第3次パワフル転生野球大戦ACE
閑話44 大リーグ試合観戦弾丸ツアー(五月雨月雲視点)
日本からアメリカ本土へのフライトの所要時間は、どこを目的地としているかによって9時間~13時間と非常に振れ幅が大きい。
当然のことだけど、行き先が西海岸か東海岸かで距離が変わってくるからだ。
つまるところ、西海岸から東海岸への移動だけで4時間以上かかる計算になる。
加えて時差。西海岸と東海岸とで3時間の時差がある。
例えば朝の8時に西海岸から出発して4時間かけて東海岸に到着したら、現地時間は正午ではなく午後の4時になる。
アメリカ国内の移動だけでも時差ボケが発生しかねない。
大リーグは移動の負担が大きいとよく言われるのは、主にそれらのせいだろう。
ボク達はその一端を現在進行形で体験している。
もう既に何度目かになるけれど、確かに体力的に厳しいものがあった。
まあ、ボク個人に関しては運動音痴でフィジカル弱々だし、このレベルの長距離移動にまだまだ慣れていないというのも大きいとは思うけれども。
後、日本-アメリカ間の時差による時差ボケの影響も相当ありそうだ。
「次はニューヨークだね……」
「ここからだと、4時間以上のフライトでね」
ボクの小さな呟きに、陸玖が疲れたように疲れるようなことを言う。
今はアリゾナの都市であるフェニックスに本拠地を置くダイヤモンド・ラトルスネークスのホームゲームを観戦した直後だ。
正確には、預かりサービスに預けていた諸々を回収して球場の外に出たところ。
これからそのまま空港へと向かい、次なる目的地へと飛ぶ予定になっている。
「タクシーはもう来てるぞ」
「ほら、皆乗って乗って」
仁愛先輩の呼びかけに従って、石嶺先輩もとい轟先輩が配車アプリを利用して事前に予約していた6人で利用できる大型タクシーに乗り込んでいく。
轟先輩、陸玖、ボク、シュシュ先輩、佐藤先輩、仁愛先輩の順だ。
海外だとタクシーでの連れ去りもあり得るらしく、念のための予防として轟先輩が先に乗り込んで圧をかけてくれているそうだ。
先輩組が後半なのも似たような理由で、周りに目を光らせているとのこと。
さすがに警戒し過ぎじゃないかとも思ってしまうけれど、日本人は平和ボケしているとも言うし、過剰なぐらいの方が丁度いいのかもしれない。
『フェニックス・スカイハーバー国際空港へ』
何はともあれ、仁愛先輩が運転手に英語で目的地を告げてタクシーが走り出す。
3列シートの3列目で陸玖の隣に座ったボクは、静かに目を瞑りながら頭の中でさっきまで観戦していた試合のことを反芻していた。
ダイヤモンド・ラトルスネークスのエースにして、WBWアメリカ代表に選ばれているジャイアント・R・クレジット選手が先発登板した試合だ。
陸玖達と色々語りたいけれども、壁に耳あり障子に目ありとも言う。
興奮して余計なことまで口にしないように、なるべく口を噤んでおく。
本場アメリカのベースボールはやっぱり迫力が違った。
選手の平均レベルが明らかに高いのもそうだけど。
何より今日の試合においては、現アメリカ最速ピッチャーの1人であるジャイアント・R・クレジット選手のMax175km/hのフォーシーム。
単純に秀治郎選手以上の球速だし、それに相応しい威力も十二分にあった。
加えて、あの高速スライダー。
強打者揃いの大リーガーですら掠りもしていなかった。
160km/hを優に超える球速もさることながら、あの特徴的なフォームが高速スライダーの打ちにくさに拍車をかけている。
2m越えの巨体と腕の長さでサイド気味から投じられ、尚且つあの変化だ。
しかもサウスポー。
Max175km/hのフォーシームとのコンビネーションだけでも、並のバッターなら打つことなどできないだろう。
それ以前に、背中から曲がってくるかのような高速スライダーの軌道に恐怖してスイングをすることすらできないかもしれない。
その上、彼の持ち球にはスプリットやツーシームもある。
ほとんどチートだ。
少し前にアメリカ最強ピッチャーと名高いサイクロン・D・ファクト選手の登板試合も観戦したけれど、ボクとしては正直なところ甲乙つけがたいところがある。
彼のドロップカーブも魔球としか言いようがないエグさだったけれども……。
右投手よりも左投手を苦にするバッターが多かったりしたら、あるいはジャイアント・R・クレジット選手の方が厄介かもしれない。
日本代表とアメリカ代表がWBW決勝戦で当たると仮定するなら、彼らの内のいずれかが立ちはだかってくることになるだろう。
重点的に情報を収集すべき選手なのは間違いなかった。
「……それにしても、メモも取っちゃダメってのはやっぱりハードだよねえ」
「疑われかねないような行動はしないのが原則だから」
ポツリと呟かれた陸玖の言葉に同意しつつも、ちょっと窘めるように返す。
当たり前も当たり前のことだけに、そこに不満を表明するのは危うい。
球場ではスマホなどの電子機器は勿論、手帳やメモ帳を開くこともできない。
一応、後者は持ち込むことまでは禁止されていないけれども……。
スタンドで試合を見ながら何かメモを取るような素振りを見せようものなら、即座に周りに通報されて逮捕されてしまうことになる。
そして、そのまま取り調べに直行。
メモの内容が野球と全く関係ないものであれば罰金程度で済むこともあるようだけど、スパイ行為をしたと認定されたらその容疑で逮捕される。
この「認定されたら」というのがミソで、その基準が明確でないのも怖い。
また、たとえ罰金刑で済んだ場合でも当然犯罪歴は記録されるため、領事館からビザを発行して貰えなくなって2度とアメリカに入国できなくなる。
とにかくリスクしかない。
更に言えば。まあ、当然のことではあるけれども。
球場の外に出たからと観戦で得た情報をスマホや手帳などに記録して、それを誰かに見咎められでもしたら、それはそれで捕まってしまう。
だから日本に帰国するまでは、基本的にボク達の頭の中にしか情報は残せない。
関連する会話も最小限に抑えた方がいいと言われている。
「そこまで厳格にするなら、外国人の観戦も禁止しちゃえばいいのにね~」
「外国人野球観戦禁止法の過ちは繰り返せないでしょ」
シュシュ先輩の言葉に、佐藤先輩が嘆息気味に返す。
禁酒法に並ぶレベルの天下の悪法として、世界史で必ず習うような話だ。
ボクは正直、天下のという評価は言い過ぎのような気もするけれど。
野球に関わるものだから、過剰な評価になってしまっているのかもしれない。
それはともかくとして。
外国人野球観戦禁止法の制定から廃止までの流れはこうだ。
100年以上前に起こった唯一の世界大戦以後、世の中は何故か野球の勝敗、即ちWBWの結果で情勢が左右されるようになった。
野球の重要性が一気に高まったことで情報統制が叫ばれ、野球の最先端にあったアメリカは真っ先に外国人の観戦を禁じた。
しかし、それから程なくして国内の外国人労働者の暴動が発生したそうだ。
これは野球を見たい欲が暴走してしまったことが原因だと言われている。
運動音痴過ぎてスポーツ観戦すら微妙に忌避感があったボクには余りピンと来ない話ではあるけれど、理解することはできなくない。
禁酒法もそうだけど、人間というものは禁じられたら尚更それを求めるもの。
ただでさえ、何か超常的なものに操作でもされているんじゃないかと思う程の野球への熱狂がこの世界にはある訳だから。
それを抑圧されようものなら、暴走してしまっても不思議じゃない。
異国の地にあって最大の娯楽を取り上げられては労働意欲にも悪影響を及ぼす。
結果として外国人の野球観戦は許可され、その一方で球場での情報収集を禁ずる折衷案を採用される形になったのだった。
ちなみに、外国人の受け入れが極めて少ない国はその限りじゃないとのことだ。
まあ、この辺は完全に余談だけど。
「次はバンビーノ・G・ビート選手の登板試合かあ。楽しみだねぇ」
「タイミングがよかったのか、悪かったのか」
「よかったんだよ~。……多分」
これから観戦する予定なのは、ニューヨークで行われるニューヨーク・ノーザンライツ対ボストン・レッドホーザリーズの試合だ。
2人の登板日が丁度1日ズレて、尚且つ両方チケットを取ることができた結果として、こんな弾丸ツアー状態になってしまっているのは否めない。
今日19時過ぎ開始のナイターが投手戦だったおかげで21時30分頃に終わって、そこからタクシーで空港に22時少し前に到着。
23時過ぎ発の飛行機で約4時間半のフライト。
現地時間で朝7時頃の到着。
次に観る試合はデーゲームなので試合開始は13時。
開場時間は2時間前の11時なので、それに合わせて球場に入る予定だ。
うん。
やっぱりハードだ……。
けど、日本とアメリカだと往復だけでほぼ丸1日潰れてしまう。
行ったり来たりすると、それだけで時間的なロスが大きい。
当然、金銭的な負担も馬鹿にならない。
そうなってくると、可能な限り多くの試合を観戦するスケジュールにした方が合理的だと考えるのも無理もないことだと思う部分もある。
ただ、それはあくまでも人の体力を度外視した机上の話。
さすがのシュシュ先輩も「多分」とつけ加えてしまう程度には、今回のこれはタイミングがよかったと手放しで喜ぶことは誰もできなかった。
「今回は観光は無理ね」
「そもそも観光に来た訳じゃないぞ」
「それは分かってるけど、こうカツカツだとちょっと気が滅入るじゃない」
そんなボク達のガス抜きをするかのように、わざとらしく文句を口にする仁愛先輩とそれを窘める轟先輩。
そんな2人のやり取りを聞きながら飛行機に乗り込んで。
疲労が出たのか、気絶するように眠って気がつくとニューヨーク。
午前7時という早朝からでも普通にやっている、日本でも有名な24時間営業のハンバーガーのチェーン店でしばらく時間を潰してから。
ボク達はニューヨーク・ノーザンライツの本拠地であるノーザンライツ・スタジアムへと向かったのだった。
当然のことだけど、行き先が西海岸か東海岸かで距離が変わってくるからだ。
つまるところ、西海岸から東海岸への移動だけで4時間以上かかる計算になる。
加えて時差。西海岸と東海岸とで3時間の時差がある。
例えば朝の8時に西海岸から出発して4時間かけて東海岸に到着したら、現地時間は正午ではなく午後の4時になる。
アメリカ国内の移動だけでも時差ボケが発生しかねない。
大リーグは移動の負担が大きいとよく言われるのは、主にそれらのせいだろう。
ボク達はその一端を現在進行形で体験している。
もう既に何度目かになるけれど、確かに体力的に厳しいものがあった。
まあ、ボク個人に関しては運動音痴でフィジカル弱々だし、このレベルの長距離移動にまだまだ慣れていないというのも大きいとは思うけれども。
後、日本-アメリカ間の時差による時差ボケの影響も相当ありそうだ。
「次はニューヨークだね……」
「ここからだと、4時間以上のフライトでね」
ボクの小さな呟きに、陸玖が疲れたように疲れるようなことを言う。
今はアリゾナの都市であるフェニックスに本拠地を置くダイヤモンド・ラトルスネークスのホームゲームを観戦した直後だ。
正確には、預かりサービスに預けていた諸々を回収して球場の外に出たところ。
これからそのまま空港へと向かい、次なる目的地へと飛ぶ予定になっている。
「タクシーはもう来てるぞ」
「ほら、皆乗って乗って」
仁愛先輩の呼びかけに従って、石嶺先輩もとい轟先輩が配車アプリを利用して事前に予約していた6人で利用できる大型タクシーに乗り込んでいく。
轟先輩、陸玖、ボク、シュシュ先輩、佐藤先輩、仁愛先輩の順だ。
海外だとタクシーでの連れ去りもあり得るらしく、念のための予防として轟先輩が先に乗り込んで圧をかけてくれているそうだ。
先輩組が後半なのも似たような理由で、周りに目を光らせているとのこと。
さすがに警戒し過ぎじゃないかとも思ってしまうけれど、日本人は平和ボケしているとも言うし、過剰なぐらいの方が丁度いいのかもしれない。
『フェニックス・スカイハーバー国際空港へ』
何はともあれ、仁愛先輩が運転手に英語で目的地を告げてタクシーが走り出す。
3列シートの3列目で陸玖の隣に座ったボクは、静かに目を瞑りながら頭の中でさっきまで観戦していた試合のことを反芻していた。
ダイヤモンド・ラトルスネークスのエースにして、WBWアメリカ代表に選ばれているジャイアント・R・クレジット選手が先発登板した試合だ。
陸玖達と色々語りたいけれども、壁に耳あり障子に目ありとも言う。
興奮して余計なことまで口にしないように、なるべく口を噤んでおく。
本場アメリカのベースボールはやっぱり迫力が違った。
選手の平均レベルが明らかに高いのもそうだけど。
何より今日の試合においては、現アメリカ最速ピッチャーの1人であるジャイアント・R・クレジット選手のMax175km/hのフォーシーム。
単純に秀治郎選手以上の球速だし、それに相応しい威力も十二分にあった。
加えて、あの高速スライダー。
強打者揃いの大リーガーですら掠りもしていなかった。
160km/hを優に超える球速もさることながら、あの特徴的なフォームが高速スライダーの打ちにくさに拍車をかけている。
2m越えの巨体と腕の長さでサイド気味から投じられ、尚且つあの変化だ。
しかもサウスポー。
Max175km/hのフォーシームとのコンビネーションだけでも、並のバッターなら打つことなどできないだろう。
それ以前に、背中から曲がってくるかのような高速スライダーの軌道に恐怖してスイングをすることすらできないかもしれない。
その上、彼の持ち球にはスプリットやツーシームもある。
ほとんどチートだ。
少し前にアメリカ最強ピッチャーと名高いサイクロン・D・ファクト選手の登板試合も観戦したけれど、ボクとしては正直なところ甲乙つけがたいところがある。
彼のドロップカーブも魔球としか言いようがないエグさだったけれども……。
右投手よりも左投手を苦にするバッターが多かったりしたら、あるいはジャイアント・R・クレジット選手の方が厄介かもしれない。
日本代表とアメリカ代表がWBW決勝戦で当たると仮定するなら、彼らの内のいずれかが立ちはだかってくることになるだろう。
重点的に情報を収集すべき選手なのは間違いなかった。
「……それにしても、メモも取っちゃダメってのはやっぱりハードだよねえ」
「疑われかねないような行動はしないのが原則だから」
ポツリと呟かれた陸玖の言葉に同意しつつも、ちょっと窘めるように返す。
当たり前も当たり前のことだけに、そこに不満を表明するのは危うい。
球場ではスマホなどの電子機器は勿論、手帳やメモ帳を開くこともできない。
一応、後者は持ち込むことまでは禁止されていないけれども……。
スタンドで試合を見ながら何かメモを取るような素振りを見せようものなら、即座に周りに通報されて逮捕されてしまうことになる。
そして、そのまま取り調べに直行。
メモの内容が野球と全く関係ないものであれば罰金程度で済むこともあるようだけど、スパイ行為をしたと認定されたらその容疑で逮捕される。
この「認定されたら」というのがミソで、その基準が明確でないのも怖い。
また、たとえ罰金刑で済んだ場合でも当然犯罪歴は記録されるため、領事館からビザを発行して貰えなくなって2度とアメリカに入国できなくなる。
とにかくリスクしかない。
更に言えば。まあ、当然のことではあるけれども。
球場の外に出たからと観戦で得た情報をスマホや手帳などに記録して、それを誰かに見咎められでもしたら、それはそれで捕まってしまう。
だから日本に帰国するまでは、基本的にボク達の頭の中にしか情報は残せない。
関連する会話も最小限に抑えた方がいいと言われている。
「そこまで厳格にするなら、外国人の観戦も禁止しちゃえばいいのにね~」
「外国人野球観戦禁止法の過ちは繰り返せないでしょ」
シュシュ先輩の言葉に、佐藤先輩が嘆息気味に返す。
禁酒法に並ぶレベルの天下の悪法として、世界史で必ず習うような話だ。
ボクは正直、天下のという評価は言い過ぎのような気もするけれど。
野球に関わるものだから、過剰な評価になってしまっているのかもしれない。
それはともかくとして。
外国人野球観戦禁止法の制定から廃止までの流れはこうだ。
100年以上前に起こった唯一の世界大戦以後、世の中は何故か野球の勝敗、即ちWBWの結果で情勢が左右されるようになった。
野球の重要性が一気に高まったことで情報統制が叫ばれ、野球の最先端にあったアメリカは真っ先に外国人の観戦を禁じた。
しかし、それから程なくして国内の外国人労働者の暴動が発生したそうだ。
これは野球を見たい欲が暴走してしまったことが原因だと言われている。
運動音痴過ぎてスポーツ観戦すら微妙に忌避感があったボクには余りピンと来ない話ではあるけれど、理解することはできなくない。
禁酒法もそうだけど、人間というものは禁じられたら尚更それを求めるもの。
ただでさえ、何か超常的なものに操作でもされているんじゃないかと思う程の野球への熱狂がこの世界にはある訳だから。
それを抑圧されようものなら、暴走してしまっても不思議じゃない。
異国の地にあって最大の娯楽を取り上げられては労働意欲にも悪影響を及ぼす。
結果として外国人の野球観戦は許可され、その一方で球場での情報収集を禁ずる折衷案を採用される形になったのだった。
ちなみに、外国人の受け入れが極めて少ない国はその限りじゃないとのことだ。
まあ、この辺は完全に余談だけど。
「次はバンビーノ・G・ビート選手の登板試合かあ。楽しみだねぇ」
「タイミングがよかったのか、悪かったのか」
「よかったんだよ~。……多分」
これから観戦する予定なのは、ニューヨークで行われるニューヨーク・ノーザンライツ対ボストン・レッドホーザリーズの試合だ。
2人の登板日が丁度1日ズレて、尚且つ両方チケットを取ることができた結果として、こんな弾丸ツアー状態になってしまっているのは否めない。
今日19時過ぎ開始のナイターが投手戦だったおかげで21時30分頃に終わって、そこからタクシーで空港に22時少し前に到着。
23時過ぎ発の飛行機で約4時間半のフライト。
現地時間で朝7時頃の到着。
次に観る試合はデーゲームなので試合開始は13時。
開場時間は2時間前の11時なので、それに合わせて球場に入る予定だ。
うん。
やっぱりハードだ……。
けど、日本とアメリカだと往復だけでほぼ丸1日潰れてしまう。
行ったり来たりすると、それだけで時間的なロスが大きい。
当然、金銭的な負担も馬鹿にならない。
そうなってくると、可能な限り多くの試合を観戦するスケジュールにした方が合理的だと考えるのも無理もないことだと思う部分もある。
ただ、それはあくまでも人の体力を度外視した机上の話。
さすがのシュシュ先輩も「多分」とつけ加えてしまう程度には、今回のこれはタイミングがよかったと手放しで喜ぶことは誰もできなかった。
「今回は観光は無理ね」
「そもそも観光に来た訳じゃないぞ」
「それは分かってるけど、こうカツカツだとちょっと気が滅入るじゃない」
そんなボク達のガス抜きをするかのように、わざとらしく文句を口にする仁愛先輩とそれを窘める轟先輩。
そんな2人のやり取りを聞きながら飛行機に乗り込んで。
疲労が出たのか、気絶するように眠って気がつくとニューヨーク。
午前7時という早朝からでも普通にやっている、日本でも有名な24時間営業のハンバーガーのチェーン店でしばらく時間を潰してから。
ボク達はニューヨーク・ノーザンライツの本拠地であるノーザンライツ・スタジアムへと向かったのだった。
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