【完結】2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
第四章 ......今は2
「お疲れ様でした」
戻って仕事をしてたら、不意に顔の横に缶が出現した。
そちらを見るとミルクティの缶を富士野部長が差し出している。
「ありがとうございます」
ありがたく手を出し、それを受け取った。
「いいプレゼンでした。
あとは結果を待つばかりですが、きっと紀藤さんの企画が採用ですよ」
部長が目尻を下げ、眼鏡の陰に笑い皺がのぞく。
「……だと、いいんですが」
「はい。
私はそうだと確信しています」
元気づけるように、私の肩をぽんと軽く叩き、部長は自分の席へと戻っていった。
「採用、か……」
自分の企画が採用し、自販機に並んでいるのを想像したらわくわくする。
そう、なったらいい。
いや、そのために頑張ったのだ。
あとは神にでも祈ろう。
今日は私のほうが早く仕事が終わったので、先に帰る。
本当は食事を作っておいて部長の手間を減らしたいが、前にそれをやったら怒られたのでやめておく。
『こんなことする暇があるなら、ひとつでも単語を覚えろ!』
TOEICの試験直前だったから、そう言われた。
でも、それで落ち込んでいたら。
『紀藤がベストを尽くせるように環境を整えるのが俺の役目なの。
だから、甘えておけ』
って、頭ぽんぽんしてくれたから、気分がよくなってたが。
……ん?
私、もしかしてチョロい?
それにあれは連絡せずに食事の準備なんかしたもんだから、部長の買ってきてくれたお弁当とかぶって申し訳なかった。
富士野部長が帰ってくるまで、次の試験に向けて勉強をする。
部長が取れって言った資格はまだまだあった。
前はいったい、これはなんのために勉強させられているんだと思っていたが、最近なんとなくわかってきたのだ。
たぶん、秘書の養成。
事務職でトップというと秘書な気がするし、だからなんだろうとは思う。
でも、ビジネス実務法務は部長の趣味かもしれない。
まあ、あればきっと役に立つだろうけれど。
「ただいまー」
今日も勉強に励んでいたら、ようやく仕事を終えた部長が帰ってきた。
「今日のプレゼン、よかったな!」
出迎えた私を、いきなり部長が抱き締める。
「生野課長が嫌がらせしてきたときはどうしたものかと思っていたが、堂々と反論して。
見直したぞ!」
上機嫌に笑いながら、私の背中をバンバン叩く。
それが、とても嬉しかった。
「ありがとうございます」
「会社でも言ったが、絶対に明日美の企画が採用だ。
間違いない」
ようやく離れた部長がなぜか……唇を重ねてくる。
「えっ?
は?」
「今日の明日美は格好よくて、惚れ直したから」
戸惑う私にそれだけ言って、手に持っていた袋を渡してきた。
「わるいな、遅くなって」
「……いえ。
ご苦労様です」
差し出されたそれを受け取る。
今日は遅くなったし、お弁当らしい。
「腹、減ってるだろ。
先に食べてていいからな」
「はーい」
なんて返事をしながら、ダイニングテーブルに広げていた勉強道具を手早く片付け、食事ができるように準備をする。
今日は私の好きなカフェの、ハンバーグとエビフライ定食を買ってきてくれていた。
……それにしても。
さっきのキスってなんだったんだろう?
〝惚れ直した〟って?
まったくもって意味がわからない。
「なんだ、先に食べなかったのか」
飲み物の準備を済ませたところで、部長が着替えてダイニングへ来た。
「少しくらい待ちますよ」
いまさら五分くらい、遅くなったところで別にかまわない。
笑って、椅子に座る。
部長もテーブルに着いて、一緒に食事をした。
「その、富士野部長?
さっきの、〝惚れ直した〟って、どういう意味ですか?」
はっきりさせておかなければ、今日は眠れそうにない。
「んー、内緒」
唇に人差し指を当て、悪戯っぽく部長は片目をつぶった。
「内緒って、ズルいです」
少しだけ頬を膨らませ、ふて腐れてみせる。
「でも、今日の明日美は惚れるくらい、格好よかったのは間違いないからな」
眩しいものでも見るかのように、眼鏡の向こうで部長の目が細くなった。
こんなに褒められて、居心地が悪い。
でもこれは嫌なんかじゃなくて、嬉しくて落ち着かないからだ。
――しかし。
「……やっぱり、ズルいです」
こんなに私の心を掻き乱しておいて、自分の気持ちは内緒にするところ。
戻って仕事をしてたら、不意に顔の横に缶が出現した。
そちらを見るとミルクティの缶を富士野部長が差し出している。
「ありがとうございます」
ありがたく手を出し、それを受け取った。
「いいプレゼンでした。
あとは結果を待つばかりですが、きっと紀藤さんの企画が採用ですよ」
部長が目尻を下げ、眼鏡の陰に笑い皺がのぞく。
「……だと、いいんですが」
「はい。
私はそうだと確信しています」
元気づけるように、私の肩をぽんと軽く叩き、部長は自分の席へと戻っていった。
「採用、か……」
自分の企画が採用し、自販機に並んでいるのを想像したらわくわくする。
そう、なったらいい。
いや、そのために頑張ったのだ。
あとは神にでも祈ろう。
今日は私のほうが早く仕事が終わったので、先に帰る。
本当は食事を作っておいて部長の手間を減らしたいが、前にそれをやったら怒られたのでやめておく。
『こんなことする暇があるなら、ひとつでも単語を覚えろ!』
TOEICの試験直前だったから、そう言われた。
でも、それで落ち込んでいたら。
『紀藤がベストを尽くせるように環境を整えるのが俺の役目なの。
だから、甘えておけ』
って、頭ぽんぽんしてくれたから、気分がよくなってたが。
……ん?
私、もしかしてチョロい?
それにあれは連絡せずに食事の準備なんかしたもんだから、部長の買ってきてくれたお弁当とかぶって申し訳なかった。
富士野部長が帰ってくるまで、次の試験に向けて勉強をする。
部長が取れって言った資格はまだまだあった。
前はいったい、これはなんのために勉強させられているんだと思っていたが、最近なんとなくわかってきたのだ。
たぶん、秘書の養成。
事務職でトップというと秘書な気がするし、だからなんだろうとは思う。
でも、ビジネス実務法務は部長の趣味かもしれない。
まあ、あればきっと役に立つだろうけれど。
「ただいまー」
今日も勉強に励んでいたら、ようやく仕事を終えた部長が帰ってきた。
「今日のプレゼン、よかったな!」
出迎えた私を、いきなり部長が抱き締める。
「生野課長が嫌がらせしてきたときはどうしたものかと思っていたが、堂々と反論して。
見直したぞ!」
上機嫌に笑いながら、私の背中をバンバン叩く。
それが、とても嬉しかった。
「ありがとうございます」
「会社でも言ったが、絶対に明日美の企画が採用だ。
間違いない」
ようやく離れた部長がなぜか……唇を重ねてくる。
「えっ?
は?」
「今日の明日美は格好よくて、惚れ直したから」
戸惑う私にそれだけ言って、手に持っていた袋を渡してきた。
「わるいな、遅くなって」
「……いえ。
ご苦労様です」
差し出されたそれを受け取る。
今日は遅くなったし、お弁当らしい。
「腹、減ってるだろ。
先に食べてていいからな」
「はーい」
なんて返事をしながら、ダイニングテーブルに広げていた勉強道具を手早く片付け、食事ができるように準備をする。
今日は私の好きなカフェの、ハンバーグとエビフライ定食を買ってきてくれていた。
……それにしても。
さっきのキスってなんだったんだろう?
〝惚れ直した〟って?
まったくもって意味がわからない。
「なんだ、先に食べなかったのか」
飲み物の準備を済ませたところで、部長が着替えてダイニングへ来た。
「少しくらい待ちますよ」
いまさら五分くらい、遅くなったところで別にかまわない。
笑って、椅子に座る。
部長もテーブルに着いて、一緒に食事をした。
「その、富士野部長?
さっきの、〝惚れ直した〟って、どういう意味ですか?」
はっきりさせておかなければ、今日は眠れそうにない。
「んー、内緒」
唇に人差し指を当て、悪戯っぽく部長は片目をつぶった。
「内緒って、ズルいです」
少しだけ頬を膨らませ、ふて腐れてみせる。
「でも、今日の明日美は惚れるくらい、格好よかったのは間違いないからな」
眩しいものでも見るかのように、眼鏡の向こうで部長の目が細くなった。
こんなに褒められて、居心地が悪い。
でもこれは嫌なんかじゃなくて、嬉しくて落ち着かないからだ。
――しかし。
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