ジャンルごちゃ混ぜ小説詰め合わせ 3
人質姫は帝国の第四皇女と友達になる 3
エメリーヌは思わず目が点になった。
ブロウ帝国第四皇女・ラモーナ。
エメリーヌよりひとつ年上の十八歳で、人形のように愛らしい容姿ゆえに人形姫の異名を持つ現皇帝の末子だ。
油絵が得意で、その腕前は師を超えるとも言われている。もちろん皇族の手前、過大な評価をされている可能性も捨てきれないため事実のほどは知れないが。
エメリーヌは今のところ、彼女の悪い評判を聞いたことはない。が、軟禁生活を送っているエメリーヌの耳に届く情報は限られているので、つまるところ彼女のことはほぼ知らないのだ。
そして、帝国に来る前も来たあとも一度も会ったことがないはずだ。
――わたしはその皇女様から、なぜ朝食を共にしたいと思われているのかしら? それとも、この件に皇女様本人の意思は関わっていないの?
エメリーヌは思わず顎に右手をかけて思考にふけってしまいそうになったが、メイドふたりの視線を感じ取ってハッとした。
「ご、ごめんなさい。つい、びっくりしてしまって……」
「いいえ、わたしたちも驚いておりますから。人見知りのラモーナ様がエメリーヌ様と朝食を共にしたいと仰るなんて、と」
「人見知り?」
エメリーヌが聞き返すと、アリエルは小さくうなずいた。
「はい。ラモーナ様は初めて会う方の前では大変緊張されてしまう性質をお持ちでして――」
「アリエル」
アリエルの言葉をオドレイの困惑した声がさえぎった。アリエルがハッとして慌て出す。
「申し訳ございません! 出過ぎた真似をいたしました」
出過ぎた真似とは必要最低限以上の会話のことだろう。頭を下げてしまったアリエルに、エメリーヌは苦笑した。
「いいのよ、別に。わたしの方から訊いたんだから。それより、ラモーナ様とわたしはどこで朝食を食べることになっているの?」
「あの……よろしいのですか?」
アリエルの不安げな声音に、エメリーヌは再び首を傾げた。
「何が?」
「ラモーナ様と同じ席で朝食をお摂りすること、です」
「もちろん。人形姫と呼ばれるくらい愛らしいと評判のラモーナ様とお食事なんて、大歓迎だわ」
エメリーヌがにっこり笑うと、アリエルとオドレイは顔を見合わせながらあからさまにホッとしてみせた。
しかし、発した言葉とは裏腹にエメリーヌの心中はこうだ。
――ここに来て三か月の間に一度たりとて会ったこともないラモーナ皇女。しかも彼女は人見知りだという。そんな人物が急に王城とは別の城に軟禁されている人質なんかに興味を抱くなんておかしい。
誰かがわたしに探りを入れるように提案して、その探り役にラモーナ皇女が選ばれたと考える方が自然だ。
ブロウ帝国第四皇女・ラモーナ。
エメリーヌよりひとつ年上の十八歳で、人形のように愛らしい容姿ゆえに人形姫の異名を持つ現皇帝の末子だ。
油絵が得意で、その腕前は師を超えるとも言われている。もちろん皇族の手前、過大な評価をされている可能性も捨てきれないため事実のほどは知れないが。
エメリーヌは今のところ、彼女の悪い評判を聞いたことはない。が、軟禁生活を送っているエメリーヌの耳に届く情報は限られているので、つまるところ彼女のことはほぼ知らないのだ。
そして、帝国に来る前も来たあとも一度も会ったことがないはずだ。
――わたしはその皇女様から、なぜ朝食を共にしたいと思われているのかしら? それとも、この件に皇女様本人の意思は関わっていないの?
エメリーヌは思わず顎に右手をかけて思考にふけってしまいそうになったが、メイドふたりの視線を感じ取ってハッとした。
「ご、ごめんなさい。つい、びっくりしてしまって……」
「いいえ、わたしたちも驚いておりますから。人見知りのラモーナ様がエメリーヌ様と朝食を共にしたいと仰るなんて、と」
「人見知り?」
エメリーヌが聞き返すと、アリエルは小さくうなずいた。
「はい。ラモーナ様は初めて会う方の前では大変緊張されてしまう性質をお持ちでして――」
「アリエル」
アリエルの言葉をオドレイの困惑した声がさえぎった。アリエルがハッとして慌て出す。
「申し訳ございません! 出過ぎた真似をいたしました」
出過ぎた真似とは必要最低限以上の会話のことだろう。頭を下げてしまったアリエルに、エメリーヌは苦笑した。
「いいのよ、別に。わたしの方から訊いたんだから。それより、ラモーナ様とわたしはどこで朝食を食べることになっているの?」
「あの……よろしいのですか?」
アリエルの不安げな声音に、エメリーヌは再び首を傾げた。
「何が?」
「ラモーナ様と同じ席で朝食をお摂りすること、です」
「もちろん。人形姫と呼ばれるくらい愛らしいと評判のラモーナ様とお食事なんて、大歓迎だわ」
エメリーヌがにっこり笑うと、アリエルとオドレイは顔を見合わせながらあからさまにホッとしてみせた。
しかし、発した言葉とは裏腹にエメリーヌの心中はこうだ。
――ここに来て三か月の間に一度たりとて会ったこともないラモーナ皇女。しかも彼女は人見知りだという。そんな人物が急に王城とは別の城に軟禁されている人質なんかに興味を抱くなんておかしい。
誰かがわたしに探りを入れるように提案して、その探り役にラモーナ皇女が選ばれたと考える方が自然だ。
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