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~

霧内杳

第五章 富士野部長の目標3

戻ったリビングでは部長が響希ちゃんに振り回され、途方に暮れていた。

「おまたせー」

「どうなっ……た」

私を見た途端、部長が息を飲んだのがわかった。
そのままぼーっと私を見ている。

「部長?」

「ああ、……わるい」

声をかけると、まるで夢から覚めたみたいな顔を部長はした。

「もう!
ちゃんと明日美ちゃんに感想を言ってあげて!」

少しむくれて杏華さんが抗議する。

「あー……。
……綺麗、だ」

頭をガシガシ掻きながら、ぽつりと呟くように部長が言う。

「それだけ!?
もっと言うことあるでしょ!」

杏華さんは怒っているが、私はそれで十分だった。

メイクレッスンも終わったので、おみやげに持ってきたケーキでお茶になった。

「明日美ちゃん、どれがいい?」

「ひびき!
ひびきがさき!」

箱を開けて杏華さんが進めてくれる。
しかし、ケーキを前に響希ちゃんはテーブルに手をついてぴょんぴょん跳びはねるほど大興奮で、苦笑いしてしまう。

「こら、響希。
お姉ちゃんが先でしょ」

「えー」

頬をぷーっと膨らませてむくれる響希ちゃんは、我が儘よりも可愛いが先だつ。

「いいんですよ、杏華さん。
響希ちゃん、先に選んでいいよ。
どれがいい?」

「ひびき、いちごのケーキがいい!」

早速響希ちゃんがケーキへと手を伸ばしたが、それはさすがに部長から止められた。

「ごめんね、明日美ちゃん」

申し訳なさそうに謝りながら、杏華さんはお皿にいちごのショートケーキをのせて響希ちゃんの前に置いた。

「明日美ちゃんはどれがいい?」

「じゃあ、このチョコレートケーキ……」

「あっ。
やっぱりひびき、こっちがいい!」

私が指を指したケーキに、すかさず響希ちゃんが手を伸ばす。

「……響希。
響希はいちごのケーキを選んだんでしょう?」

静かに杏華さんが響希ちゃんを諫めたが。

「だってひびき、こっちのケーキがいいんだもん!」

ご機嫌斜めに響希ちゃんがぷいっとよそを向く。

「じゃ、じゃあ、チョコは響希ちゃんに譲って、私はチーズ……」

「ひびき、チーズにする!」

参ったなと思いつつ違うケーキを選んだら、速攻でまた響希ちゃんがそっちに変更してきた。

「こら、響希。
いい加減にしろ」

これにはとうとう、富士野部長も怒っているようだ。

「じゅんちゃんがおこったー」

終いには響希ちゃんが泣きだし、もう収拾がつかない。

「自分が悪いんでしょ」

杏華さんは抱きついてきた響希ちゃんを宥めている。

……子育てって大変。

でも、もしかして響希ちゃん、私が選んだのがいいんじゃなくて、私に好きなものを選ばせたくなかったんじゃないかなー。
随分、部長に懐いているみたいだし、私はどうも嫌われているみたいだし。
きっと、部長が好きなんだなー。

「響希がわるいな」

「いえ、別に」

詫びてくる部長に笑顔を作って答える。
女の子はちっちゃくっても一人前の女なんだ。
なんかそういうの、……嫉妬しちゃう。
いやや、幼女に嫉妬してどうするんだ。

響希ちゃんも泣きやみ、ようやくお茶が始まる。
響希ちゃんはご機嫌斜めのまま、最初に選んだショートケーキを食べていた。

「義姉さん。
花恋かれんの件、助かりました。
ありがとうございます」

部長は杏華さんにお礼を言っているが、花恋ってあの自称婚約者さんだよね?
それが杏華さんと同関係があるんだろう?

「いいのよー、これくらい」

杏華さんはふわふわ笑っている。
本当に優しいお母さんって感じだ。

「富士野部長、花恋さんがどうかしたんですか?」

「ん?
とうとう家に前で押しかけてきただろ?
だから義姉さんに頼んでやめるように言ってもらったんだ」

「花恋さん、私の顧客なのー。
その関係で彼女の会社の服、私の口利きでテレビ局や雑誌で使ってもらってるから、準くんにしつこくつきまとうなら、って」

うふふとか相変わらずゆるーい感じだが、彼女の目はちっとも笑っていない。
実は怒らせたらいけない人なのかも。
気をつけよう。
……って、部長との付き合いがあとどれくらいかわからないが。

「どおりであれから、花恋さんの気配がないわけですね」

「そういうことだ」

頷いて部長がコーヒーを口に運ぶ。
彼女を諦めさせるために私と婚約者したはずなのに、全然影も形もないからおかしいと思っていた。

……ん?
だったらもう、婚約者のフリとかしなくていいのでは?

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