【完結】2番ではダメですか?~腹黒御曹司は恋も仕事もトップじゃなきゃ満足しない~
第三章 同じ時間を過ごしたふたり2
ピザを頼み、せっかく着替えた外出着を再び家着に着替える。
ちなみに私のは部長が買ってくれた、ピンクのコットンニットワンピースで、気に入っていた。
部長はだいたい、Tシャツとチノパンだ。
「それで、富士野部長?
さっきのっていったい……?」
リビングに戻ってきて、話を切り出す。
彼女が、部長が見合いをした相手だというのはわかったが、それ以外が理解不能だ。
「紀藤のお姉さんの結婚式だった日、俺は同じホテルで見合いをしていた」
なんで同じホテルってわかるのか不思議だったが、ホテルの名の入った紙袋を持っていればわかるか。
それにあの日、部長がスーツだった理由も、そのわけを尋ねて曖昧に誤魔化された理由もようやく理解した。
「相手はさっきの女だ。
その場で断りたいくらいだったがさすがにそれは悪いと思い、向こうと別れてすぐに父へ断ってくれと頼んだ。
父も特に、反対しなかったしな」
うん、と部長が頷く。
先程の態度からもよほど彼女が嫌なんだなとは感じていたが、その場で断りたいくらいだとは。
「そんなに先程の女性との結婚は嫌ですか?」
「当たり前だろ。
『今すぐそんな二流企業を辞めて、パパの会社に入って。
私の夫に三流企業の部長なんてふさわしくないわ』
とか言われてみろよ」
本当に忌ま忌ましげに部長が吐き捨てる。
「ああ……」
それは私でもお断りしたいかも。
しかも、途中から三流企業に格下げされているし。
「断ったっていうのに、しつこくメッセージ送ってきたり電話かけてきたりするからブロックしたっていうのに、とうとう押しかけてくるんだもんな。
勘弁してくれ」
はぁーっと苦悩のこいため息が部長の口から落ちていく。
それは大変そうだが、私になにかできることがあるわけではない。
なんて他人事のように思っていたのだけれど。
そのタイミングでインターフォンが鳴り、頼んでいたピザが届く。
「わるいな、せっかくの週末なのに宅配ピザで」
「え?
私、ピザ好きなんで全然」
富士野部長が頼んでくれたのは、美味しいけれど高いので私はたまにしか頼まない、宅配ピザ店のものだった。
しかも、大好物のエビマヨと、バジルのパスタ。
それにワインまでついてなんの文句があるだろう?
「ほんとに紀藤は可愛いな」
部長の手が伸びてきて、くしゃくしゃと柔らかく私の頭を撫でる。
そろーっと顔を上げると部長は眼鏡の下で目尻を下げ、うっとりと私を見ていた。
おかげで、顔が熱くなっていく。
「お、お皿!
お皿、取ってきますね!」
なんだかいたたまれなくなって、勢いよく立ち上がる。
「ああ。
俺も手、洗ってくる」
部長も立ち上がり、一緒にキッチンへ向かう。
棚からお皿を出しながら、隣で手を洗っている部長をちらり。
さっきのあの顔、なんだったんだろう?
心臓の鼓動はいまだに落ち着かない。
「どうかしたのか?」
じっと私が見ていたのに気づいたのか、不思議そうに部長が私の顔をのぞき込む。
「えっ、あっ、ああーっ!」
中途半端な姿勢で持っていたお皿が、動揺した弾みで手から滑り落ちる。
それはすぐに床に当たり、ガシャンガシャンと音を立てた。
「す、すみません!
いたっ!」
慌てて座り込み、割れたお皿に手を伸ばす。
なにも考えずに触れたせいで尖ったそれは、私の皮膚を傷つけた。
「大丈夫か?」
同じように目の前にしゃがんだ部長が、私の手を取る。
ぷっくりと血の膨らんだ指先を彼は――口に含んだ。
「えっ、あっ」
眼鏡の奥で目を伏せ、部長が私の指を咥えている。
意外と、レンズに当たりそうなほど睫が長い。
髭なんか生えないんじゃないかというくらい、肌はすべすべだ。
どくんどくんと指先の脈動が自己主張を繰り返す。
それは血液に乗って全身を巡っていった。
おかげで、胸が苦しい。
呼吸が短いものへと変わっていった。
「ん。
これで血、止まったかな」
ようやく、部長が自分の口から私の指を離す。
それはほんの数分だったけれど、私にとっては永遠に思えるほど長かった。
「あっ、……はい」
身体中が熱くてまともに部長の顔を見られない。
「俺が片付けとくから、紀藤はもう向こう行って座ってろ」
「あっ、はい。
……すみません、でした」
「別にいい」
私の頭を軽くぽんぽんし、部長は立ち上がった。
私も邪魔にならないようにリビングへ行ってぽすっとソファーに座る。
すぐに、ガシャガシャと割れたお皿を片付ける音が聞こえていた。
……ううっ、情けない。
お皿割ったうえに片付けもまともにできないなんて。
でも部長も悪いんだよ?
あんな、……あんなことするから。
さっき、指を咥えられたのを思い出し、爆発したかのように一気に顔が熱を持つ。
いや、バフッ!って音がした気がするから、本当に爆発したのかもしれない。
奇声を発しそうになって手近にあったクッションを顔に押しつける。
「……なに、やってるんだ?」
少しして部長の声が聞こえ、クッションから顔を離す。
完全に困惑している彼を見て、ようやく冷静になった。
「あー、なんでもない、です」
曖昧に笑って誤魔化す。
たぶん、あれに意味はない。
もしかしたら部長は天然たらしなのかもしれないが。
ちなみに私のは部長が買ってくれた、ピンクのコットンニットワンピースで、気に入っていた。
部長はだいたい、Tシャツとチノパンだ。
「それで、富士野部長?
さっきのっていったい……?」
リビングに戻ってきて、話を切り出す。
彼女が、部長が見合いをした相手だというのはわかったが、それ以外が理解不能だ。
「紀藤のお姉さんの結婚式だった日、俺は同じホテルで見合いをしていた」
なんで同じホテルってわかるのか不思議だったが、ホテルの名の入った紙袋を持っていればわかるか。
それにあの日、部長がスーツだった理由も、そのわけを尋ねて曖昧に誤魔化された理由もようやく理解した。
「相手はさっきの女だ。
その場で断りたいくらいだったがさすがにそれは悪いと思い、向こうと別れてすぐに父へ断ってくれと頼んだ。
父も特に、反対しなかったしな」
うん、と部長が頷く。
先程の態度からもよほど彼女が嫌なんだなとは感じていたが、その場で断りたいくらいだとは。
「そんなに先程の女性との結婚は嫌ですか?」
「当たり前だろ。
『今すぐそんな二流企業を辞めて、パパの会社に入って。
私の夫に三流企業の部長なんてふさわしくないわ』
とか言われてみろよ」
本当に忌ま忌ましげに部長が吐き捨てる。
「ああ……」
それは私でもお断りしたいかも。
しかも、途中から三流企業に格下げされているし。
「断ったっていうのに、しつこくメッセージ送ってきたり電話かけてきたりするからブロックしたっていうのに、とうとう押しかけてくるんだもんな。
勘弁してくれ」
はぁーっと苦悩のこいため息が部長の口から落ちていく。
それは大変そうだが、私になにかできることがあるわけではない。
なんて他人事のように思っていたのだけれど。
そのタイミングでインターフォンが鳴り、頼んでいたピザが届く。
「わるいな、せっかくの週末なのに宅配ピザで」
「え?
私、ピザ好きなんで全然」
富士野部長が頼んでくれたのは、美味しいけれど高いので私はたまにしか頼まない、宅配ピザ店のものだった。
しかも、大好物のエビマヨと、バジルのパスタ。
それにワインまでついてなんの文句があるだろう?
「ほんとに紀藤は可愛いな」
部長の手が伸びてきて、くしゃくしゃと柔らかく私の頭を撫でる。
そろーっと顔を上げると部長は眼鏡の下で目尻を下げ、うっとりと私を見ていた。
おかげで、顔が熱くなっていく。
「お、お皿!
お皿、取ってきますね!」
なんだかいたたまれなくなって、勢いよく立ち上がる。
「ああ。
俺も手、洗ってくる」
部長も立ち上がり、一緒にキッチンへ向かう。
棚からお皿を出しながら、隣で手を洗っている部長をちらり。
さっきのあの顔、なんだったんだろう?
心臓の鼓動はいまだに落ち着かない。
「どうかしたのか?」
じっと私が見ていたのに気づいたのか、不思議そうに部長が私の顔をのぞき込む。
「えっ、あっ、ああーっ!」
中途半端な姿勢で持っていたお皿が、動揺した弾みで手から滑り落ちる。
それはすぐに床に当たり、ガシャンガシャンと音を立てた。
「す、すみません!
いたっ!」
慌てて座り込み、割れたお皿に手を伸ばす。
なにも考えずに触れたせいで尖ったそれは、私の皮膚を傷つけた。
「大丈夫か?」
同じように目の前にしゃがんだ部長が、私の手を取る。
ぷっくりと血の膨らんだ指先を彼は――口に含んだ。
「えっ、あっ」
眼鏡の奥で目を伏せ、部長が私の指を咥えている。
意外と、レンズに当たりそうなほど睫が長い。
髭なんか生えないんじゃないかというくらい、肌はすべすべだ。
どくんどくんと指先の脈動が自己主張を繰り返す。
それは血液に乗って全身を巡っていった。
おかげで、胸が苦しい。
呼吸が短いものへと変わっていった。
「ん。
これで血、止まったかな」
ようやく、部長が自分の口から私の指を離す。
それはほんの数分だったけれど、私にとっては永遠に思えるほど長かった。
「あっ、……はい」
身体中が熱くてまともに部長の顔を見られない。
「俺が片付けとくから、紀藤はもう向こう行って座ってろ」
「あっ、はい。
……すみません、でした」
「別にいい」
私の頭を軽くぽんぽんし、部長は立ち上がった。
私も邪魔にならないようにリビングへ行ってぽすっとソファーに座る。
すぐに、ガシャガシャと割れたお皿を片付ける音が聞こえていた。
……ううっ、情けない。
お皿割ったうえに片付けもまともにできないなんて。
でも部長も悪いんだよ?
あんな、……あんなことするから。
さっき、指を咥えられたのを思い出し、爆発したかのように一気に顔が熱を持つ。
いや、バフッ!って音がした気がするから、本当に爆発したのかもしれない。
奇声を発しそうになって手近にあったクッションを顔に押しつける。
「……なに、やってるんだ?」
少しして部長の声が聞こえ、クッションから顔を離す。
完全に困惑している彼を見て、ようやく冷静になった。
「あー、なんでもない、です」
曖昧に笑って誤魔化す。
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