異世界にタワマンを! ~奴隷少年は国王となり理想の国を目指した~

月城友麻

1-1-2. 神秘をまとう少女

 うわぁぁぁぁ!

 驚き、腰を抜かすレオ。

 一体何が起こったのか混乱しているレオの目の前で、青い髪をした少女が水中からピョンと飛びあがる。そして、水面を軽やかにトントントーンと駆けてきた。

 少女は波紋を点々と残しながら、楽しそうに短剣が落ちた辺りまでやってくると、ドボンと潜った。

 レオは唖然としながら、ブクブクと湧き上がってくる泡を眺める。

 しばらくすると少女はゆっくりと浮かんできて、

「少年! 君が落としたのは金の短剣? それとも、鉄の短剣?」

 そう言いながらうれしそうな顔で、金色に光り輝く短剣と、レオの短剣を見せた。

 レオは驚き、とまどう。

 少女は水から上がってきたのに濡れた様子もなく、短く青い髪を風に揺らしている。透き通る白い肌に整った目鼻立ち、そして美しく澄んだ水色の瞳をしていた。

「どっち?」

 首をかしげ、少しおどけた感じで楽しそうに聞いてくる。

 少女は胸元の開いたシルバーのホルターネックのトップスに黒のショートパンツ、マントのような前が開いたスカートという、この辺では見ない服を着ている。

 レオは意を決し、答える。

「落としたのは鉄のです。でも……金のも欲しいです……」

「きゃははは! 正直だねっ。いいよ、両方あげる」

 少女は屈託のない笑顔でそう言うと、また水面をトントンと駆けてレオの前にやってきて、

「はい、どうぞ!」

 と、首を傾げながら二本の剣をレオに差し出す。

「ほ、本当にいいんですか……?」

 レオは少し伸ばした手を止め、少女を見て聞いた。

「ふふっ、この短剣……、君にはちょっと縁を感じるんだよね。どうぞ」

 少女はうれしそうに言う。

「ありがとうございます! これで奴隷を抜け出せるぞ!」

 レオは剣を受け取ると、ずっしりと重い黄金色に輝く剣をじっくりと眺め、

「くふぅ……、やったぁ!」

 と、こぶしを握ってガッツポーズを見せた。

 少女は優しくうなずきながらその姿を眺める。

 そして、恍惚とした表情のレオに聞いた。

「奴隷抜けたらどうするの?」

「どうしようかな……。奴隷や貧困のない世界でゆったり暮らしたいなぁ……」

 レオは青空にぽっかりと浮かぶ白い雲を眺めながら言った。

「うーん、奴隷も貧困もないところ?」

 渋い顔をする少女。

「きっとどこかにある気がするんです」

「残念だけど……、この星には無いよ」

「えぇ――――……」

「権力者は格差大好きなんだよ」

 そういって少女は肩をすくめた。

 レオはしばらく考え込み、そして、振り返る。視線の先には寂れた祠、そして飢えた浮浪児たち。

 レオは目を閉じ大きく息をつく。

 そしてうなずくと少女を見て、

「じゃあ……、作ります……」

 と言って、こぶしを力強く握って見せた。

「え?」

 少女はポカンとした表情を浮かべる。

「なければ僕が作ります!」

 レオはしっかりとした目をして少女を見据えた。少女は最初困惑した様子を見せたが、ニコッと笑うと、

「いいね! それ、最高! きゃははは!」

 と、嬉しそうに笑った。

「どこか、人の住んでいない所に新たな国を作ります!」

「いいね! いいね!」

 少女はノリノリだった。

「手伝ってもらえませんか?」

 レオは少女にお願いする。

 少女は動きをピタッと止め……、水色の瞳をキラッと光らせ、鋭い視線でレオを見た。

「本気……?」

 低い声で聞く。風がそよぎ、少女の青い髪がふわっと泳いだ。

「もちろん!」

 レオは曇りない眼で少女を見た。

 すると、少女は両手で少年の頬を包み、そっと額をレオの額に当てる。

 直後、レオは青と白の世界に浮いていた。

「えっ!?」

 下半分は真っ青、上半分は真っ白、青と白しかない世界……。

 でも、下を見て気がついたが、それはただの青の地面ではなさそうだった。

 レオはかがんでそっと触れてみる……。波紋がフワーっと広がっていく。

 それは水だった。どこまでも透明な水が、どこまでも深い深さで青に見え、静かに鏡面のように世界に広がり、水平線を作っていたのだった。

 とんでもない清浄な世界にレオは思わず息をのむ。

 見ると、隣で少女も浮いている。

「ここは……、どこ?」

 レオが恐る恐る聞くと、

「ここは僕の中だよ」

 そう言ってうれしそうに少女は答えた。

「えっ……?」

 レオはどういうことか全くわからなかった。

 少女はクルクルと楽しそうに舞いながらレオの前に来ると、

「僕はシアン、深淵より来た根源なる威力……。いいよ、手伝ってあげる」

 そう言ってにこやかに笑った。

「あ、ありがとう!」

 レオはニコッと笑う。

「ただ……」

 シアンは急にシリアスな表情になると、レオをにらんで言った。

「深淵の力を使う以上中途半端は許されない。途中で投げ出すようなことがあったら……」

「あったら?」

「殺すよ……」

 シアンは燃えるような紅蓮の瞳を輝かせ、射抜くようにレオを見た。それは水色の時とは桁違いの迫力を持ってレオの心の奥底まで貫いた。


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