【完結】2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
第五章 富士野部長の目標2
「あの、なにをするんですか……?」
立派な鏡台の前に座らされた。
目の前には化粧品とメイク道具が広げられている。
「え?
準くんから聞いてない?」
鏡の中で杏華さんが、意外そうにまばたきをする。
「えっと。
聞いてない、ですね……」
それに曖昧に笑って答えた。
ここに連れてこられた理由も知らないし、そもそもここがどこかって知ったのはついさっきだ。
「もう、準くんったら……」
頬に手を当て、はぁーっと物憂げに彼女がため息を落とす。
「私、メイクの仕事をしているの。
といっても、今は育休中なんだけど。
それで準くんが明日美さんに、メイクの手ほどきをしてくれって」
「ああ……」
それは、心当たりがある。
部長は私の、化粧をしないほうがマシなメイクをどうにかしたいと言っていたし、それもう策は立てたあるとも。
その策とは、杏華さんだったんだ。
「今日は何パターンか、ヘアメイクもあわせて明日美さんに伝授するわ。
全部基本とちょっとした応用だし、覚えたらどんどん自分でもアレンジできるから大丈夫よ」
「よろしくお願いします!」
今までずっと内面ばかり磨いてきたが、今日はとうとう外面なんだ。
ちょっと、わくわくするな。
プロにメイクしてもらっても変わらない……なんてことないと祈っておこう。
「最初は、会社用ねー」
してきたメイクを落として肌を整えたあと、杏華さんが私の顔に化粧品をのせていく。
「下地を塗ったあとにこれ、クッションファンデを塗っていくの」
「えっ、コンシーラーじゃないんですか?」
ずっとコンシーラーはファンデーションの前だと思っていた。
そこから間違っていたなんて。
「明日美さんが使っているファンデーションは?」
「……BBクリームです」
プロを前に手抜きを告白しているようで、つい声が小さくなる。
「別にBBクリームだって悪くないわ。
私だって今日みたいにご近所ぐらいにしか行かないときはBBクリームで済ませるし」
ほら、と杏華さんが肌を見せてくるが、私には違いがわからない。
「でも、ここぞってときは絶対、ファンデーションを使ったほうが綺麗になるわ」
「わかりました」
携帯片手に杏華さんに言われたことをメモっていく。
「それで。
お粉のファンデーションのときはコンシーラーが先だけど、リキッドファンデとか、それこそBBクリームのときはあと」
「そうなんですね」
ろくに調べず、適当に自分は化粧していたのだと痛感した。
だから、全然ダメなのだ。
そのまま杏華さんのレクチャーは続いていき。
「えっ、全然違う……!」
鏡の中の自分は今までと同じようなメイクなのに、ワントーン表情が明るく見えた。
健康的で、可愛くなった気さえする。
「驚いた?
基礎をちゃんとやって、ちょっとメイクするだけでこれだけ違うのよ」
うんうんと首がもげる勢いで頷いた。
今まで自分がいかに、ダメメイクをしていたのかよくわかる。
「それに明日美ちゃん、元がいいから磨き甲斐があるわー。
『化粧しないほうが可愛いなら、ちゃんとメイクしたらどれだけ可愛いんですかね?』なんて準くんがデレデレ……」
そこまで言ってなにかに気づいたのか、杏華さんは急に話をやめた。
「……今のは聞かなかったことにしてね?」
「……ハイ」
唇に人差し指を当てて、悪戯っぽく言われたらハイとしか言えなかった。
途中、部長の作ってくれた食事で昼食になった。
「どうだ?
って、可愛くなったな」
私を顔を見て、彼が笑う。
「そう、ですか?」
部長に褒められると自分でそう思っていても、嬉しくなった。
「じゅんたん!
じゅんたん、ひびきはー?」
「あ?
響希も可愛いよ」
腕を引っ張られて答える彼は適当だが、響希ちゃんに振り回されてぐったり疲れているみたいだし、仕方ないかも。
食事のあとも引き続き、杏華さんにメイクを教えてもらう。
このあいだのプレゼンのような、勝負のとき用。
一旦、部長が作ってくれたお昼を挟んで、部長の実家へ行くようなときみたいな、シックで落ち着いたメイク。
これからはそういう場所にも行くだろうしと、パーティ用。
最後は……。
「デート用ね」
「デート用……」
今までの中で一番うきうきと杏華さんがメイクを始める。
「できた!
これなら準くん、メロメロでなんでも言うこと聞いてくれるわよ」
意味深に杏華さんが片目をつぶってみせる。
鏡に映る私は今までのメイクの中で、一番美しかった。
……これなら、部長も認めてくれるかも。
そんな期待が湧いてくる。
「あ、でも。
こんなに綺麗だと他の男が寄ってきて、準くんがヤキモチ妬くかもね」
想像しているのか、楽しそうに杏華さんが笑う。
部長がヤキモチ妬いてくれる……?
だったら凄く、嬉しいのに。
そのあと、杏華さんに服を押しつけられて着替えさせられた。
「この服は……?」
「んー、内緒」
またもや人差し指を唇に当て、うふふと杏華さんが笑う。
ここの姉弟は……って、杏華さんと部長は義理だから血筋のせいじゃないか。
杏華さんのは小さいお子さんがいるから、癖かもしれない。
立派な鏡台の前に座らされた。
目の前には化粧品とメイク道具が広げられている。
「え?
準くんから聞いてない?」
鏡の中で杏華さんが、意外そうにまばたきをする。
「えっと。
聞いてない、ですね……」
それに曖昧に笑って答えた。
ここに連れてこられた理由も知らないし、そもそもここがどこかって知ったのはついさっきだ。
「もう、準くんったら……」
頬に手を当て、はぁーっと物憂げに彼女がため息を落とす。
「私、メイクの仕事をしているの。
といっても、今は育休中なんだけど。
それで準くんが明日美さんに、メイクの手ほどきをしてくれって」
「ああ……」
それは、心当たりがある。
部長は私の、化粧をしないほうがマシなメイクをどうにかしたいと言っていたし、それもう策は立てたあるとも。
その策とは、杏華さんだったんだ。
「今日は何パターンか、ヘアメイクもあわせて明日美さんに伝授するわ。
全部基本とちょっとした応用だし、覚えたらどんどん自分でもアレンジできるから大丈夫よ」
「よろしくお願いします!」
今までずっと内面ばかり磨いてきたが、今日はとうとう外面なんだ。
ちょっと、わくわくするな。
プロにメイクしてもらっても変わらない……なんてことないと祈っておこう。
「最初は、会社用ねー」
してきたメイクを落として肌を整えたあと、杏華さんが私の顔に化粧品をのせていく。
「下地を塗ったあとにこれ、クッションファンデを塗っていくの」
「えっ、コンシーラーじゃないんですか?」
ずっとコンシーラーはファンデーションの前だと思っていた。
そこから間違っていたなんて。
「明日美さんが使っているファンデーションは?」
「……BBクリームです」
プロを前に手抜きを告白しているようで、つい声が小さくなる。
「別にBBクリームだって悪くないわ。
私だって今日みたいにご近所ぐらいにしか行かないときはBBクリームで済ませるし」
ほら、と杏華さんが肌を見せてくるが、私には違いがわからない。
「でも、ここぞってときは絶対、ファンデーションを使ったほうが綺麗になるわ」
「わかりました」
携帯片手に杏華さんに言われたことをメモっていく。
「それで。
お粉のファンデーションのときはコンシーラーが先だけど、リキッドファンデとか、それこそBBクリームのときはあと」
「そうなんですね」
ろくに調べず、適当に自分は化粧していたのだと痛感した。
だから、全然ダメなのだ。
そのまま杏華さんのレクチャーは続いていき。
「えっ、全然違う……!」
鏡の中の自分は今までと同じようなメイクなのに、ワントーン表情が明るく見えた。
健康的で、可愛くなった気さえする。
「驚いた?
基礎をちゃんとやって、ちょっとメイクするだけでこれだけ違うのよ」
うんうんと首がもげる勢いで頷いた。
今まで自分がいかに、ダメメイクをしていたのかよくわかる。
「それに明日美ちゃん、元がいいから磨き甲斐があるわー。
『化粧しないほうが可愛いなら、ちゃんとメイクしたらどれだけ可愛いんですかね?』なんて準くんがデレデレ……」
そこまで言ってなにかに気づいたのか、杏華さんは急に話をやめた。
「……今のは聞かなかったことにしてね?」
「……ハイ」
唇に人差し指を当てて、悪戯っぽく言われたらハイとしか言えなかった。
途中、部長の作ってくれた食事で昼食になった。
「どうだ?
って、可愛くなったな」
私を顔を見て、彼が笑う。
「そう、ですか?」
部長に褒められると自分でそう思っていても、嬉しくなった。
「じゅんたん!
じゅんたん、ひびきはー?」
「あ?
響希も可愛いよ」
腕を引っ張られて答える彼は適当だが、響希ちゃんに振り回されてぐったり疲れているみたいだし、仕方ないかも。
食事のあとも引き続き、杏華さんにメイクを教えてもらう。
このあいだのプレゼンのような、勝負のとき用。
一旦、部長が作ってくれたお昼を挟んで、部長の実家へ行くようなときみたいな、シックで落ち着いたメイク。
これからはそういう場所にも行くだろうしと、パーティ用。
最後は……。
「デート用ね」
「デート用……」
今までの中で一番うきうきと杏華さんがメイクを始める。
「できた!
これなら準くん、メロメロでなんでも言うこと聞いてくれるわよ」
意味深に杏華さんが片目をつぶってみせる。
鏡に映る私は今までのメイクの中で、一番美しかった。
……これなら、部長も認めてくれるかも。
そんな期待が湧いてくる。
「あ、でも。
こんなに綺麗だと他の男が寄ってきて、準くんがヤキモチ妬くかもね」
想像しているのか、楽しそうに杏華さんが笑う。
部長がヤキモチ妬いてくれる……?
だったら凄く、嬉しいのに。
そのあと、杏華さんに服を押しつけられて着替えさせられた。
「この服は……?」
「んー、内緒」
またもや人差し指を唇に当て、うふふと杏華さんが笑う。
ここの姉弟は……って、杏華さんと部長は義理だから血筋のせいじゃないか。
杏華さんのは小さいお子さんがいるから、癖かもしれない。
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