ジャンルごちゃ混ぜ小説詰め合わせ 3
人質姫は帝国の第四皇女と友達になる 2
翌朝。窓の外は曇天だった。太陽が隠れているせいで室内が薄暗い。
――また今日も退屈な一日が始まる。
エメリーヌは寂しさが限界に達してしまい、人質という立場ゆえの精神的な緊張感を失いつつあった。まるで気の抜けたエールのような状態である。
――お父様が今のわたしを見たらなんというだろう。
そんなふうに詮無いを考えながら、ゆっくりとベッドから抜け出した。
毎朝六時になると、ふたりのメイド――背が高くてそばかすの目立つ方がアリエルで、わたしより背が引くくて目の下にクマがある方がオドレイだ――がエメリーヌの私室への入室の許可を求めてくる。
それに承諾してふたりのメイドを中に入れると、彼女たちがエメリーヌを寝間着からドレスへと着替えさせてくれるのだ。
彼女たちとは必要最低限の言葉しか交わさない――いや、交わせないと言った方が正しいだろう。
王族と使用人の間には目に見えない大きな隔たりが存在しているのだから。その隔たりを作っているのはもちろん王族側だ。
彼女たちの立場からすればエメリーヌは王族というよりも来賓だけれども、そんなことは使用人にとっては普通の砂糖と粉砂糖くらいの違いでしかなかった。接し方を間違えれば首が飛ぶ相手であることに変わりはないのだから。
「お支度が整いましてございます」
アリエルが静かな口調で告げると、エメリーヌは姿見の前に立って全身を確認した。
起きたときには乱れていた長い金髪は綺麗に結い上げられており、シフォンで出来た青緑色のドレスは歪みなく肢体を包み込んでいる。
「ありがとう。アリエル、オドレイ。もう下がって大丈夫よ」
エメリーヌがにこりと笑ってそう告げると、ふたりは同時にお辞儀をした。
「承知いたしました。ですが、その……」
いつもならそのあと、「これから朝食を運ばせて頂きます」と言われて言葉通りに食事が乗った台車が室内に運び入れられて来るのだが、なぜだか今日は言葉を濁されてしまった。メイドふたりがアイコンタクトをしている。
「どうかしたの?」
エメリーヌがわずかに首を傾げながら訊ねると、アリエルがためらいがちに口を開いた。
「今日はその……我が国の第四皇女であるラモーナ様もエメリーヌ様と朝食をご一緒したいと仰っておりまして」
「え?」
――また今日も退屈な一日が始まる。
エメリーヌは寂しさが限界に達してしまい、人質という立場ゆえの精神的な緊張感を失いつつあった。まるで気の抜けたエールのような状態である。
――お父様が今のわたしを見たらなんというだろう。
そんなふうに詮無いを考えながら、ゆっくりとベッドから抜け出した。
毎朝六時になると、ふたりのメイド――背が高くてそばかすの目立つ方がアリエルで、わたしより背が引くくて目の下にクマがある方がオドレイだ――がエメリーヌの私室への入室の許可を求めてくる。
それに承諾してふたりのメイドを中に入れると、彼女たちがエメリーヌを寝間着からドレスへと着替えさせてくれるのだ。
彼女たちとは必要最低限の言葉しか交わさない――いや、交わせないと言った方が正しいだろう。
王族と使用人の間には目に見えない大きな隔たりが存在しているのだから。その隔たりを作っているのはもちろん王族側だ。
彼女たちの立場からすればエメリーヌは王族というよりも来賓だけれども、そんなことは使用人にとっては普通の砂糖と粉砂糖くらいの違いでしかなかった。接し方を間違えれば首が飛ぶ相手であることに変わりはないのだから。
「お支度が整いましてございます」
アリエルが静かな口調で告げると、エメリーヌは姿見の前に立って全身を確認した。
起きたときには乱れていた長い金髪は綺麗に結い上げられており、シフォンで出来た青緑色のドレスは歪みなく肢体を包み込んでいる。
「ありがとう。アリエル、オドレイ。もう下がって大丈夫よ」
エメリーヌがにこりと笑ってそう告げると、ふたりは同時にお辞儀をした。
「承知いたしました。ですが、その……」
いつもならそのあと、「これから朝食を運ばせて頂きます」と言われて言葉通りに食事が乗った台車が室内に運び入れられて来るのだが、なぜだか今日は言葉を濁されてしまった。メイドふたりがアイコンタクトをしている。
「どうかしたの?」
エメリーヌがわずかに首を傾げながら訊ねると、アリエルがためらいがちに口を開いた。
「今日はその……我が国の第四皇女であるラモーナ様もエメリーヌ様と朝食をご一緒したいと仰っておりまして」
「え?」
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